試験情報

官公庁・自治体等における活用事例

公開日:2021年10月11日

農林水産省インタビュー

農林水産・食品産業行政に係るデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進における「情報処理技術者試験」の活用

農林水産省 向江様・北山様・畠山様・原田様・辻本様

農林水産省では、令和4年度までに、所管する3,000を超える全ての行政手続及び補助金・交付金をデジタル化することを目指し、農林水産省共通申請サービスを構築しています。農林水産省が審査を行う手続だけでなく、地方自治体の方に審査を担っていただいている自治事務等も含めて、農林水産省が所管する法律に基づく行政手続と補助金・交付金の全ての手続をデジタル化します。また、農地に関する情報を一元化し、手続を効率的に行うためのeMAFF地図も並行して構築しており、農地に関する手続はeMAFF地図と農林水産省共通申請サービスを使用して実施できるように検討を進めています。
これまでデジタル化できておらず、紙で行われてきた様々な手続を農林水産省共通申請サービスという一つのシステムでデジタル化することで、ワンストップ、ワンスオンリーが実現され、国民に向けた行政サービスの利便性向上に資すると考えています。また、一つのシステムに全ての申請に関する情報が集約されることで、これまで関係すると考えてこなかった新たな側面から手続に関する情報を分析することができるようになり、農林水産・食品産業行政に係るデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に大きく貢献すると考えています。

メンバーからの「情報処理技術者試験」推奨メッセージ

大臣官房デジタル戦略グループ調査官 原田 達 様

顔写真(原田 達 様)

私は、2003年に新卒で金融機関に入社し、2013年に経験者採用制度により農林水産省に入省しました。金融機関では、システム開発に従事していた経験も影響あるのかもしれませんが、2020年の夏に今の部署に異動となりました。とはいえ、周囲はクラウドサービスが当たり前の環境で、自分の知識は10年以上前のオンプレミス・サーバ全盛の時代で止まっており、どのようにキャッチアップすればよいか、途方に暮れていました。そんななか、「我々は、開発事業者等と真っ当に議論していくためにも、応用情報技術者試験以上の試験合格を目指している。原田におかれても、10月の試験を受けて頂きたく、速やかに申込みをするように。」と部下から進言を受け、受験することになりました。残念ながら1回目の受験では合格できませんでしたが、2回目の試験では計画的に学習することができ合格しました。
試験を通じて、昔先輩から「資格試験は受かったことに意味があるわけではなく、合格するために学んできたことが重要。」と言われたことを思い出しました。確かにこの試験に合格しているからといって、良い開発ができるわけではないでしょう。ただ、関係者との会話において午前試験に出てくるような基本的用語を知っていることはもちろん、午後試験で出題される、実際のシステム開発・運用の現場で起きていることを理解した上で業務に関わることは非常に有益だと考えています。それゆえ、システム部門で勤務する限り、部下には本試験の受験を推奨しています。
IT技術の進歩によりあらゆる変化の速度が速く・大きな時代です。情報処理技術者試験をきっかけに、職員一人一人が自分の興味・関心に合わせて自己啓発を継続し、チーム全体の総合力向上に貢献してほしいと思います。私も、「データ駆動型の政策提案」という農林水産省の目標に役立てるよう、「ITストラテジスト試験」の合格と統計学への理解を深められるよう、研鑽を重ねていきたいと考えています。

大臣官房デジタル戦略グループデジタル企画官 向江 拓郎 様

顔写真(向江 拓郎 様)

私は大学では量子物理、科学技術社会論を専攻し、農林水産省に入省後は、有機JAS、ライスバリューチェーン、米トレーサビリティなどを担当しましたが、体系的にITについて学ぶ機会はありませんでした。一方、ITについての関心はあり、初級システムアドミニストレータ試験に大学在学中に合格するなどしましたが、仕事ではあまり活用する機会がありませんでした。
2019年に現在のデジタル戦略グループに配属になり、IaaSやSaaS、AIの活用なども議論をするようになりましたが、用語や概念が分からず苦労しました。この分野についてきちんと学ぶ必要があると感じ、同僚とともに応用情報技術者試験の学習、合格をしました。
応用情報技術者試験の学習・合格の利点は、用語や概念などを体系的に学べることだと思います。関係書籍やウェブサイトも充実しており、クラウドなどの最新の用語も学ぶことができ、PMBOKなどのプロジェクトマネジメントの考え方について学べるのも実践的です。試験合格が学習するインセンティブになりますし、学習した成果が試験合格という形で相手に伝わりやすいのも良い点です。学習の効果として、専門用語や概念が議論の中で出てきても、それについて聞き直すことが少なくなりました。こちらが勉強していることが相手に伝わると、相手も説明時間を省略することができ、打ち合わせを短縮化・実質化できました。
公務員もITのことは詳しい人や事業者に任せるというスタンスでは仕事が難しくなってきています。仕様書の作成や調達、発注側としてのプロジェクトマネジメント、ITを活用した業務改善などを進めるためには、実際の現場の業務を知りつつ、ITの知識も身に着けることが重要だと感じます。公務員をはじめITを直接の業務としない人こそ、ITパスポート試験や応用情報技術者試験を学習、合格する意義があると思います。

大臣官房デジタル戦略グループ情報化推進係長 畠山 暖央 様

顔写真(畠山 暖央 様)

2014年に入省後、農林水産省生産局で総括業務を2年、復興庁で被災事業者の二重債務対策・クラウドファンディング支援事業の立ち上げ、2018年夏に農林水産省に戻ってきてからは農林水産省共通申請サービス、eMAFF地図、eMAFF IdP、eMAFFチャット実証実験の仕様書作成から詳細設計・教育研修段階まで一貫して関わっています。
農学部でゲノム解析のソフトウェアの評価をしたり、ドラッグストアのPOSレジ分析や出店候補地分析のアルゴリズムを作ったりしていたので、自分一人でノートに書きなぐりで要件定義し、押し入れに籠ってコーディングした経験はありましたが、農林水産省共通申請サービスは一人で作れるようなものではないので、プロジェクトチームとして開発を行う手法を学ぶ必要がありました。

最初は、2018年秋の応用情報技術者試験を目指して勉強しました。イラストで描かれている優れた参考書と、無料で活用できる勉強サイトでひたすら過去問を解きました。イラストで描かれている参考書は、「初めての人にはこのように伝えたら伝わるのか」という学びも得られ、省内の幹部に説明するときも大変参考にさせていただいています。応用情報技術者試験は、ネットワークレイヤーや、プロジェクトマネジメントや、関連法規やといった、業務用システムを作る際に必要なのだけど、プログラミング言語の勉強だけではあまり得られない知見がバランスよく入っていました。
役所がシステムを作る際、開発業者のほかに、工程管理会社としてコンサルティング会社が入ることが多いのですが、事実上、このコンサルティング会社がITに知見がない発注側と、開発事業者の間の「通訳」になっていることがあります。自分自身で、開発事業者の方々の説明を理解できるようにしたことで、貴重な打ち合わせ時間を「概念の解説」に消費されることが減り、UIUXやデータモデルやペルソナやジャーニーや単一障害点やといった、より本質的な議論に時間と体力を投入することができるようになりました。
周りの同僚にも上記の参考書と勉強用WEBサイトを広めて回り、いまではeMAFFプロジェクト関係の応用情報技術者試験合格者数はかなり多くなってきています。「開発事業者がおっしゃっていることが難しくてわからないけど、とりあえず頷いておく」ような打ち合わせは完全になくなりました。技術的・予算的・工期的に実現不可能なことを無理強いすることもなくなり、開発事業者も安心して優秀なエンジニアをアサインしてくださるようになっています。
プロジェクトチームの要員数が3桁になったあたりで、開発事業者のプロジェクトマネージャーのYさんがどうやって魔法のようにマネジメントをなさっているのかに関心を抱き、プロジェクトマネージャ試験の勉強も始めました。過去問は、おそらく作問委員の方々がさまざま場所で炎上を体験されてきた叡智が濃縮されており、読んでいるだけで胸が痛みました。また、本番では数千字の論文を短時間で書くのですが、国家総合職試験を受けたと同じぐらいまで事前に論文対策を行いました。この論文対策も、現に日々、機能追加要望や、関係各所からの質問対応、説明会を行う時の原稿作成等や、開発事業者に対しての依頼等で大量の作文をする際に役に立っています。また、プロジェクトで危険な予兆があれば、「このままいくと、あの過去問のパターンに陥るなぁ」と早めから気づくようになりました。こちらは2020年秋試験で合格しました。
応用情報技術者試験、プロジェクトマネージャ試験に合格する過程で、「どう判断したらいいか自分で決めるのが怖い。上司に自信をもって報告できない。」といった他人任せのメンタリティから、「現時点の最適解はこれだと考える。一旦この方針で行かせてほしい。」といったメンタリティに変わりました。少なくとも一定の能力があると判定され、試験に合格している以上、何の方向性も提案せず、「わからない」と言って投げ出し、他人任せにすることは、職業倫理上もはや許されないという意識に変わりました。
もちろん、引き続き内外の有識者に頼る場面も多々ありますが、その際も「自分はここまで調べました。現時点ではこれが最適解なのではないかと思っていますが、自信が持てないので、お考えをお聞かせいただけないでしょうか。」といった問いかけ方に変わりました。また、「開発業者に任せきりだったので、私にはよくわかりません」という言い訳も許されないので、保守性の高いデータモデルの在り方や、障害発生時の対策やといった表面から見えてこない物事にもより鋭敏に注意を払うようになりました。
ある参考書の巻頭に、「良いプロジェクトマネージャーの存在により、プロジェクトチームのメンバーは、プロジェクトが滅茶苦茶になったり炎上したりすることなく、目的地にたどり着ける。プロジェクトマネージャーはプロジェクトチームやクライアントが不幸になることを予防している。プロジェクト期間中はありとあらゆることに振り回され、気が休まることは一瞬たりとも無いが、すばらしい職業ではないか。」といったことが書かれており、私もそうなりたいと考えています。
プロジェクトマネジメントが必要になるのはITシステムだけではなく、人間の集団が何か共通のゴールに向かって進む際はすべからく応用が可能です。人類は集団でプロジェクトを回すことでこの文明を築き上げてきました。歴史の中で人類は、散々、炎上プロジェクトを経験し、恥をかき、破産し、苦々しい思いをし、場合によっては不幸な結果になり、その反省文の塊がPMBOKだと考えています。PMBOKはプロジェクトマネージャ試験でも参照されているので、ぜひ、過去問を覗いてみていただければ幸甚です。

大臣官房デジタル戦略グループデジタル企画専門職 北山 勝史 様

顔写真(北山 勝史 様)

私は2003年に林野庁に入庁しました。おそらく多くの人が想像する公務員と違い、山でヘルメットをかぶり、ノコやナタを身につけ、木の太さや種類、本数を数える仕事を行っておりました。山から帰ってくると現場のメモを整理する事務作業があり、これらの業務の中でも目の前の小さな手間やミスを減らすため独学でプログラミングを学び、目の前の事務をちょっとだけ楽にするということをやっていました。
目の前の業務が楽になるのが楽しかったのもあり、趣味と実益を兼ねてITの勉強をしていましたが、興味のあるところだけに知識が偏っているという自覚もありました。そんな時、友人がIPAの試験を受けるという話をしていたので、じゃあ自分も受けよう思い応用情報技術者試験を受験しました。
応用情報技術者試験の試験範囲は非常に広いため勉強するのは大変でしたが、その分自分がどの分野が得意で、どの分野が不得意なのかということを客観的に把握するのにとても役に立ちました。私はテクノロジ系の分野が好きで、ほかの分野よりも多く勉強していたつもりですが、実はテクノロジ系の点数が悪かったです。
私は次回のプロジェクトマネージャ試験を受験します。この試験はプロジェクトで何か問題が起こったとき、困ったプロジェクトメンバーやステークホルダーを引っ張っていくためにどうするかという、机上演習のような試験となっており、実際の業務にとても生かせる試験であると感じています。
今はDX化という大きな流れがあり、ゼロから勉強を始める方もいらっしゃると思います。どこから手を付けてよいかわからないという時に、ITパスポート試験や基本情報技術者試験の勉強をして、興味を持った部分を掘り進めていくというのも一つの手だと思います。特定の製品に依存しない基礎技術を、網羅しているIPAの試験だからこその使い道だと思っています。

大臣官房デジタル戦略グループ企画専門職 辻本 翔大 様

顔写真(辻本 翔大 様)

私は入省6年目でデジタル戦略グループに所属しており、eMAFFチームとしてeMAFFプロジェクトにかかわっています。eMAFFプロジェクトを通じて農林水産業・食品産業のDXの実現に向けて取り組んでいますが、ITパスポート試験や応用情報技術者試験はその前提となるIT分野の体系的な知識の習得のために非常に効果的です。
私は大学では農学を専攻しており、ITに関する知識を習得する機会が全くありませんでした。2020年4月に現在のポストに就いた後に応用情報技術者試験を勧められ、その存在を知りました。基礎的な知識すらなかったので、まず同年9月にITパスポート試験を受けました。その後、2021年の4月に応用情報技術者試験を受けて合格しました。
知識も経験もない状態でITに関する知識が必要とされるポストに就いたので、ITパスポート試験と応用情報技術者試験の勉強を通じて知識を身に着けることができたのは非常に良かったです。まず、ITパスポート試験でITに関する基礎的な知識をある程度体系的に整理して学習することができました。次に、応用情報技術者試験では、特に演習問題を解く過程で現実に業務で起きている問題への解決策を導いてくれるような問題が多く、解いているだけでIT分野の業務の進め方の理解が深まりました。
こうした自分の経験からも言えることですが、DXの重要性が高まっている昨今、これまでデジタルとは縁遠いと考えられていたような業種においてもITやデジタル技術に関する基礎的な知識を求められる場面が増えてくるのではないかと想像します。こうした中で、ITパスポート試験や応用情報技術者試験で得られる知識の重要性はこれからもっと高まっていくと思います。

  1. 掲載内容は2021年9月取材時のものです。