プレスリリース
公開日:2025年8月7日
独立行政法人情報処理推進機構
独立行政法人情報処理推進機構(IPA、理事長: 齊藤裕)は、2018年度からデジタル時代における人材のスキル変革についての調査・研究をすすめ、昨年度は自律的な学びの促進についてまとめました。さらに2024年度版として継続調査した結果を、デジタル時代のスキル変革等に関する調査(2024 年度) 報告書として本日公開しました。
報告書の結果より、企業が学びのきっかけ作りや習慣の醸成を行うとともに、個人としては企業の支援を活用しながら学びの行動の具体化をすることが自律的・継続的な学び促進となることが浮き彫りになりました。
IPAが実施したDX動向2025での企業アンケート調査によると、DXを推進する人材が「大幅に不足している」「やや不足している」と回答した企業は8割を超えており、デジタル化の進展に伴いDXを推進する人材は依然として不足傾向です。デジタル技術を活用して事業創造や製品・サービスの付加価値向上等を実行できる人材の育成が喫緊の課題である状況を踏まえIPAでは、個人へのアンケート調査を行い、前述の企業アンケート調査の結果とあわせ、変化の激しい時代をリード、キャッチアップし続けるために学び続ける個人の行動と企業・組織の支援についてまとめました。
本報告書の主な要点は以下のとおりです。
企業が今後従業員に求めるスキルや、個人が身に付けるべきと考えるスキルについては、項目により回答割合に差はあるものの、企業、個人いずれも全体として類似した傾向が示されており、戦略立案・ビジネスモデル設計等やデータ・AIに関するスキルを求めていることがわかりました。(図1及び2参照 画像をクリックすると拡大表示されます。)
またそれらのスキルを特に求められる「ビジネスアーキテクト」「データサイエンティスト」の7割以上が身に付けたスキルを活かす機会があると回答しており、企業・個人ともに事業創出やデータ・AIの活用に注力している様子が伺えます。(図3参照)
学ぶことが習慣化・継続化している人の行動を見ると、自身のスキルレベルを把握し目標設定して、体系的に学びその成果を業務に活かしている人の比率が約40%前後、更に学びの内容や活動を社内外の人と共有して学びの伝播や学ぶ文化の醸成に一役を担っているといった行動を何らかの形で取っている人が約50%と多いことが分かりました。(図4参照)
一方で学びの行動ができていない人にその理由を聞いたところ、「学習する時間がない(29.8%)」を筆頭に「評価や収入に影響がない」といった学びの環境やインセンティブに関する回答(25%前後)の他、そもそも「自らが目指す姿などにあった学習内容・方法や、キャリアに必要なスキルがわからない」といったキャリア形成に関する回答(25%前後)が上位を占めていました。(図5参照)
自律的・継続的な学びを促進していくためには、これらの学びに対する阻害要因を排除していく企業・組織の働き掛けや支援とともに個人の学びに対する行動の変容が不可欠と考えています。
企業が行うべき働きかけ・支援の内容や個人がどのように学びの行動を始めるか・変えていくかについてのポイントをまとめました。
組織にとって必要な人材像、スキルや適切な処遇を企業が提示することで、事業・業務と個人の学びやキャリア形成とをつなげ、さらなるエンゲージメントとの向上を図る。
学びができていない個人にきっかけを与えるため、学びの時間の創出や育成のガイドの提示、キャリア開発支援など、社内外の各種施策により学ぶための環境を整備する。
学びを習慣化・継続化できている個人による学びの共有・伝播の行動を、企業は更に支援・促進し、また学びができていない個人はそのような機会に積極的に関わり、学びの機会・行動の拡大を促す。
自身のキャリアやスキルを検討・把握し、学んでいる人の行動やコミュニティを参考にしながら、あるいは所属組織に囚われることなく社外を含めた様々な支援を活用し、できるところから積極的に学びを行動に移す。学びの行動を実施することを前提に時間の活用を検討する。
本報告書では、企業調査、個人調査のアンケート結果および自律的・継続的な学びを促進するためのポイントをまとめるほか、個人調査のデータをまとめた個人調査報告書もあわせて公開しています。
IPAは個人が自律的・継続的に学び、企業・組織は、そのような人材が価値発揮し続けられるように支援、環境整備を行い、加速する社会の変化に対応しながら個人・企業が共に成長し続ける関係が作られることを期待しています。
IPA デジタル人材センター 人材プロモーションサービス部 宇野・神谷