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~ユーザ企業・ITベンダ間の共通理解と対話を促す~

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社会基盤センター

改正民法に対応した「情報システム・モデル取引・契約書」を公開
~ユーザ企業・ITベンダ間の共通理解と対話を促す~

最終更新日:2020年1月15日
2019年12月24日公開
独立行政法人情報処理推進機構
社会基盤センター

背景

デジタル技術を活用して企業のビジネスを変革し、自社の競争力を高めていく「デジタルトランスフォーメーション(DX)」が注目を集めています。経済産業省が2018年9月に公開した「DXレポート」は、DXを円滑に進めるには、ユーザ企業、ITベンダが双方の間で新たな関係を構築していく必要があると提言しています。そのために、DXの進展によるユーザ企業とITベンダのそれぞれの役割の変化等を踏まえたモデル契約の見直しの必要性が指摘されました。

こうした状況を踏まえ、IPAでは、経済産業省が2007年に公開した「情報システム・モデル取引・契約書」、およびIPAが2011年に公開した「非ウォーターフォール型開発用モデル契約書」についての見直しの検討を2019年5月から行っています。まず、この検討全体を取りまとめる「モデル取引・契約書見直し検討部会」を設置し、民法改正に対応した「情報システム・モデル取引・契約書」の見直しについては、同部会の下で、ユーザ企業、ITベンダおよび法律専門家から成る「民法改正対応モデル契約見直し検討WG」において検討してきました。

概要

IPAはこれまでの検討を取りまとめ、2020年4月に施行される改正民法に直接関係する論点を見直した、「情報システム・モデル取引・契約書」の民法改正を踏まえた見直し整理反映版(以下、「民法改正整理反映版」)を、2019年12月24日に公開しました。なお、「情報システム・モデル取引・契約書」には第一版と追補版がありましたが、今回、そのそれぞれについて見直しを行い、更新版を公開しました。

「民法改正整理反映版」は、ユーザ企業、ITベンダ、関連業界団体、および法律専門家の参画を得て議論を重ね、中立的な立場でユーザ企業・ITベンダいずれかにメリットが偏らない契約書作成を目指しているところが特長です。後述のように、民法改正がITシステム開発の業務委託契約に及ぼす影響について論点を絞り、現行のモデル契約条項と解説の修正版、および見直しについての解説を整理しています。

IPAはユーザ企業・ITベンダ双方が「民法改正整理反映版」を参照することで、契約のタイミングで双方がシステムの仕様や検収方法などについて共通理解のもと対話を深め、よりよい関係のもとITシステム開発が行われることを期待しています。

「民法改正整理反映版」は、下記よりダウンロード可能です。

なお、DX時代に求められるアジャイル開発への対応や、民法改正に直接かかわらない論点については引き続き検討を重ね、2020年中に改訂版を公開する予定です。

検討のポイント

今回の見直しでは、主にモデル契約に直接かかわる請負及び準委任に関する改正民法への対応について検討が行われました。主な論点としては、以下の通りです。詳細及び対応した他の事項については「全体の解説」をご覧ください。

主な論点

1. 請負契約における契約不適合責任
  1. (1) 「報酬減額請求権」が救済方法として追加されたことへの対応
  2. (2) 契約不適合責任における「損害賠償」と「解除」の位置づけ
  3. (3) 契約不適合責任における「権利行使の期間制限」への対応
2. 請負契約・準委任契約における報酬請求権
  1. (4) 成果報酬型準委任契約の位置づけ
  2. (5) 中途解除の場合の報酬請求権の帰趨

一例:「権利行使の期間制限」(上記1.(3))に関する見直しの概説

(a) 現行のモデル契約における規律 ソフトウェア開発業務における瑕疵担保責任の期間制限は検収完了時から○ヶ月以内
(b) 民法改正の概要 改正前の瑕疵担保責任の存続期間は目的物の引渡時/仕事の終了時から1年以内に権利を行使する必要があったが、改正後の契約不適合責任では契約不適合を知った時から1年以内にその旨の通知をすればよいことになり、注文者(ユーザ企業)が契約不適合を「知る」までの間は消滅時効一般の規定に基づき、10年間権利の行使がされ得ることとなった。
(c) モデル契約見直し検討における主な議論

(引き続き起算点を検収完了時とすべき意見)

  • 責任が追及されうる期間が延びれば人員維持のコストが上がり、そのコストが報酬に転嫁される結果、ユーザ企業に不利益になるのではないか
  • 現状の「検収完了時から1年は瑕疵担保責任、それ以降は保守契約での対応」はユーザ企業にとっても経済的ではないか
  • 開発環境は日々変化していくのであって、検収完了から長期間経過後に修正を求められても当時の開発環境が再現できないのではないか
  • ユーザ企業が権利を行使できる期間の進行が契約不適合を認識するまで開始しないのであれば、適切な検査を行うインセンティブがユーザ企業に生じないのではないか

(現行の規律を変更すべきという意見)

  • 責任が追及されうる期間が延びた際のコスト増の見積もりの適切さに疑問がある
  • 民法上のデフォルトルールでは契約不適合責任に基づき無償対応すべきであるはずの期間にもかかわらず、保守契約で有償対応するのはおかしいのではないか
  • 仮に民法から期間を短縮するとしても、ベンダに大きな落ち度がある契約不適合も保護対象になるのはおかしいのではないか
  • 適切な検査を行うインセンティブを考えて起算点を検収完了時とする規律を維持するのであれば、性質上検査で発見することは難しい契約不適合についてはその規律の適用を外すべきではないか
(d) 「民法改正整理反映版」での見直し結果
  • 期間制限の起算点を検収完了時という客観的なものとする規律は維持する
  • 契約不適合がベンダの故意・重過失に起因する場合には、客観的な起算点からの期間制限を適用除外にする
  • 改正民法下では期間が1年以上に設定されることもあり得ることから、モデル契約上の期間制限の表記は「〇ヶ月/〇年」とする
また、見直しについての解説では、ユーザ企業とITベンダの間で具体的な期間を決定するために対話による共通理解を得ることが望ましいポイントもあわせて紹介している。

「民法改正整理反映版」の構成とダウンロード

※(修正履歴)とあるものは、前版からの修正履歴を残しています。
※(ひな型)とあるものは、解説文は無く、条文のみとしています。
※ Word形式の文書は、自由にカスタマイズしてご利用いただけます。

本件の内容に関するお問い合わせ

IPA 社会基盤センター 上田/山下
E-mail : メールアドレス

更新履歴

2019年12月24日 公開
2020年1月15日 「見直しのポイント」を「検討のポイント」とし、主な論点や見直しの概説の記載内容を整理しました