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脆弱性対策情報データベースJVN iPediaの登録状況 [2019年第3四半期(7月~9月)]

独立行政法人情報処理推進機構
最終更新日:2019年10月23日

1. 2019年第3四半期 脆弱性対策情報データベース JVN iPediaの登録状況

 脆弱性対策情報データベース「JVN iPedia( https://jvndb.jvn.jp/ )」は、ソフトウェア製品に関する脆弱性対策情報を2007年4月25日から日本語で公開しています。システム管理者が迅速に脆弱性対策を行えるよう、1)国内のソフトウェア開発者が公開した脆弱性対策情報、2)脆弱性対策情報ポータルサイトJVN(*1)で公表した脆弱性対策情報、3)米国国立標準技術研究所NIST(*2)の脆弱性データベース「NVD(*3)」が公開した脆弱性対策情報を集約、翻訳しています。

1-1. 脆弱性対策情報の登録状況

~脆弱性対策情報の登録件数の累計は107,650件~

 2019年第3四半期(2019年7月1日から9月30日まで)にJVN iPedia日本語版へ登録した脆弱性対策情報は下表の通りとなり、2007年4月25日にJVN iPediaの公開を開始してから本四半期までの脆弱性対策情報の登録件数の累計は、107,650件になりました(表1-1、図1-1)。
 また、JVN iPedia英語版へ登録した脆弱性対策情報は下表の通り、累計で2,066件になりました。

表1-1.2019年第3四半期の登録件数
  情報の収集元 登録件数 累計件数
日本語版 国内製品開発者 1 219
JVN 74 8,746
NVD 4,924 98,685
4,999 107,650
英語版 国内製品開発者 1 218
JVN 17 1,848
18 2,066

図1-1. JVN iPediaの登録件数の四半期別推移

2. JVN iPediaの登録データ分類

2-1. 脆弱性の種類別件数

 図2-1は、2019年第3四半期(7月~9月)にJVN iPediaへ登録した脆弱性対策情報を、共通脆弱性タイプ一覧(CWE)によって分類し、件数を集計したものです。

 集計結果は件数が多い順に、CWE-79(クロスサイトスクリプティング)が847件、CWE-20(不適切な入力確認)が503件、CWE-119(バッファエラー)が409件、CWE-200(情報漏えい)が354件、CWE-284(不適切なアクセス制御)が299件でした。
 最も件数の多かったCWE-79(クロスサイトスクリプティング)は、悪用されると偽のウェブページが表示されたり、情報が漏えいしたりするおそれがあります。

 製品開発者は、ソフトウェアの企画・設計段階から、脆弱性の低減に努めることが求められます。IPAではそのための資料やツールとして、開発者や運営者がセキュリティを考慮したウェブサイトを作成するための資料「安全なウェブサイトの作り方 (*4)」や、「IPAセキュア・プログラミング講座(*5)」、脆弱性の仕組みを実習形式や演習機能で学ぶことができる脆弱性体験学習ツール「AppGoat(*6)」などを公開しています。

2-2. 脆弱性に関する深刻度別割合

 図2-2はJVN iPediaに登録済みの脆弱性対策情報をCVSSv2の値に基づいて深刻度別に分類し、登録年別にその推移を示したものです。

 2019年にJVN iPediaに登録した脆弱性対策情報は深刻度別に、レベルIIIが全体の26.3%、レベルIIが62.8%、レベルIが10.9%となっており、情報の漏えいや改ざんされるような危険度が高い脅威であるレベルII以上が89.1%を占めています。

 図2-3はJVN iPediaに登録済みの脆弱性対策情報をCVSSv3の値に基づいて深刻度別に分類し、登録年別にその推移を示したものです。

 2019年にJVN iPediaに登録した脆弱性対策情報は深刻度別に、「緊急」が全体の16.2%、「重要」が42.0%、「警告」が40.5%、「注意」が1.3%となっています。

 既知の脆弱性による脅威を回避するため、製品開発者は常日頃から新たに報告される脆弱性対策情報に注意を払うと共に、脆弱性が解消されている製品へのバージョンアップやアップデートなどを速やかに行ってください。

 なお、新たに登録したJVN iPediaの情報を、RSS形式やXML形式(*7) で公開しています。

2-3. 脆弱性対策情報を公開した製品の種類別件数

 図2-4はJVN iPediaに登録済みの脆弱性対策情報をソフトウェア製品の種類別に件数を集計し、年次でその推移を示したものです。2019年で最も多い種別は「アプリケーション」に関する脆弱性対策情報で、2019年の件数全件の約76.4%(11,444件/全14,976件)を占めています。

 図2-5は重要インフラなどで利用される、産業用制御システムに関する脆弱性対策情報の件数を集計し、年次でその推移を示したものです。これまでに累計で2,177件を登録しています。

2-4. 脆弱性対策情報の製品別登録状況

 表2-1は2019年第3四半期(7月~9月)にJVN iPediaへ登録された脆弱性対策情報の中で登録件数が多かった製品の上位20件を示したものです。

 本四半期は1位にサーバ管理ソフトウェアのcPanelがランクインしました。なお、登録した315件の内286件が2018年以前に公表された脆弱性情報であることから、本四半期に大量の脆弱性が発見された訳ではなく、何らかの理由(例えば、本四半期にCVE採番の申請が行われた等)により、JVN iPediaの情報元であるNVDにまとめて登録が行われたためと考えられます。また、2位から12位にはOS製品が並んでおり、特にWindows製品が多数ランクインしました。

 JVN iPediaは、表に記載されている製品以外にも幅広い脆弱性対策情報を登録公開しています。製品の利用者や開発者は、自組織などで使用しているソフトウェアの脆弱性対策情報を迅速に入手し、効率的な対策に役立ててください(*8)

表2-1. 製品別JVN iPediaの脆弱性対策情報登録件数 上位20件 [2019年7月~2019年9月]
順位 カテゴリ 製品名(ベンダ名) 登録件数
1 サーバー管理
ソフトウェア
cPanel (cPanel) 315
2 OS Microsoft Windows Server (マイクロソフト) 146
3 OS Microsoft Windows 10 (マイクロソフト) 145
4 OS Microsoft Windows Server 2019 (マイクロソフト) 128
5 OS Microsoft Windows Server 2016 (マイクロソフト) 110
6 OS Linux Kernel (Kernel.org) 93
7 OS Microsoft Windows Server 2008 (マイクロソフト) 92
7 OS Microsoft Windows Server 2012 (マイクロソフト) 92
9 OS Microsoft Windows 7 (マイクロソフト) 91
10 OS Microsoft Windows 8.1 (マイクロソフト) 90
11 OS Microsoft Windows RT 8.1 (マイクロソフト) 84
12 OS Android (Google) 76
13 PDF閲覧・編集 Adobe Acrobat DC (アドビシステムズ) 75
13 PDF閲覧 Adobe Acrobat Reader DC (アドビシステムズ) 75
15 ブラウザ Google Chrome (Google) 74
16 CMS Magento (Magento, Inc.) 71
17 開発環境 GitLab (GitLab.org) 69
18 OS Debian GNU/Linux (Debian) 45
19 ミドルウェア MySQL (オラクル) 43
20 ブラウザ Mozilla Firefox (Mozilla Foundation) 42

3. 脆弱性対策情報の活用状況

 表3-1は2019年第3四半期(7月~9月)にアクセスの多かったJVN iPediaの脆弱性対策情報の上位20件を示したものです。

 本四半期は脆弱性対策情報ポータルサイトJVNで公開した脆弱性対策情報が上位20件を占めました。

表3-1.JVN iPediaの脆弱性対策情報へのアクセス 上位20件 [2019年7月~2019年9月]
順位 ID タイトル CVSSv2
基本値
CVSSv3
基本値
公開日 アクセス数
1 JVNDB-2019-000043 ひかり電話ルータ/ホームゲートウェイにおける複数の脆弱性 4.3 6.1 2019/6/27 8,313
2 JVNDB-2019-000045 アクセス解析CGI An-Analyzer における複数の脆弱性 6.5 6.3 2019/7/5 7,390
3 JVNDB-2019-000044 iDoors リーダーの管理画面における認証回避の脆弱性 5.8 8.8 2019/7/1 6,815
4 JVNDB-2018-000122 パナソニック製 BN-SDWBP3 における複数の脆弱性 5.8 8.8 2018/11/20 6,485
5 JVNDB-2019-000046 Intel Dual Band Wireless-AC 8260 におけるサービス運用妨害 (DoS) の脆弱性 3.3 4.3 2019/7/10 6,417
6 JVNDB-2019-000049 WordPress 用プラグイン Category Specific RSS feed Subscription におけるクロスサイトリクエストフォージェリの脆弱性 2.6 4.3 2019/7/18 6,327
7 JVNDB-2019-000048 WordPress 用プラグイン WordPress Ultra Simple Paypal Shopping Cart におけるクロスサイトリクエストフォージェリの脆弱性 2.6 4.3 2019/7/16 6,039
8 JVNDB-2019-000050 Central Dogma におけるクロスサイトスクリプティングの脆弱性 4.3 6.1 2019/7/31 5,857
9 JVNDB-2018-000104 FileZen における複数の脆弱性 10.0 10.0 2018/10/15 5,735
10 JVNDB-2019-007404 WonderCMS におけるディレクトリトラバーサルの脆弱性 5.5 6.4 2019/8/9 5,718
11 JVNDB-2018-000105 Metabase におけるクロスサイトスクリプティングの脆弱性 4.3 6.1 2018/10/11 5,688
12 JVNDB-2019-000001 WordPress 用プラグイン spam-byebye におけるクロスサイトスクリプティングの脆弱性 2.6 6.1 2019/1/10 5,603
13 JVNDB-2018-000073 チャットワーク デスクトップ版アプリ (Windows 版) のインストーラにおける DLL 読み込みに関する脆弱性 6.8 7.8 2018/7/23 5,589
14 JVNDB-2018-000079 Explzh におけるディレクトリトラバーサルの脆弱性 4.3 3.3 2018/7/13 5,568
15 JVNDB-2019-000007 OpenAM (オープンソース版) におけるオープンリダイレクトの脆弱性 2.6 3.4 2019/2/6 5,562
16 JVNDB-2018-000081 日医標準レセプトソフトにおける複数の脆弱性 5.2 5.5 2018/7/18 5,560
17 JVNDB-2018-000099 サイボウズ Garoon におけるディレクトリトラバーサルの脆弱性 5.5 6.4 2018/9/10 5,525
18 JVNDB-2018-000080 Movable Type 用プラグイン MTAppjQuery において任意の PHP コードが実行可能な脆弱性 7.5 7.3 2018/7/18 5,523
19 JVNDB-2018-000132 東芝ライテック製ホームゲートウェイにおける複数の脆弱性 8.3 8.8 2018/12/19 5,504
20 JVNDB-2018-000078 WordPress 用プラグイン FV Flowplayer Video Player におけるクロスサイトスクリプティングの脆弱性 2.6 6.1 2018/7/17 5,494

 表3-2は国内の製品開発者から収集した脆弱性対策情報でアクセスの多かった上位5件を示しています。

表3-2.国内の製品開発者から収集した脆弱性対策情報へのアクセス 上位5件 [2019年7月~2019年9月]
順位 ID タイトル CVSSv2
基本値
CVSSv3
基本値
公開日 アクセス数
1 JVNDB-2018-010027 JP1/Operations Analytics におけるディレクトリパーミッションの問題 3.5 4.9 2018/12/4 4,191
2 JVNDB-2019-004441 Cosminexus HTTP Server および Hitachi Web Server における脆弱性 なし なし 2019/6/3 4,177
3 JVNDB-2019-002892 Cosminexus における複数の脆弱性 なし なし 2019/4/25 4,156
4 JVNDB-2018-009328 JP1/VERITAS 製品における複数の脆弱性 10.0 9.8 2018/11/15 4,084
5 JVNDB-2019-003539 Hitachi IT Operations Director、JP1/IT Desktop Management - Manager、JP1/IT Desktop Management 2 - Manager におけるDoS脆弱性 なし なし 2019/5/20 4,065

注1) CVSSv2基本値の深刻度による色分け

CVSS基本値 = 0.0~3.9
深刻度=レベルI(注意)
CVSS基本値 = 4.0~6.9
深刻度=レベルII(警告)
CVSS基本値 = 7.0~10.0
深刻度=レベルIII(危険)

注2) CVSSv3基本値の深刻度による色分け

CVSS基本値 = 0.1~3.9
深刻度=注意
CVSS基本値 = 4.0~6.9
深刻度=警告
CVSS基本値 = 7.0~8.9
深刻度=重要
CVSS基本値 = 9.0~10.0
深刻度=緊急

注3) 公開日の年による色分け

2017年以前の公開 2018年の公開 2019年の公開

脚注

(*1) Japan Vulnerability Notes:脆弱性対策情報ポータルサイト。製品開発者の脆弱性への対応状況を公開し、システムのセキュリティ対策を支援しています。IPA、JPCERT/CCが共同で運営しています。
https://jvn.jp/

(*2) National Institute of Standards and Technology:米国国立標準技術研究所。米国の科学技術分野における計測と標準に関する研究を行う機関。
https://www.nist.gov/

(*3) National Vulnerability Database:NISTが運営する脆弱性データベース。
https://nvd.nist.gov

(*4) IPA:「安全なウェブサイトの作り方」
https://www.ipa.go.jp/security/vuln/websecurity.html

(*5) IPA:「IPA セキュア・プログラミング講座」
https://www.ipa.go.jp/security/awareness/vendor/programming/

(*6) IPA:脆弱性体験学習ツール 「AppGoat」
https://www.ipa.go.jp/security/vuln/appgoat/

(*7) データフィード
https://jvndb.jvn.jp/ja/feed/

(*8) 脆弱性情報の収集や集めた情報の活用方法についての手引きをまとめたレポート「脆弱性対策の効果的な進め方(実践編)」を公開。
https://www.ipa.go.jp/security/technicalwatch/20150331.html

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IPA セキュリティセンター 渡邉/大友
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