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エンタプライズ系事業/機能要件の合意形成技法

本事業は、2008~2009年度に実施しました。

背景

発注者と開発者の認識の齟齬により要求と実現されるソフトとの間に「ギャップ」が生じます。具体的には、次の(1)~(3)のようなギャップが生じます。
  1. 要件定義すべき内容が抜けており、開発者に説明していない。
  2. 発注者が開発者に説明したが、何らかの理由で漏れた。
  3. 開発者が何らかの理由により誤認・拡大解釈し、実現範囲に取り込んでしまった。


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機能要件の合意形成ガイドとは

機能要件に着目し、上流工程で実現したい情報システム像を伝え、発注者と開発者との不充分な合意形成が原因で発生する下流工程の手戻りを防止するための次のようなコツを集めたものです。
  • 実現したい情報システム像について発注者と開発者が合意形成するために、伝える側が漏れなく正確に情報を提供するためのコツ
  • 発注者と開発者との不充分な合意形成が原因で下流工程で発生する手戻りを防止するための先人の開発者のコツ

機能要件の合意形成ガイドは、「概要編」 と次の6つの技術領域のコツをまとめた各分冊からなります。
  • 画面
  • システム振舞い
  • データモデル
  • 帳票
  • バッチ
  • 外部インタフェース


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合意成熟度と4つの作業

機能要件の合意形成ガイドでは、3つのレベルの合意成熟度と4つの作業で説明しています。

a)合意成熟度のレベル
  1. 仕掛レベル
    ・発注者が「言い切った」、開発者が「聞き切った」と言えるレベルです。
    ・要件定義が完了していなければ、このレベルで実施します。システム化の目的と範囲が明確になっています。
  2. 充実レベル
    ・言い切った/聞き切った内容から「図表に書いてレビュー」を繰り返し、発注者と開発者の合意内容が充実していくレベルです。
  3. 完成レベル
    ・合意内容が管理され、発注者と開発者の双方が「合意内容を確認できた」と言えるレベルです。
    ・外部設計工程の成果物の最終承認直前までのレベルです。

b)4つの作業

  1. 言い切る/聞き切る
    発注者は、次のような要件定義の結果を伝えます。
    ・システム化の目的・範囲
    ・運用時や保守拡張時の操作や業務
    ・業務遂行において変えることのできない制約条件(業務や組織構造、連携システムなどにより生じる制約、及び業務上の法令や規則など)

    正しく伝えるために、発注者が言い切ること、開発者が聞き切ることです。
     
  2. 図表に書く
    ・開発者は、設計書の記述上の約束事を共通ルールとして記述します。
    ・開発者は、発注者から聞き切った情報を反映して書きます。
    ・開発者は、開発グループ内のレビューで指摘された欠陥を修正します。
     
  3. もれ/矛盾をチェックする
    ・開発者は、共通ルール自体にもれ/矛盾がないことをチェックします。
    ・開発者は、「工程成果物」が共通ルールに沿っていることをチェックします。

    開発者は、他の技術領域の「工程成果物」を含め、整合をチェックします。
     
  4. 一緒にレビューする(発注者と開発者で)
    ・発注者の要件と開発者の設計に齟齬がないことをレビューします。
    ・発注者は開発者が想定していない前提や運用がないかをレビューします。
    ・システム化の目的と範囲に照らし合わせて、「工程成果物」が正しく書かれていることをレビューします。

図

コツとは

本ガイド取り上げたものは、「お客様との齟齬を防止するノウハウ」 。本ガイドにおいてはこのノウハウをコツと呼び、そのようなコツを掲載。

【留意点】
  • どの局面にも通用するわけではない
  • コツの適用可能/不可能はプロジェクト(システム)の特性により異なります。
    例えば、CRUD図(※)は顧客納品物/レビューの対象ではありません。
    ※データがどの機能で作成(create)、参照(read)、更新(update)、削除(delete)されるかをマトリックス形式で示した図
  • 唯一の解ではない
    例えば、画面遷移の過不足をチェックする方法はこれだけではない
  • コツは"森"ではなく"木"に近い
    大局的な作業プロセスや、成果物構成などを規定するものではなく、特定の場面において役立つノウハウ(記述の仕方、振る舞い)

利用シーン

  1. 開発標準に沿った設計業務を補足するコツ集として
    設計に関するドキュメントを介して、SIベンダの開発担当者間、あるいは開発担当者とユーザ企業情報システム部門・ユーザとの間のスムーズな意思疎通をはかるために利用します。
  2. 教育コンテンツの素材集として
    SIベンダやユーザ企業の情報システム部門を中心に、各社の教育コンテンツの素材集として利用します。
  3. レビューに臨む際の心得として
    情報システム開発のステークホルダ間のコミュニケーションを円滑にするために、レビューのコツを利用します。

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