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2021年3月18日
独立行政法人情報処理推進機構
IPA(独立行政法人情報処理推進機構、理事長:富田達夫)は本日、「企業における営業秘密管理に関する実態調査2020」を公開しました。この調査は2020年における国内企業での営業秘密の漏えい発生状況、管理実態、対策などの実態把握を目的としてアンケートを中心とする各種調査を行ったものです。
近年、企業の技術情報を同業他社や海外企業に不正に持ち出した事案が相次いで報道され、営業秘密の保護強化が課題となっています。IPAは、2020年における国内企業での営業秘密の漏えい発生状況、管理実態や対策などの実態把握を目的として、2175社へのアンケート調査を中心に文献、裁判例調査、インタビュー調査を実施しました。内部不正対策の進展などを想定しながら、2016年に実施した同名の調査との経年比較を行うとともに、テレワーク環境での管理状況などを新たに問うことで環境変化への対応や、営業秘密漏えいを防ぐための対策などを分析しました。
本調査の結果、内部不正対策としては従業員と秘密保持契約を締結する企業が増え(図1)、不注意・管理不備等による事故は減少傾向にある一方で、主たる漏えいルートは中途退職者であり、確信犯的な内部不正の減少傾向はみられなかったことが分かりました(図2)。
テレワークの急速な普及などに伴う影響としては、組織のガバナンス低下等が懸念され、営業秘密を扱う際の新たなルール整備が求められるなか、秘密情報管理の観点でのクラウドサービスの扱いなどについては対策が十分でないことが明らかになりました(図3、図4)。
主なポイントは以下のとおりです。
1.従業員と秘密保持契約を締結する企業は46.1%から56.6%(10.5%増)と増加しました。営業秘密漏えいに関する報道等を受けて、内部不正による情報持ち出し等の被害抑制のため、対策を講じる企業が増えたものと考えられます。(回答数=2137)
2. 情報漏えい事例が発生した(可能性を含む)と回答した企業は5.2%と前回調査(9.6%)より減少したものの、その要因としては企業における対策の進展、攻撃の巧妙化など、複数の要因が作用した結果と考えられます。また、漏えいルートでは「中途退職者」による漏えいが36.3%と最多で前回(28.6%)より増加し、内部不正を原因とする情報漏えいの発生は減少傾向にはないことが分かりました。 (回答数=113)
3. テレワーク(在宅勤務等)で営業秘密を扱う場合の対策の導入状況では、まず通信時の保護対策を行う企業が多く、「クラウドサービスで秘密情報を扱う場合の対策」は17.7%と、クラウド対策まで踏み込んで取り決めている割合は低いことが分かりました。(回答数=896)
4. クラウドサービスにおける営業秘密の不正利用防止のために実施している対策についての設問では、不正操作の証跡確保に相当する「ログ分析の実施」が24%にとどまるなど、比較的高度な対策までは十分に進んでいないことが分かりました。一方、アクセス権限の設定ミスやサイバー攻撃に備えた基本対策の必要性は一定程度認識されていることがうかがえます。(回答数=583)
このほか、中小企業の対策や不正競争防止法改正の効果などの仮説をもとに設定した43項目のアンケート結果から得られた各種データ、調査結果を踏まえた課題の分析や考察などを、本調査報告書本編に掲載しています。以下からダウンロードが可能です。
IPAは、ニューノーマルな環境で新たなIT技術を活用する多くの企業が本調査結果を参考にすることで、営業秘密保護の対策を進め、企業競争力を強化することを期待しています。
■調査概要: