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未踏IT人材発掘・育成事業:2020年度採択プロジェクト概要(平井PJ)

最終更新日:2020年6月26日

1.担当PM

  • 竹迫 良範(株式会社リクルートテクノロジーズ 執行役員)

2.採択者氏名

  • 平井 龍之介(東京大学 工学部 計数工学科)

3.採択金額

  • 2,736,000円

4.テーマ名

  • シェーダライブコーディング・アーカイブシステムの作成

5.関連Webサイト

  • なし

6.申請テーマ概要

CGプログラミングの世界では、GLSL、p5.jsなどのグラフィック描画言語を駆使し、少ないデータ量かつリアルタイムで映像を制作する文化がある。中でも一定時間内に即興で空のテキストデータから複雑な図形を描画するGLSLコードを作成するシェーダライブコーディングと呼ばれるパフォーマンスが存在し、プログラマのみならず様々な層から注目を集めている。

このライブコーディングは、作品を制作する際に残るコードをもとに鑑賞者が自分の好みに合わせて作品を改変できる点や、音楽やウェブカメラの情報を取得してインタラクティブな映像を生成する点など、他のプログラミングにはない特徴を多く持つ。

現在、パフォーマが行ったライブコーディングをアーカイブするには、動画ファイルとして保存するのが一般的だが、ライブコーディングを動画ファイルに変換してしまうと、上に述べたようなライブコーディングが本来持つ環境とのインタラクションや鑑賞時の改変体験といった様々な情報が失われてしまう。

本プロジェクトでは、GLSLコードさえあればシェーダの描画結果を再現できることに注目し、ライブコーディング中のコードの時間変化を記録したデータを保存することによって動画データに依存せずにシェーダライブコーディングをアーカイブし、それが持つ情報を失うことなく鑑賞者の側が再現できる独自のアーカイブシステムを開発する。本システムにより、時間的・空間的に離れた人にもシェーダライブコーディングの魅力を伝えることを可能にすることによって、ライブコーディングやアートプログラミングの文化の更なる発展に資する。

7.採択理由

なめらかに動く美しいCGアニメーションと同期した音楽をリアルタイムにレンダリングするプログラムはデモシーンと呼ばれ(日本ではメガデモという呼称が有名)、古くから親しまれているハッカー文化のサブカルチャーの一つである。古くはAmigaのデモシーンからコンピュータを駆使するプログラミングの超絶技巧テクニックが学ばれてきたが、現在はGPU利用を前提としたGLSLシェーダプログラミングの描画表現の創作活動が主流となってきている。

完成されたGLSLコードを共有してWebGLで描画する既存のサイトは複数あるが、本提案のようなライブコーディングや制作過程を重視した体験を共有できるサービスは、今後のGLSLプログラマの裾野の拡大に大きく貢献できる可能性がある。スマートフォン上でGLSLのデモが実行できることをきっかけに若年層がクリエータとして目覚めるきっかけを持ち、プログラムの奥深さに嵌るハッカー人口が増え、CGレンダリング技術とサブカルチャーが世代を超えて継続して発展していくことも含め、期待を込めて採択した。

更新履歴

  • 2020年6月26日

    2020年度採択プロジェクト概要(平井PJ)を掲載しました。