最終更新日:2019年6月28日
近年、音楽プログラミングを用いた表現は、Algoraveのようなダンスミュージックの生成の例など、大衆音楽文化とも接近しつつある。しかし、既存の音楽制作ソフトウェア(Digital Audio Workstation、以降DAW)は、既存の音楽表現に特化する代わりに拡張性が乏しく、直接プログラミングを用いた生成的表現を行うことは難しい。
そこで本プロジェクトでは、DAWと音楽プログラミング環境の中間的位置づけとして、楽譜のように機能する音楽プログラミング言語を設計し、そのソースコードをDAWのようにグラフィカルに配置し編集することができる、音楽制作環境を開発する。具体的には、マウスを用いたプロシージャルな波形生成や、アルゴリズミックなパターン生成の支援を行えるようなインタフェースの設計を試みる。
本プロジェクトの実現により、これまでプログラミングで生成した素材をDAWに取り込んで編集するといったワークフローから、音楽制作の根幹部分に対しても生成的表現を行うことが可能になり、プログラミングを用いた音表現の領域が更に広がることが期待される。
本提案は、音楽と音響の両方を表現できる新しいプログラミング言語を設計し、ソースコードのテキストとGUIで双方向に編集可能な音楽制作ツールを開発する野心的なプロジェクトである。電子楽器の発展によりシンセサイザーやMIDIシーケンサを使った音楽演奏が当たり前となり、GS音源やGM音源などの標準規格が登場することで、DTMによる作曲も行われるようになった。MML(Music Macro Language)で音楽をプログラミングする文化はそこで育ってきたと言える。その後、PCの性能が向上し、GUIソフトウェアを使ってマルチトラックのオーディオ合成が柔軟にできるようになり、DAWによる楽曲編成も一般的となった。
最近は、アルゴリズムとレイブを組み合わせたAlgoraveという造語も生まれ、プログラミングとDJプレイやVJ表現を組み合わせたライブコーディングによる音楽表現も発展しつつある。たとえばTidalCyclesでは数十行のプログラムを書いて、ソースコードを直接編集することで音楽の演奏をリアルタイムに変えることができる。本プロジェクトによって開発される新しい楽曲編集システムによって多様な音響音楽表現をリアルタイムに制御できるようになり、最近のDAWによる音楽編集では成し遂げられない新しい音楽表現の発展を期待している
2019年6月28日
2019年度採択プロジェクト概要(松浦PJ)を掲載しました。