最終更新日:2019年6月28日
近年VRは低価格な頭部搭載ディスプレイ等が入手可能になったことから、広く普及しつつある。特にVR環境中での触覚情報の提示を試みる研究は数多く存在し、その主なターゲットは指である。そのため、指先に触覚情報を提示するデバイスが数多く発表・発売された。
しかしながら、これらのデバイスは幅広く社会に浸透しきれていない。これは、指に対して多自由度の力触覚や温感等の様々な触覚情報を提示した上で、指の動きを妨げないデバイスが実現困難なことが一因である。これは主にデバイスどうしの干渉など、アクチュエータによって生じる制約が大きいためで、未だに一般的に使用できる触覚提示デバイスは開発されていない。
そこで本プロジェクトでは、VR空間内においては、指先で触れた触覚情報は必ずしも指先に提示する必要は無いのではないと仮定する。指先の触覚提示位置を指先に限定しないことで、アクチュエータの問題が解決でき、提示できる触覚情報が限定されずに済む。同時に、初めは不自然で違和感が生じたとしても、トレーニングを行うことによって違和感が軽減でき、触覚提示デバイスとしての納得感が得られるのではないかと考える。
本プロジェクトでは、指先への触覚提示手法の問題点に対し、指先への触覚を身体の他部位、特に背中に転移させる手法を実現し、これが有効であるという仮説を検証する。また、その有効性を証明するためのVRコンテンツを併せて制作する。
現在バーチャルリアリティの分野では触覚提示技術が大きなトピックスになっている。本提案は実際にVR物体と相互作用する部位と、触覚を提示する部位を分離している点に独自性があり、そのことにより設計の自由度を高め、装着性の向上や安価な実装に資することが想定される。物体に触れた情報の単なるフィードバックにとどまらない、新たな感覚呈示技術に繋がることを期待したい。
2019年6月28日
2019年度採択プロジェクト概要(森山PJ)を掲載しました。