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未踏IT人材発掘・育成事業:2018年度採択プロジェクト概要(森崎・川波PJ)

  • 最終更新日:2018年7月3日

2018年度採択の森崎・川波プロジェクトについて概要を記載しています。

森崎・川波プロジェクト

1.担当PM

五十嵐 悠紀(明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 専任准教授)

2.採択者氏名

森崎 汰雄(東京大学 大学院 新領域創成科学研究科 複雑理工学専攻 修士1年)
川波 稜(東京大学 大学院 情報学環 学際情報学府 先端表現情報学コース 修士1年)

3.採択金額

2,304,000円

4.テーマ名

ペットロボットをインタフェースとした高齢者向け健康管理システム

5.関連Webサイト

なし

6.申請テーマ概要

少子高齢化が進む我が国では、テクノロジーを用いて高齢者の介護や生活支援を自動化していく必要に迫られている。完全に機械が医療を代行することは困難であるが、独居老人の見守りや健康管理など、いわゆる「予防医療」についてはある程度の自動化が現実的であり、大きな価値がある。現在、この「予防医療の自動化」を目指す様々なシステムが発表されているが、「自動」のシステムの多くは据え置きであることから対象に対し取れる動作に限界があり、十分な機能を実現するには高齢者自らシステムを利用しようとする意思が必要になる。しかし、現存するシステムでこの「意志誘発」までデザインされているものは存在せず、このため「予防医療の自動化」は十分に実現できていない。

以上より、本プロジェクトにおいては、高齢者に負担なく行動を強制、即ちシステムを利用しようという「意志を誘発」するところまでデザインされた健康管理システムを開発し、これまでに無いレベルでの「予防医療の自動化」を目指す。

具体的には、たまごっちのような、「育成できるペットロボット」をインタフェースに採用し、ロボットと「たかいたかい」(抱え上げる動作)をして遊び、この時の加速度から運動機能の状態を把握する等、様々なインタラクションを介して生体情報を自動的に取得、蓄積、解析するシステムを構築する。また、このうち「育成」が持つ責任感、即ち高齢者の「面倒を見なければ」という気持ちを上手く取り入れることにより、インタラクション(システム利用の意思)を高齢者の自覚無しに誘発することを目指す。さらに、システムの解析結果として得られた健康上の問題は、それが軽度である場合は生活習慣の改善をロボットとの自然な会話の中で高齢者に指示し、健康を自動で管理すると共に、ロボットが「心配」していることを高齢者に感じさせ、更なるインタラクションへの意思誘発にも利用する。また、問題が重度でシステムでは対応不可と判断できる場合は専属の医師、あるいは第三者へ通告を行い、高齢者の容態急変といった最悪の事態を未然に防ぐことを目指す。

7.採択理由

高齢者の増加や介護の問題が本格化している中で、ぬいぐるみの癒し効果とそれによる触れ合いを通して、健康データを取得し、高齢者の心身の健康を相乗的にアップさせようという提案である。ペットロボットを、高齢者が触れ合いたくなるようなロボットという認識を生ませるようなインタラクションデザインにするのがポイントとなってくるだろう。すでに福祉の現場にアポイントをとっている面に加えて、技術力も評価できる。現場との協力体制は確保できているため、実装して実験して、を繰り返し、専門の先生だけでなく、真摯に高齢者と向き合ったうえでシステム設計をしていってくれることを期待する。