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住民起点MaaSワーキンググループ インタビュー

公開日:2021年3月26日

デジタルアーキテクチャ・デザインセンター

  • 全国展開を視野に入れた、持続可能な地域インフラモデルの構築を目指して

"MaaS"だけに捉われない、 住民起点のアーキテクチャ設計に取り組む

取り組んでいるテーマや目標は?

細川

私たちのワーキンググループ(以下WG)では“MaaS”がテーマになっていますが、地方では人口減少や超高齢化などにより公共交通が次第に廃れ、それに伴い移動難民が増加するなど、生活自体が持続可能ではなくなりつつあるのが現状です。そこで、“MaaS”だけに捉われるのではなく、その地域に住む人々が皆、幸せに暮らせるような、住民起点の持続可能な社会システム構造(アーキテクチャ)の設計に取り組んでいます。

その中で、特に重視しているのが需要と供給の関係です。人口が減り、高齢化が進んでいくと需要はもちろん、供給側も担い手不足で減少していきます。また、ある程度の需要と供給のスケールがなければ生活の維持は難しくなり、従来の市場原理に則した需要と供給のマッチングといった構造は成り立たなくなってしまいます。

このようなことから、私たちのWGでは、地域のリソースを最大限に活用し、リソースの状況に合わせて調整可能な需要をバランス良くコーディネートして、地域全体を最適化する方向性で動こうとしています。移動を例に挙げると、地域のリソースである公共交通機関(バス、タクシー)、貨物車(郵便・宅配)、住民のマイカーといった利用中の車両と、移動弱者である高齢者の需要をダイナミックにマッチングし、状況に応じて近隣住民のマイカーに同乗したり、移動せずに商品・サービスを自宅に届けてもらえるような、地域全体で支える新たな地域インフラモデルを構築し、これを全国に展開していくことで地方が抱えている問題を持続的に解決していきたいと考えています。

地方にはさまざまな産業が存在しており、各種法規制や伝統的業界慣習などが複雑に絡み合っているのが現状です。そこで、目指すべき将来像を具体的に描き、それを実現するために必要となる機能を構造化していくプロセスをステークホルダーと共に行うなど、皆が目前の制約に左右されずに同じ方向を見て取り組めることを常に意識しながら、地域インフラモデルの構築に挑んでいます。

仮説をもとに設計し、 実証実験を重ねて本格的な実装へ

具体的な活動内容は?

細川

現在、4名のメンバーが在籍し、私がリーダーとして全体の方向性や活動スケジュールなどをまとめ、他のメンバーは、アーキテクチャ設計といった実務を中心に担っています。私たちが立てた仮説をもとにアーキテクチャを設計し、検証を重ねて実装していくといった活動スケジュールを組み、試行錯誤しながら進めています。というのも、本当に上手く機能するかどうかは、実際の現場でやってみないと分からないことも多々あるからです。

具体的には、住民や各事業者など、いろいろなところに私たちの活動を紹介し、ヒアリングをして、地域の方のアイデアや意見をいただきながら、自治体などと協力し合って実証実験や検証を繰り返し、来年度中にはアーキテクチャ設計を形にして本格的な実装に繋げていく予定です。ちなみに来年は、地方にある企業と実証実験をする計画があり、そのための準備も開始しました。

ガバナンスからインセンティブ、連携、 データ管理の在り方まで検討

地域移動の問題解決へ向けてチャレンジしていることは?

大内

地域の移動に焦点を当てると、交通事業者、事業者、住民のマイカーといったさまざまな道路利用者のリソースを活用することが不可欠です。そのため、道路利用者が主体的に移動弱者の移動をサポートするためのガバナンスやインセンティブの在り方を検討していく必要があります。また、移動せずに商品・サービスを運んでもらう場合には、異業種との連携が発生しますので、連携の仕組みを検討していくことも重要です。

さらに、さまざまな車両と移動弱者の需要をダイナミックにマッチングする観点から、「フィジカル空間の状況をサイバー空間へどのように収集していくのか」「需要をどのように取りまとめていくべきか」といったことに加え、収集したデータを管理する組織や管理の在り方、それをマッチングする組織や管理の在り方なども検討していく必要があると考えています。

産業アーキテクチャ設計の スキルが身につき、 実践でも試せる環境

DADCで活動できる醍醐味や魅力は?

大内

過去にロールモデルがなく、これが正解という答もない中で、最適なゴールにたどり着くために試行錯誤を繰り返すプロセスが結構面白いです。また、私の地元は交通が不便なところなので、実際、家族も直面している地域の課題解決に役立つアーキテクチャを設計する仕事であるため、とてもやり甲斐を感じています。

産業アーキテクチャ設計のスキルが身につくことに加え、普段は接点のない分野・業界の方と一緒に仕事ができる点も、とても魅力的です。いろいろな人と話をする中で、今まで知らなかった情報が得られたり、繋がりも増えていきますから。

細川

これからの時代は企業でも、産業アーキテクチャ設計は非常に重要になっていくと思います。そのスキルが身につく教育プログラムが用意されているだけではなく、実践で試していけることこそDADCで活動する最大の魅力なのではないでしょうか。

社会の課題を解決したい 仲間を増やし、 より暮らしやすい地域を実現

今後、取り組んでいきたいことは?

大内

まずは、固まりつつあるビジョンなどを具体的に設計に落とし込んで、実証実験を行い、産業アーキテクチャを構築することです。少し先になるとは思いますが、人口減少や超高齢化で困っている地域が、実際に自分たちが設計したアーキテクチャを活用して住みやすくなったということを目の当たりにできるよう、取り組んでいきたいと思います。

細川

私たちが取り組んでいる課題は壮大で、WGだけで解決できるものではありません。仲間たちを増やしていくことも大切です。センター内はもちろん、外部で一緒に取り組みたい方は大歓迎ですし、互いに知見を交わす場も今まで以上に設けていきたいと考えています。

アーキテクチャと言うと、エンジニアが行うような難しい話に聞こえますが、決してそうではありません。社会システムや産業の仕組みの構造を設計しようという取り組みなので、社会の課題などを感じられている方には、ぜひ参画してほしいと思います。そして、社会に実装していって、地域の方々が本当に良かったと思ってくださる、そんな未来を1日も早く実現したいです。

  • MaaS

更新履歴

  • 2023年3月26日

    住民起点MaaSワーキンググループのメンバー・インタビューを公開しました。