情報セキュリティ
公開日:2024年5月15日
営業秘密の管理や保護に関する様々な情報をお届けして参ります。
一般社団法人 日本知的財産協会
有識者連携WGリーダー
淺井俊雄
(日本電気株式会社 プロフェッショナル・知的財産アナリスト)
令和5年改正不正競争防止法が、先月から施行されました。損害賠償算定規定の拡充、使用等の推定規定の拡充、国際的な営業秘密侵害事案における手続の明確化、限定提供データの定義の明確化など、ビジネスの多様化に対応して営業秘密の保護の実効性を高めるための改正項目が多く含まれています。このような重要な法律の改正が短期間で実現できたことの背景として、営業秘密官民フォーラムや営業秘密のツボの継続的な取り組みによって、官民の連携が充分に醸成されていたことを挙げることができます。
日本知的財産協会は、1938年に10社による勉強会として発足いたしました。会員数は 1,360余へと成長しましたが、業種や規模の垣根を越えて互いに学びあう文化は、脈々と受け継がれてきました。“Creating IP Vision for the World”のスローガンの下、世界に向けて知財ビジョンを発信するとともに、31の専門委員会・ワーキンググループの研究成果を、機関誌「知財管理」や年間160を超える研修会を通じて会員に提供しています。
営業秘密は、業種・規模を問わず企業の競争力の源泉ですが、知識や人財の流動化が進んだ環境では攻守いずれの立場にもなり得ることを想定する必要があり、また、保護対象や漏洩経路の新たな課題も時を追って絶えず現れてきています。令和5年の不正競争防止法の改正にあたっては、産業構造審議会 不正競争防止小員会において、企業の実務者のこのような課題意識を反映した提言をいたしました。さらに、近年重要性が増しているAIやデータに関するルール形成、例えば日本のAI事業者ガイドラインや欧州のData Actにおいても、透明性などの新たな指針の導入に際して、引き続き営業秘密が適切に保護されるべきことを要望してまいりました。
また、当協会のフェアトレード委員会は、異業種の会員の交流の中で、国内外への政策提言から秘密管理のノウハウの啓蒙まで、営業秘密やデータに関わるさまざまな活動を精力的に展開しています。2023年度に改訂した「秘密情報マネジメントハンドブック」では、クラウド化などの情報ネットワーク技術の普及や新型コロナウイルスの流行による社会変容に対応した想定事例を通じて、望ましい情報管理のあり方や問題発生時の対応方法について、具体的に解説をしています。
日本知的財産協会は、これからも多彩な会員の知見を活かして、企業情報の保護と活用に向けた官民一体の活動に積極的に取り組んでまいります。
弁護士知財ネットからの「訴訟・判決コラム」は、今回はお休みです。
過去の掲載記事は、弁護士知財ネットのウェブサイトをご覧ください。
2024年第1四半期の相談対応では、前四半期と比較し、不正ログインに関する相談が約44.7%増えました。ウイルス検出の偽警告に関しては約4.6%増で、ウェブサイトの広告枠で次のページへ移るためのボタンを装ったリンクから被害を受けた相談が増加しています。
詳細はウェブページをご確認ください。
4月15日にIPAが注意喚起した、Palo Alto Networks 社のVPN機器等に搭載されたPAN-OSのGlobalProtect機能に関するコマンドインジェクションの脆弱性について情報を更新しています。国内でも悪用が観測されており、速やかに対策や回避策を適用することが推奨されます。
詳細はウェブページをご確認ください。
インターネット境界に設置されたAdobe ColdFusionの脆弱性(CVE-2023-29300)を悪用した攻撃による被害を国内の複数組織で確認し、IPAでは4月18日に注意喚起しました。当該製品を利用している場合は修正対策プログラムを適用し、既に適用している場合であっても、日頃から通信ログ等から不審なアクセスの有無を確認することが推奨されます。
詳細はウェブページをご確認ください。
本号では新着情報はありません。
令和5年6月14日に法律第51号として公布された「不正競争防止法等の一部を改正する法律」では、以下のようなさらなる営業秘密・限定提供データの保護強化を実施しています。
なお、この改正法は、2024年4月1日から施行されています。
詳細は経済産業省のウェブページをご覧ください。
不正競争防止法のテキストを2024年版に改訂しました。
昨年、5年ぶりに法改正がされ、本年4月1日から施行されました。改訂版では、その改正を取り込んだ最新の内容となっており、知財室ホームページにて公表しております。
以下のサイトからご覧いただけます。
また、不正競争防止法や令和5年の法改正の内容について説明会をして欲しいなどのご要望がございましたら、知的財産政策室までご連絡をお願いします。知財室員がご説明に伺います。
不正競争防止法の講演等において、不正競争防止法の概要とともに紹介・説明させていただいておりました「秘密情報の保護ハンドブック」について、改訂版を公表いたしました(令和6年2月)。
令和5年の不正競争防止法改正など関連法制度・ガイドラインの見直しに伴う修正、営業秘密・労働環境をとりまく「環境の変化」に伴う修正、「生成AIの利活用の拡大」といった社会の動きを考慮した修正等が今回の改訂の中心です。
秘密情報の保護ハンドブックや同ハンドブックのてびきといった資料は、経済産業省ホームページからダウンロード可能です。次のリンク先をご確認いただき、社内研修等での活用をご検討いただけますと幸いです。また、ご希望の方には冊子をお届けすることも可能でございますが、現在改訂版の冊子を準備中のため、準備が整い次第、知財室ホームページからの請求受付を開始予定です。なお、ハンドブックの手引きにつきましては、請求受付を始めましたのでご希望の方へお届けすることも可能でございます。
詳細は「冊子の送付について」をご確認ください。
不正競争防止法では、限定提供データに関する規定を設けております。企業が保有・活用する「情報」を営業秘密と相互補完的に守る枠組みです。
経済産業省では、限定提供データの定義や不正競争に該当する要件等について、一つの考え方を示すものとして「限定提供データに関する指針」を公表しておりますが、この度、不正競争防止法の改正において限定提供データの保護範囲の見直しを行ったことを踏まえて、指針の改訂を行いました(令和6年2月)。
知財室では、データ利活用に関する資料をウェブサイトにて公表しておりますので、ご活用いただけますと幸いです。
データ利活用を始めたいが何から始めて良いかわからない、データ利活用においてどのような点に気をつければ良いか等の疑問をお持ちの方はぜひご覧ください。
内閣府知的財産戦略本部において、政府における知財戦略や知財施策を取りまとめた「知的財産推進計画2023~多様なプレイヤーが世の中の知的財産の利用価値を最大限に引き出す社会に向けて~」を公表しています。「知的財産推進計画2023」では、知財戦略の基本認識と重点10施策の中で、営業秘密やデータ利活用に関する施策についても掲載されています。
詳細は知的財産推進計画2023のPDFをご確認ください。
経済産業省は産業競争力強化法に基づく技術情報管理認証制度の基準をもとに、中小企業や専門知識がない方でも自社の情報セキュリティ対策の状況を確認し、必要な対策を把握できる「技術情報管理 自己チェックリスト」を公開しております。
情報セキュリティ対策をなにから始めればいいか分からずお悩みの方は、まずは自己チェックリストを経済産業省ウェブページからダウンロードして、自己診断してみましょう。
技術情報管理自己チェックリストのダウンロードは技術情報管理自己チェックリストのウェブページからできます。
INPITでは、大切な秘密情報を巡るよくあるトラブル事例や、営業秘密として管理する手法についてまとめた研修動画を、当館のeラーニングサイトIPePlatに公開しております。
営業秘密について学びたい、これから営業秘密管理に取り組もうという方向けの内容で、無料でご視聴いただけます。
・はじめての「営業秘密管理」
動画はIP ePlatのウェブページよりご確認いただけます。
皆様の企業・研究機関にはどのような技術情報がありますか?技術流出の防止には、「情勢」・「事例」・「対策」の理解が欠かせません。この度、警察庁公式サイトに特設ページ「技術流出の防止に向けて」を開設し、技術流出に関する情勢、リスクのある具体的事例「3つのS」と題した企業や個人が取るべき対策などをわかりやすく説明しています。動画やパンフレットも掲載されていますので社内研修等にご活用ください。
「技術流出の防止に向けて」のウェブページで、事例、動画、パンフレット等をご覧ください。
3月21日に内部不正による情報漏えいの手口や対策を学べる新作の動画を公開。IPAが過去に制作した情報セキュリティ対策に役立つ他の映像と併せて、新入社員向けの研修などにご活用ください。
動画はYouTubeのIPA Channelをご覧ください。
新作「今、そこにある脅威~内部不正による情報流出のリスク~」
スタートアップ必見!知的財産の重要性を呼びかける、全5話のWebショートドラマを公開中です!
『全話最終回… どうやっても毎回倒産してしまうナオトとその仲間たち』
大手企業の契約担当者の罠に落ち、信頼していた研究パートナーにはめられ、不慣れな異国の地でも知的財産トラブルに見舞われるなど、挑戦のたびに知的財産が原因で倒産してしまう3人組。知的財産の重要性を知らないと行き着く先は「THE END.」になってしまうという、学びのある物語です。
動画は特設サイト「スタートアップは突然に」でご覧ください。
世界初!?厳しいビジネスの世界をサバンナに例え、ネイチャードキュメンタリーさながらに、サバンナで生きるシャチョー(スタートアップ類)の大切なアイデアや技術を“捕食”されないよう、知的財産の重要性を啓発する動画になっています。
YouTube動画はINPIT Channelの「スタートアップ社長 in サバンナ(ナレーション:森田成一)」からご覧ください。
トップセールスでうっかり…、取引先からの要請に答えたら…、展示会でアピールし過ぎて…、など営業秘密で陥りがちな失敗とケーススタディをYouTube動画で公開中です。
「わが社の営業秘密は大丈夫かな?」とちょっと思った方は必見です。
豊富な知財実務経験を有する「知財戦略エキスパート」が、企業の実情に合わせた秘密情報の管理体制(例えば、書類・記録媒体の管理方法、電子データの管理等)の整備をご支援いたします。
地方自治体や中小企業支援機関が主催するセミナー・講演会、中小企業における社内研修等への講師派遣も無料で実施しており、ご好評いただいております。是非ご活用ください。
お問い合わせは、「営業秘密支援窓口」のウェブページをご参照ください。
INPITが運営する「知財ポータル」にて、「特許などによる権利化、営業秘密としての秘匿化をどう使い分ければよい?」「転職しようとする社員に対してどのような契約を結べばよいか?、他社を退職した技術者を採用する際にどのような点に注意すればよいか?」等といった、営業秘密管理におけるよくある質問を一問一答形式のFAQとしてとりまとめています。
詳しくは知財総合支援窓口(知財ポータル)の「よくあるご相談」のウェブページをご覧ください。
去る3月にIPAでは架空の中小規模のエネルギー関連企業を舞台に、内部不正によって引き起こされる情報漏えいに関する啓発映像を公開しました。
内部不正対策は特に中小企業での実施率が低いことがわかっています。サプライチェーンにおける情報漏えいの糸口にならない様、この映像の視聴が対策実施のきっかけになればと願っています。
さて、この映像では舞台となる企業の社名を設定しています。検討時には、実在の企業名と被らないよう、かといってそれらしく、もっともらしく、と意見を出し合いました。英単語と日本語を語呂合わせしたような今風のネーミングでは世界観が違うため、徐々に昭和系に傾き、帝国〇〇、国際〇〇と、既視感満載の候補しか思い浮かばず頭を悩ませました。
では最終的に架空の社名はどうなったのか?ぜひまだ未視聴の方はこれを機会に映像をご覧いただければ幸いです。
「つぼマガ」第95号をお読みいただき、ありがとうございました。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)セキュリティセンター
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