情報セキュリティ

営業秘密のツボ 2024年02月21日 第92号

公開日:2024年2月21日

営業秘密の管理や保護に関する様々な情報をお届けして参ります。

巻頭メッセージ

弁護士 松本好史
(弁護士知財ネット農水法務支援チーム座長)

弁護士知財ネットは、知的財産関連業務における地域密着型の司法サービスを行う弁護士の全国規模のネットワークですが、農水法務支援チームは、農林水産関係知財の法律相談や国の農林水産関係の知財関連の各種プロジェクトに参画する弁護士を出しているなど、農林水産業の知的財産権の保護・活用のために活動しています。

農林水産業の知的財産は、特許、商標の保護に加えて、種苗法による新品種の保護、地理的表示(GI)や和牛遺伝資源の保護が挙げられますが、営業秘密の保護についてはあまり考えられていませんでした。農林水産業の現場では、例えば熟練生産者による農業の栽培管理技術や畜産の飼養技術などのノウハウを用いることで、我が国の高品質で高付加価値な果物や牛肉などを生産してきたことから、これらのノウハウが流出することによる損害を防止するために営業秘密の保護が必要な状況がありました。

しかし、これらのノウハウは、生産者が共有するのが当たり前であって特定の生産者が独占すべきものではないとの意識が一般的であり、これらのノウハウの多くが屋外で使用されること、自然を相手にしていることや個人経営が圧倒的に多いことなどの事情もあり、営業秘密としての管理、保護が検討されませんでした。
 
経済のグローバル化の進展などにより我が国の農林水産物や食品の輸出が拡大していますが、我が国で開発された優良品種の海外流出や日本ブランド産品の模倣品の流通などによって、我が国は多大な損害を被っています。農林水産省は、令和3年4月に「農林水産省知的財産戦略2025」を策定し、農林水産分野の国際競争力を強化するために、「グローバル時代に向けてこれからの農林水産政策に対して必要な取組」などを定めました。

その中に、「価値の源である営業秘密の保護」の項目が定められ、農業分野に必要な秘密管理の基準などの検討が述べられています。そして、令和4年3月に「農業分野における営業秘密の保護ガイドライン」が策定され、営業秘密管理指針の農業分野への当てはめや営業秘密の管理について検討されました。

水産業の分野では、養殖現場での飼育、選抜等による優れた生産技術やノウハウを保護するために令和5年3月に「養殖業における営業秘密の保護ガイドライン」が策定されました。

また、スマート農林水産業時代におけるノウハウ、データの利活用の推進について、令和2年3月に「農業分野におけるAI・データに関する契約ガイドライン」が策定され、これを参考にして令和4年4月に「水産分野におけるデータ利活用ガイドライン」が策定されました。

このように、数年来、農林水産業の分野でも産業のグローバル化にともなって、営業秘密やデータなどのノウハウの保護の重要性が認識されるようになっています。弁護士知財ネットは、これらのノウハウの保護のために今後とも事業者や研究機関の皆様に寄り添って適切なアドバイスができるよう努めて参りますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

目次

1.訴訟・判決コラム:弁護士知財ネット

弁護士知財ネットからの「訴訟・判決コラム」は、今回はお休みです。過去の掲載記事は、以下URLをご覧ください。

コラムの内容は、弁護士知財ネットのウェブサイトをご覧ください。

2.サイバーセキュリティ対策

1.Microsoft製品の脆弱性対策について(2024年2月):独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

2月14日(日本時間)にMicrosoft製品に関する脆弱性の修正プログラムが公表されました。これらの脆弱性が悪用されると攻撃者によるパソコンの制御など様々な被害が発生するおそれがあります。既に悪用の事実も確認済みであるとMicrosoft社が公表しており、早急に修正プログラムの適用が求められます。

詳細はウェブページをご確認ください。

2.情報セキュリティ10大脅威2024を発表:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

 1月24日に情報セキュリティ10大脅威2024を発表しました。「内部不正による情報漏えい等の被害」は昨年の4位から3位に順位を上げ、9年連続9回目のランクインをしています。同じく9年連続9回目にはランサムウェア、標的型攻撃があり、これらの脅威と同じく、10大脅威の中でも重要視されていることが見て取れます。

詳細はウェブページをご確認ください。

3.「SP800-37 rev.2」「SP800-161 rev.1」日本語翻訳版の公開:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

セキュリティ対策の向上に役立つ、海外のセキュリティ文書の翻訳を行っています。
1月31日に「SP800-37 rev.2 連邦政府情報システムに対するリスクマネジメントフレームワーク適用ガイド:セキュリティライフサイクルによるアプローチ」と、「SP800-161 rev.1 システム及び組織におけるサプライチェーンのサイバーセキュリティリスクマネジメントのプラクティス」の日本語翻訳版を公開しました。

詳細はウェブページをご確認ください。

3.セミナー・イベント等のお知らせ

1.「不正競争防止法等の一部を改正する法律」の説明会を開催:経済産業省 知的財産政策室

令和5年6月14日に「不正競争防止法等の一部を改正する法律」が、法律第51号として公布されました。

知的財産の分野におけるデジタル化や国際化の更なる進展などの環境変化を踏まえ、中小企業・スタートアップ等による知的財産を活用した新規事業展開を後押しする等、時代の要請に対応した知的財産制度の見直しが必要とされています。
今回の改正では、デジタル技術の活用により、特に中小企業・スタートアップの事業活動が多様化していること等に対応するため、以下を行いましたので、これら改正事項を中心に御説明します。

(1)ブランド・デザイン等の保護強化
(2)コロナ禍・デジタル化に対応した知的財産手続の整備
(3)国際的な事業展開に関する制度整備の観点から不正競争防止法、商標法、意匠法、特許法、実用新案法、工業所有権特例法の改正

また、令和6年の春頃に運用開始を予定している特許出願非公開制度についても取り上げます。本制度は経済安全保障推進法に基づき、国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明が記載されている特許出願について、出願公開等の手続を留保するとともに情報流出防止の措置を講ずる制度です。経済安全保障に対する関心が高まる中、制度の概要や特許制度に関わる方に広く御注意いただきたい点(外国出願が禁止される場合やその確認方法など)を中心に御説明します。

説明会の詳細は、特設サイトに掲載されています。
営業秘密につきましても、今回の法改正において、(1)損害賠償額算定規定の拡充、(2)使用等の推定規定の拡充、(3)国際的な営業秘密侵害事案における手続の明確化、といった改正が行われていますので是非御参加ください。

詳細・お申し込みは特設サイトをご覧ください。

2.「はじめての「営業秘密管理」」研修動画:独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT:インピット)

独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT:インピット)では、大切な秘密情報を巡るよくあるトラブル事例や、営業秘密として管理する手法についてまとめた研修動画を、当館のeラーニングサイトIPePlatに公開しております。
営業秘密について学びたい、これから営業秘密管理に取り組もうという方向けの内容で、無料でご視聴頂けます。
動画は「はじめての営業秘密管理」よりご覧いただけます。

4.営業秘密関連情報のご紹介

1.全話最終回(!?)毎回倒産するショートドラマ「スタートアップは突然に」:独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT:インピット)

スタートアップ必見!知的財産の重要性を呼びかける、全5話のウェブショートドラマを制作しました!

『全話最終回… どうやっても毎回倒産してしまうナオトとその仲間たち』

大手企業の契約担当者の罠に落ち、信頼していた研究パートナーにはめられ、不慣れな異国の地でも知的財産トラブルに見舞われるなど、挑戦のたびに知的財産が原因で倒産してしまう3人組。知的財産の重要性を知らないと行き着く先は「THE END.」になってしまうという、学びのある物語です。

 映像は、特設サイト「スタートアップは突然に」をご覧ください。

2.「不正競争防止法等の一部を改正する法律」について:経済産業省 知的財産政策室

令和5年6月14日に法律第51号として公布された「不正競争防止法等の一部を改正する法律」では、以下のようなさらなる営業秘密・限定提供データの保護強化を実施しています。

  • ビッグデータを外部と共有するサービスでデータを秘密管理している場合も含め限定提供データとして保護し、侵害行為の差止め請求等を可能にすること
  • 損害賠償訴訟で生産能力を超える損害分も使用許諾料相当額として増額請求可能とすること
  • 国外において日本で事業を行う企業の営業秘密侵害が発生した場合にも、日本の裁判所に訴訟を提起でき、日本の不正競争防止法を適用可能とすること

 詳細は経済産業省のウェブページをご覧ください。

3.「技術情報管理 自己チェックリスト」のご紹介:経済産業省 安全保障貿易管理課

経済産業省は産業競争力強化法に基づく技術情報管理認証制度の基準をもとに、中小企業や専門知識がない方でも自社の情報セキュリティ対策の状況を確認し、必要な対策を把握できる「技術情報管理 自己チェックリスト」を公開しております。

情報セキュリティ対策をなにから始めればいいか分からずお悩みの方は、まずは自己チェックリストを経済産業省ウェブページからダウンロードして、自己診断してみましょう。

 技術情報管理自己チェックリストのダウンロードは、技術情報管理自己チェックリストのウェブページをご確認ください。

4.技術流出の防止に向けたウェブページ、動画、パンフレットのご紹介:警察庁 警備局外事情報部外事課 経済安全保障室

皆様の企業・研究機関にはどのような技術情報がありますか?
技術流出の防止には、「情勢」・「事例」・「対策」の理解が欠かせません。この度、警察庁公式サイトに特設ページ「技術流出の防止に向けて」を開設し、技術流出に関する情勢、リスクのある具体的事例「3つのS」 と題した企業や個人が取るべき対策などをわかりやすく説明しています。動画やパンフレットも掲載されていますので社内研修等に御活用ください。

「技術流出の防止に向けて」のウェブページから事例、動画、パンフレット等をご覧ください。

5.「知的財産推進計画2023」について:内閣府 知的財産戦略推進事務局

内閣府知的財産戦略本部において、政府における知財戦略や知財施策を取りまとめた「知的財産推進計画2023~多様なプレイヤーが世の中の知的財産の利用価値を最大限に引き出す社会に向けて~」を公表しています。 「知的財産推進計画2023」では、知財戦略の基本認識と重点10施策の中で、営業秘密やデータ利活用に関する施策についても掲載されています。

詳細は 知的財産推進計画2023のPDF版をご確認ください。

6.「秘密情報の保護ハンドブック」及び「情報管理も企業力 秘密情報保護ハンドブックのてびき」を配布しています:経済産業省 知的財産政策室

不正競争防止法の講義等において、不正競争防止法の概要をはじめ、秘密情報の保護ハンドブックや同ハンドブックのてびきの紹介・説明をさせていただいております。
これらの資料は、経済産業省ホームページからダウンロード可能です。また、ご希望の方には、冊子をお届けすることも可能でございます。社内研修等での活用をご検討いただけますと幸いです。

詳細は「冊子の送付について」のウェブページをご確認ください。

7.データ利活用に関する資料を公表しております:経済産業省 知的財産政策室

不正競争防止法では、限定提供データに関する規定を設けております。企業が保有・活用する「情報」を営業秘密と相互補完的に守る枠組みです。
知財室では、データ利活用に関する資料をウェブサイトにて公表しておりますので、ご活用いただけますと幸いです。

データ利活用を始めたいが何から始めて良いかわからない、データ利活用においてどのような点に気をつければ良いか等の疑問をお持ちの方はぜひご覧ください。

8.「スタートアップ社長inサバンナ」!独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT:インピット)

世界初!?
厳しいビジネスの世界をサバンナに例え、ネイチャードキュメンタリーさながらに、サバンナで生きるシャチョー(スタートアップ類)の大切なアイデアや技術を“捕食”されないよう、知的財産の重要性を啓発する動画になっています!!

YouTube動画はINPIT(インピット)Channel「スタートアップ社長 in サバンナ」(ナレーション:森田成一)からご覧ください。
また、「INPIT(インピット)のスタートアップ支援!」のウェブページも併せてご覧ください。

9.営業秘密保護PR動画(ショートドラマ&解説動画)を公開中です:独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT:インピット)

トップセールスでうっかり・・・、取引先からの要請に答えたら・・・、展示会でアピールし過ぎて・・・、など営業秘密で陥りがちな失敗とケーススタディをYouTube動画で公開中です。

「わが社の営業秘密は大丈夫かな?」とちょっと思った方!必見です。

YouTubeで公開中の動画

第1弾【この話、自分には関係ない本当にそう】トップセールスでのうっかり
第2弾【取引先からの思いがけない提案】苦渋の判断が生んだ悲劇
第3弾【会社総出でアピールしたら】展示会の落とし穴

10.不正競争防止法テキストを2024年版に改訂しました:経済産業省 知的財産政策室

不正競争防止法のテキストを2024年版に改訂しました。昨年、5年ぶりに法改正がされ、本年4月1日から施行されます。改訂版では、その改正を取り込んだ最新の内容となっています。

また、不正競争防止法や令和5年の法改正の内容について説明会をして欲しい、などのご要望がございましたら、知的財産政策室までご連絡をお願いします知財室員がご説明に伺います。

11.営業秘密・秘密情報管理、知財戦略のFAQ:独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT:インピット)

独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT:インピット)が運営する「知財ポータル」にて、「取引先から我が社のノウハウの提供を求められている。どうしたらよい?」といった、営業秘密管理におけるよくある質問を一問一答形式のFAQとしてとりまとめています。

詳しくは営業秘密・知財戦略よりご覧ください。

12.「営業秘密・知財戦略相談窓口」をご活用ください:独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT:インピット)

 知的財産戦略アドバイザーが企業の実情に合わせた秘密情報の管理体制(例えば、書類・記録媒体の管理方法、電子データの管理等)の整備をご支援いたします。  
地方自治体や中小企業支援機関が主催するセミナー・講演会、中小企業における社内研修等への講師派遣も無料で実施しており、ご好評いただいております。是非ご活用ください。

お問い合わせは「営業秘密・知財戦略相談窓口」のサービス概要をご参照ください。

事務局のつぶやき

今月のIPA

今年は元旦に能登半島地震が発生し、甚大な被害、厳しい寒さの中、遅々として救護・救援が進まない映像を目にし、日本中が屠蘇気分の吹き飛ぶ新年の幕開けとなったのではないでしょうか。

私は年末に専門店で正月用の日本酒を買ったのですが、それがたまたま奥能登のお酒でした。その酒蔵も被災し、全壊してしまったとのこと。今年の仕込みは断念されました。ただ、その後で、他県の蔵元の支援により、被災時に仕込中だった醪(もろみ)を運び出し、日本酒を絞ることができたという報道を目にし、暗闇の中の光明を見たような心地がしました。

日本酒の材料は米、水、麹など実にシンプル。ですが米の種類、精米歩合、火入れなど製法の違いにより、多種多様で繊細な日本酒が季節ごとに醸されます。醪も絞るタイミングによって味わいが大きく変化するそうです。

だからこそ造り手の技量、工夫があまたの銘酒を生み出す酒造の強み、ノウハウであり、模倣も容易ではないと考えられます。加えて酒蔵には固有の菌が棲んでおり、それらが酒の個性になるといいます。

能登半島地震で被災された方には安全と衣食住の確保による日常を取り戻されることが最優先ですが、蔵に棲みついている菌達の無事も願いつつ、酒蔵の復興に微力ながら支援していきたい思います。

「つぼマガ」第92号をお読みいただき、ありがとうございました。

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