情報セキュリティ

営業秘密のツボ 2024年03月21日 第93号

公開日:2024年3月21日

営業秘密の管理や保護に関する様々な情報をお届けして参ります。

巻頭メッセージ

日本商工会議所・東京商工会議所
産業政策第一部長
加藤 正敏

商工会議所は、全国515か所に設置され、約125万の商工業者を会員に擁する地域総合経済団体です。「企業の発展」、「地域経済の振興」、「日本経済の成長」の3つをミッションに掲げ、中小企業に対し経営支援を行っております。

現在、わが国の中小企業は、原材料・エネルギー価格の継続的高騰により収益が圧迫される中、価格転嫁や深刻な人手不足、自己変革への投資・持続的な賃上げに向けた原資確保など、様々な課題に直面しています。ゆえに、多くの中小企業では資金繰りや販路開拓等、目下の経営課題を優先して取り組んでいるところですが、中小企業の持続的な成長には、付加価値拡大による売上・収益の向上が不可欠であり、この付加価値を生み出すイノベーションの源泉は知的財産をはじめとする無形資産の活用です。

そこで、商工会議所として、まずは知的財産に関する重要性の普及・啓発や、経営相談を受ける各地商工会議所の経営指導員の知識・指導力向上に努めています。
その手段の1つとして、弊所は2022年2月に、独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)とMOUを締結し、各地商工会議所の窓口にINPITと連携した「知財総合支援臨時窓口」の設置や、相談案件の授受など、各地商工会議所の支援体制強化を進めてきました。

そして2023年3月には、特許庁、INPIT、日本弁理士会と連携し「知財経営支援ネットワーク」の構築について共同宣言を行い、4者間でより緊密な連携が行える体制を構築しました。同宣言については、各地商工会議所が出席する様々な会議において説明を行い、経営指導員に向けて知財経営の重要性や支援方法等の普及・啓発を図ってまいりました。

また、弊所では、今年度からの新規事業として、知的財産活用事例集「知恵を『稼ぐ力』に~100社の舞台裏~」公表を開始しました。知財経営に積極的に取り組む全国各地の中小企業の好事例をヒントに、知財経営に取り組むきっかけとしていただきたいと考えております。2023年11月に10社の事例公表を行い、今月末にも加えて15社の事例公表を行う予定です。

商工会議所では、今後とも、会員企業をはじめとする中小企業が安心して積極的に知財経営に取り組めるよう、全国515の商工会議所のネットワークを最大限活用して、地域・中小企業の知財経営の推進に全力で取り組んでまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

目次

1.訴訟・判決コラム:弁護士知財ネット

弁護士知財ネットからの「訴訟・判決コラム」は、今回はお休みです。過去の掲載記事は、以下URLをご覧ください。

コラムの内容は、弁護士知財ネットのウェブサイトをご覧ください。

2.サイバーセキュリティ対策

1.内部不正の事例、手口、対策をまとめた研修用動画を公開:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

雇用・人材の流動化、国家間の競争激化が顕著となり、内部不正による情報の持出し事案がたびたび報道されています。内部不正対策は自社だけでなく関連会社、国内外の委託先など、包括的に行う必要があります。動画では、職員全員がそれぞれの立場で行うべき対策を解説しています。2015年に公開した内部不正動画と併せて視聴すると理解が深まります。
動画はYouTube の IPA Channel をご覧ください。

新作動画「今、そこにある脅威~内部不正による情報流出のリスク~」
2015年公開動画「情報を漏らしたのは誰だ?~内部不正と情報漏えい対策~」

2.Microsoft製品の脆弱性対策について(2024年3月):独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

3月13日(日本時間)にMicrosoft製品に関する脆弱性の修正プログラムが公表されました。これらの脆弱性が悪用されると攻撃者によるパソコンの制御など様々な被害が発生するおそれがあります。攻撃に遭うと影響が大きいため、早急にに修正プログラムの適用が求められます。

詳細はウェブページをご確認ください。

3.情報セキュリティ10大脅威2024 解説書を公開:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

去る1月に発表した「情報セキュリティ10大脅威2024」の解説書を3種公開しました。そのうちの1つに、脅威種別に関わらず共通して行うべき対策の基本をまとめた資料があり、基本的な情報セキュリティ対策の理解と実践に役立ちます。是非ご活用ください。

詳細はウェブページをご確認ください。

3.セミナー・イベント等のお知らせ

1.「はじめての「営業秘密管理」」研修動画:独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT:インピット)

独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT:インピット)では、大切な秘密情報を巡るよくあるトラブル事例や、営業秘密として管理する手法についてまとめた研修動画を、当館のeラーニングサイトIPePlatに公開しております。
営業秘密について学びたい、これから営業秘密管理に取り組もうという方向けの内容で、無料でご視聴頂けます。
動画は「はじめての営業秘密管理」よりご覧いただけます。

4.営業秘密関連情報のご紹介

1.「不正競争防止法等の一部を改正する法律」について:経済産業省 知的財産政策室

令和5年6月14日に法律第51号として公布された「不正競争防止法等の一部を改正する法律」では、以下のようなさらなる営業秘密・限定提供データの保護強化を実施しています。

  • ビッグデータを外部と共有するサービスでデータを秘密管理している場合も含め限定提供データとして保護し、侵害行為の差止め請求等を可能にすること
  • 損害賠償訴訟で生産能力を超える損害分も使用許諾料相当額として増額請求可能とすること
  • 国外において日本で事業を行う企業の営業秘密侵害が発生した場合にも、日本の裁判所に訴訟を提起でき、日本の不正競争防止法を適用可能とすること

なお、この改正法は、来る4月1日から施行されます。

 詳細は経済産業省のウェブページをご覧ください。

2.「技術情報管理 自己チェックリスト」のご紹介:経済産業省 安全保障貿易管理課

経済産業省は産業競争力強化法に基づく技術情報管理認証制度の基準をもとに、中小企業や専門知識がない方でも自社の情報セキュリティ対策の状況を確認し、必要な対策を把握できる「技術情報管理 自己チェックリスト」を公開しております。 情報セキュリティ対策をなにから始めればいいか分からずお悩みの方は、まずは自己チェックリストを経済産業省ウェブページからダウンロードして、自己診断してみましょう。

 技術情報管理自己チェックリストのダウンロードは、技術情報管理自己チェックリストのウェブページをご確認ください。

3.技術流出の防止に向けたウェブページ、動画、パンフレットのご紹介:警察庁 警備局外事情報部外事課 経済安全保障室

皆様の企業・研究機関にはどのような技術情報がありますか?
技術流出の防止には、「情勢」・「事例」・「対策」の理解が欠かせません。この度、警察庁公式サイトに特設ページ「技術流出の防止に向けて」を開設し、技術流出に関する情勢、リスクのある具体的事例「3つのS」 と題した企業や個人が取るべき対策などをわかりやすく説明しています。動画やパンフレットも掲載されていますので社内研修等に御活用ください。

「技術流出の防止に向けて」のウェブページから事例、動画、パンフレット等をご覧ください。

4.「知的財産推進計画2023」について:内閣府 知的財産戦略推進事務局

内閣府知的財産戦略本部において、政府における知財戦略や知財施策を取りまとめた「知的財産推進計画2023~多様なプレイヤーが世の中の知的財産の利用価値を最大限に引き出す社会に向けて~」を公表しています。 「知的財産推進計画2023」では、知財戦略の基本認識と重点10施策の中で、営業秘密やデータ利活用に関する施策についても掲載されています。

詳細は 知的財産推進計画2023のPDF版をご確認ください。

5.「秘密情報の保護ハンドブック」を改訂しました/ 「情報管理も企業力 秘密情報保護ハンドブックのてびき」を公表しています:経済産業省 知的財産政策室

不正競争防止法の講演等において、不正競争防止法の概要とともに紹介・説明させていただいておりました「秘密情報の保護ハンドブック」について、改訂版を公表いたしました(令和6年2月)。

令和5年の不正競争防止法改正など関連法制度・ガイドラインの見直しに伴う修正、営業秘密・労働環境をとりまく「環境の変化」に伴う修正、「生成AIの利活用の拡大」といった社会の動きを考慮した修正等が今回の改訂の中心です。

秘密情報の保護ハンドブックや同ハンドブックのてびきといった資料は、経済産業省ホームページからダウンロード可能です。次のリンク先をご確認いただき、社内研修等での活用をご検討いただけま
すと幸いです。また、ご希望の方には冊子をお届けすることも可能でございますが、現在改訂版の冊子を準備中のため、準備が整い次第、知財室ホームページからの請求受付を開始予定です。


詳細は「冊子の送付について」のウェブページをご確認ください。

6.限定提供データに関する指針」を改訂しました/ データ利活用に関する資料を公表しております:経済産業省 知的財産政策室

不正競争防止法では、限定提供データに関する規定を設けております。企業が保有・活用する「情報」を営業秘密と相互補完的に守る枠組みです。
経済産業省では、限定提供データの定義や不正競争に該当する要件等について、一つの考え方を示すものとして「限定提供データに関する指針」を公表しておりますが、この度、不正競争防止法の改正において限定提供データの保護範囲の見直しを行ったことを踏まえて、指針の改訂を行いました(令和6年2月)。

知財室では、データ利活用に関する資料をウェブサイトにて公表しておりますので、ご活用いただけますと幸いです。

データ利活用を始めたいが何から始めて良いかわからない、データ利活用においてどのような点に気をつければ良いか等の疑問をお持ちの方はぜひご覧ください。

7.全話最終回(!?)毎回倒産するショートドラマ「スタートアップは突然に」:独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT:インピット)

 スタートアップ必見!知的財産の重要性を呼びかける、全5話のWebショートドラマを公開中です!
『全話最終回… どうやっても毎回倒産してしまうナオトとその仲間たち』
大手企業の契約担当者の罠に落ち、信頼していた研究パートナーにはめられ、不慣れな異国の地でも知的財産トラブルに見舞われるなど、挑戦のたびに知的財産が原因で倒産してしまう3人組。知的財産の重要性を知らないと行き着く先は「THE END.」になってしまうという、学びのある物語です。

動画は特設サイト「スタートアップは突然に」をご覧ください。

8.「スタートアップ社長inサバンナ」!:独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT:インピット)

世界初!?
厳しいビジネスの世界をサバンナに例え、ネイチャードキュメンタリーさながらに、サバンナで生きるシャチョー(スタートアップ類)の大切なアイデアや技術を“捕食”されないよう、知的財産の重要性を啓発する動画になっています!!

YouTube動画はINPIT(インピット)Channel「スタートアップ社長 in サバンナ」(ナレーション:森田成一)からご覧ください。

9.営業秘密保護PR動画(ショートドラマ&解説動画)を公開中です:独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT:インピット)

トップセールスでうっかり・・・、取引先からの要請に答えたら・・・、展示会でアピールし過ぎて・・・、など営業秘密で陥りがちな失敗とケーススタディをYouTube動画で公開中です。 「わが社の営業秘密は大丈夫かな?」とちょっと思った方!必見です。 YouTubeで公開中の動画

第1弾【この話、自分には関係ない本当にそう】トップセールスでのうっかり
第2弾【取引先からの思いがけない提案】苦渋の判断が生んだ悲劇
第3弾【会社総出でアピールしたら】展示会の落とし穴

10.不正競争防止法テキストを2024年版に改訂しました:経済産業省 知的財産政策室

不正競争防止法のテキストを2024年版に改訂しました。昨年、5年ぶりに法改正がされ、本年4月1日から施行されます。改訂版では、その改正を取り込んだ最新の内容となっており、知財室ホームページにて公表しております。詳しくは以下のウェブページをご確認ください。

また、不正競争防止法や令和5年の法改正の内容について説明会をして欲しい、などのご要望がございましたら、知的財産政策室までご連絡をお願いします。知財室員がご説明に伺います。

11.営業秘密・秘密情報管理、知財戦略のFAQ:独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT:インピット)

独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT:インピット)が運営する「知財ポータル」にて、「取引先から我が社のノウハウの提供を求められている。どうしたらよい?」といった、営業秘密管理におけるよくある質問を一問一答形式のFAQとしてとりまとめています。

詳しくは営業秘密・知財戦略よりご覧ください。

12.「営業秘密・知財戦略相談窓口」をご活用ください:独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT:インピット)

 知的財産戦略アドバイザーが企業の実情に合わせた秘密情報の管理体制(例えば、書類・記録媒体の管理方法、電子データの管理等)の整備をご支援いたします。  
地方自治体や中小企業支援機関が主催するセミナー・講演会、中小企業における社内研修等への講師派遣も無料で実施しており、ご好評いただいております。是非ご活用ください。

お問い合わせは「営業秘密・知財戦略相談窓口」のサービス概要をご参照ください。

今月の知財室

今月の知財室

いつもつぼマガをご愛読いただきありがとうございます。経済産業省知的財産政策室でございます。

3月に入り桜は未だ咲いてはいないですが、街中では桜餅や桜柄のグッズが販売されており淡いピンク色に染まっているお店を見て、春が近づいてきたなと感じています。
「もうすぐ春~ですねぇ」とちょっと気取ってみたいところですが、急に暖かくなったり雪が降るほど寒かったりと気温の差が激しく服装に迷う「春一番」となりましたね。3月は新しい生活に向けて引っ越しや卒業シーズンの季節ですが、私は桜がいつ咲くのかなと待ち遠しいです。また、幸いなことに家族の中で唯一、花粉症にかかっていないのですが、近い将来、花粉症になるのではないかと思い、毎年ヒヤヒヤしながら春を迎えています。

さて、来月4月1日には、昨年改正された不正競争防止法がいよいよ施行されます!営業秘密についてだけでなく、外国公務員贈賄に対する罰則の強化・拡充や、形態模倣商品の提供等も改正されておりますので是非ご認識の程よろしくお願いします!

また、改正法の内容に対応する形で「不競法テキスト」や「秘密情報の保護ハンドブック」、「限定提供データに関する指針」、「外国公務員贈賄防止指針」につきましては、先月2月に改訂を行い、当室ウェブページに掲載されておりますので是非とも覗いてみてください。

「つぼマガ」第93号をお読みいただき、ありがとうございました。

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