情報セキュリティ

脆弱性対策情報データベースJVN iPediaの登録状況 [2024年第1四半期(1月〜3月)]

公開日:2024年4月17日

最終更新日:2024年4月17日

独立行政法人情報処理推進機構

1. 2024年第1四半期 脆弱性対策情報データベース JVN iPediaの登録状況

脆弱性対策情報データベース「JVN iPedia」は、ソフトウェア製品に関する脆弱性対策情報を2007年4月25日から日本語で公開しています。システム管理者が迅速に脆弱性対策を行えるよう、1)国内のソフトウェア開発者が公開した脆弱性対策情報、2)脆弱性対策情報ポータルサイトJVN(注釈1)で公表した脆弱性対策情報、3)米国国立標準技術研究所NIST(注釈2)の脆弱性データベース「NVD(注釈3)」が公開した脆弱性対策情報を集約、翻訳しています。

1-1. 脆弱性対策情報の登録状況

脆弱性対策情報の登録件数の累計は206,571件

2024年第1四半期(2024年1月1日から3月31日まで)にJVN iPedia日本語版へ登録した脆弱性対策情報は表1-1の通りとなり、2007年4月25日にJVN iPediaの公開を開始してから本四半期までの、脆弱性対策情報の登録件数の累計は206,571件になりました(表1-1、図1-1)。なお、2023年第3四半期以降にJVN iPediaの登録件数が増えている理由は、当該期間中に脆弱性が世の中に多く発見されたということを意味するものではなく、公開が遅れていた主に昨年の脆弱性がJVN iPediaの運用方法の変更に伴い多数公開されたためです。

また、JVN iPedia英語版へ登録した脆弱性対策情報は表1-2の通り、累計で2,787件になりました。

表1-1.2024年第1四半期の登録件数(日本語版)
情報の収集元
登録件数
累計件数
国内製品開発者
5件
280件
JVN
684件
15,239件
NVD
12,010件
191,052件
12,699 206,571

表1-2.2024年第1四半期の登録件数(英語版)
情報の収集元
登録件数
累計件数
国内製品開発者
5件
284件
JVN
58件
2,503件
63件
2,787件
  • 図1-1. JVN iPediaの登録件数の四半期別推移

2. JVN iPediaの登録データ分類

2-1. 脆弱性の種類別件数

図2-1は、2024年第1四半期(1月~3月)にJVN iPediaへ登録した脆弱性対策情報を、共通脆弱性タイプ一覧(CWE)によって分類し、件数を集計したものです。

集計結果は件数が多い順に、CWE-79(クロスサイトスクリプティング)が2,198件、CWE-787(境界外書き込み)が891件、CWE-89(SQLインジェクション)が876件、CWE-352(クロスサイト・リクエスト・フォージェリ)が611件、CWE-862(認証の欠如)が328件でした。最も件数の多かったCWE-79(クロスサイトスクリプティング)は、悪用されると偽のウェブページが表示されたり、情報が漏えいしたりするおそれがあります。

製品開発者は、ソフトウェアの企画・設計段階から、脆弱性の低減に努めることが求められます。IPAではそのための資料やツールとして、開発者が実施すべき脆弱性対処をまとめた資料「脆弱性対処に向けた製品開発者向けガイド(注釈4)」、開発者や運営者がセキュリティを考慮したウェブサイトを作成するための資料「安全なウェブサイトの作り方 (注釈5)」、脆弱性の仕組みを実習形式や演習機能で学ぶことができる脆弱性体験学習ツール「AppGoat(注釈6)」などを公開しています。

  • 図2-1.2024年第1四半期に登録された脆弱性の種類別件数

2-2. 脆弱性に関する深刻度別割合

図2-2はJVN iPediaに登録済みの脆弱性対策情報をCVSSv2の値に基づいて深刻度別に分類し、登録年別にその推移を示したものです。2024年にJVN iPediaに登録した脆弱性対策情報は深刻度別に、レベル3が全体の4.2%、レベル2が66.0%、レベル1が29.8%となっており、情報の漏えいや改ざんされるような危険度が高い脅威であるレベル2以上が70.2%を占めています。なお、2024年にJVN iPediaにおけるCVSSv2の登録件数が大幅に減少した理由は、JVN iPediaの情報収集元であるNVDにおいてCVSSv2の評価が積極的には行われていない(注釈7)ためです。

  • 図2-2.脆弱性の深刻度別件数(CVSSv2)

図2-3はJVN iPediaに登録済みの脆弱性対策情報をCVSSv3の値に基づいて深刻度別に分類し、登録年別にその推移を示したものです。2024年にJVN iPediaに登録した脆弱性対策情報は深刻度別に、「緊急」が全体の17.1%、「重要」が37.6%、「警告」が43.8%、「注意」が1.5%となっています。

  • 図2-3.脆弱性の深刻度別件数(CVSSv3)

既知の脆弱性による脅威を回避するため、製品開発者は常日頃から新たに報告される脆弱性対策情報に注意を払うと共に、脆弱性が解消されている製品へのバージョンアップやアップデートなどを速やかに行ってください。

なお、新たに登録したJVN iPediaの情報を、RSS形式やXML形式(注釈8) で公開しています。

2-3. 脆弱性対策情報を公開した製品の種類別件数

図2-4はJVN iPediaに登録済みの脆弱性対策情報をソフトウェア製品の種類別に件数を集計し、年次でその推移を示したものです。2024年で最も多い種別は「アプリケーション」に関する脆弱性対策情報で、2024年の件数全件の約74.7%(9,481件/全12,698件)を占めています。

  • 図2-4.脆弱性対策情報を硬化した製品の種類別件数の公開年別推移

図2-5は重要インフラなどで利用される、産業用制御システムに関する脆弱性対策情報の件数を集計し、年次でその推移を示したものです。これまでに累計で6,162件を登録しています。

  • 図2-5.JVN iPedia登録件数(産業用制御システムのみ抽出)

2-4. 脆弱性対策情報の製品別登録状況

表2-1は2024年第1四半期(1月~3月)にJVN iPediaへ登録された脆弱性対策情報の中で登録件数が多かった製品上位20件を示したものです。

本四半期においてはクアルコムが提供するQualcomm componentが1位となりました。2位以降はGoogle、アップル、マイクロソフトなど、幅広いベンダのOSがランクインをしました。

JVN iPediaは、表に記載されている製品以外にも幅広い脆弱性対策情報を登録公開しています。製品の利用者や開発者は、自組織などで使用しているソフトウェアの脆弱性対策情報を迅速に入手し、効率的な対策に役立ててください(注釈9)。

表2-1. 製品別JVN iPediaの脆弱性対策情報登録件数 上位20件 [2024年1月~2024年3月]
順位
カテゴリ
製品名(ベンダ名)
登録件数
1
ファームウェア
Qualcomm component (クアルコム)
2,889
2
OS
Android (Google)
521
3
OS
macOS (アップル)
292
4
OS
Fedora (Fedora Project)
236
5
OS
Linux Kernel (Linux)
203
6
CMS
Adobe Experience Manager (アドビ)
199
7
OS
Debian GNU/Linux (Debian)
194
8
OS
iPadOS (アップル)
183
8
OS
iOS (アップル)
183
10
ブラウザ
Google Chrome (Google)
157
11
ブラウザ
Mozilla Firefox (Mozilla Foundation)
148
12
OS
Red Hat Enterprise Linux (レッドハット)
126
13
CMS
Adobe Experience Manager Cloud Service (アドビ)
117
14
OS
HarmonyOS (Huawei)
116
15
OS
EMUI (Huawei)
110
16
OS
watchOS (アップル)
99
17
ブラウザ
Mozilla Firefox ESR (Mozilla Foundation)
87
18
その他
GTKWave (tonybybell)
82
19
OS
Microsoft Windows Server 2022 (マイクロソフト)
80
20
OS
tvOS (アップル)
79
 

3. 脆弱性対策情報の活用状況

表3-1は2024年第1四半期(1月~3月)にアクセスが多かったJVN iPediaの脆弱性対策情報の上位20件を示したものです。

本四半期は、上位20件中17件が脆弱性対策情報ポータルサイトJVN で公開された脆弱性対策情報でした。

表3-1. JVN iPediaの脆弱性対策情報へのアクセス 上位20件 [2024年1月~2024年3月]
順位
ID/タイトル
CVSSv2
基本値
CVSSv3
基本値
公開日
アクセス数
1
JVNDB-2024-000001
4.0
5.0
2024年
1月12日
6,915
2
JVNDB-2024-002050
-
9.8
2024年
2月7日
6,616
3
JVNDB-2023-012042
-
9.8
2023年
12月15日
6,513
4
JVNDB-2024-000028
4.3
7.8
2024年
3月7日
6,020
5
JVNDB-2022-012258
6.8
8.8
2023年
8月28日
6,011
6
JVNDB-2024-001002
-
7.5
2024年
1月10日
5,814
7
JVNDB-2024-000013
2.1
4.0
2024年
1月23日
5,610
8
JVNDB-2024-002837
-
7.8
2024年
2月22日
5,566
9
JVNDB-2024-000004
5.0
5.3
2024年
1月16日
5,490
10
JVNDB-2024-000020
3.5
4.8
2024年
2月20日
5,465
11
JVNDB-2023-000126
3.5
5.4
2023年
12月26日
5,374
12
JVNDB-2023-000084
3.5
5.4
2023年
8月21日
5,343
13
JVNDB-2024-000011
4.3
6.1
2024年
1月22日
5,335
14
JVNDB-2024-001062
5.2
6.8
2024年
1月24日
5,328
15
JVNDB-2024-000002
1.7
2.1
2024年
1月15日
5,301
16
JVNDB-2023-000125
5.2
6.8
2023年
12月26日
5,189
17
JVNDB-2024-000005
4.3
3.3
2024年
1月24日
5,152
18
JVNDB-2024-000027
2.6
6.5
2024年
3月6日
5,141
19
JVNDB-2024-002832
-
7.6
2024年
2月21日
5,122
20
JVNDB-2024-002942
-
7.2
2024年
3月8日
5,109
 


表3-2は国内の製品開発者から収集した脆弱性対策情報でアクセスの多かった上位5件を示しています。

表3-2. 国内の製品開発者から収集した脆弱性対策情報へのアクセス 上位5件 [2024年1月~2024年3月]
順位
ID/タイトル
CVSSv2
基本値
CVSSv3
基本値
公開日
アクセス数
1
JVNDB-2024-002832
-
7.6
2024年
2月21日
5,122
2
JVNDB-2024-001160
-
7.9
2024年
1月31日
4,711
3
JVNDB-2024-002961
-
5.6
2024年
3月13日
3,829
4
JVNDB-2023-003771
-
8.4
2023年
10月4日
3,100
5
JVNDB-2023-009619
-
-
2023年
12月6日
2,961
 

注釈

  1. 注釈1
  2. 注釈2
  3. 注釈3
  4. 注釈4
  5. 注釈5
  6. 注釈6
  7. 注釈7
  8. 注釈8
  9. 注釈9

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