デジタル人材の育成
石黒 浩(大阪大学大学院 基礎工学研究科 システム創成専攻 教授)
チーフクリエータ
白久 レイエス樹(東京大学大学院新領域創成科学研究科 海洋技術環境学専攻)
これまでアニメや映画等で身体動作の拡大を行うロボットが登場している。しかしながら、現実世界でそのようなロボットは具現化してはいない。本プロジェクトでは、四肢動作を拡大する装置を開発することで、通常の人体では表現できないダイナミックな腕や脚の動きを実現することができる、動作拡大型メカニカルスーツを実現する。本プロジェクトで採用する手法は、平行リンクを駆使した特殊な3次元の閉リンク構造を用いることで、人体とロボット間の同期を行う、機械式マスタスレーブである。
これまで多く開発されてきたロボットの外骨格との最大の違いは、無動力で動作拡大を行う点である。アクチュエータの搭載は外骨格が可能とするタスクの幅を広げるが、信頼性や運用性を低下させる要因となる。外部動力に頼らないメカニカルスーツの高い優位性はこれらの点にあり、派手なパフォーマンスが求められるイベント、展示会、パレード等での利用、または映像作品のためのアプリケーションとしての利用が期待できる。
アクチュエータの有無に係わらず、骨格構造の最適化は重要となる。本プロジェクトでは、本プロジェクト開始前までに開発してきた試作機をベースに、ITを駆使することで構造が最適化された実用機の開発を目指す。機体の設計に際しては、構造解析プログラムや人体寸法・形状データベースを利用することで、
の3点について、それぞれが実用可能な範囲内で適切にバランスを取れるようにする。機体製作後は、歩容解析、人体負荷の計測により評価を行い、必要であればアクチュエータを追加したモデルの開発も行う。
外骨格ロボットはすでに幾つもの研究機関で開発されており、その点においては、特段の独創性があるわけでは無いが、提案者はこれまでの活動の中で、人力パワードスーツという非常に独創性の高い技術を開発している。その技術を背景に本提案に取り組むことで、他に例を見ない独創的な開発が成し遂げられると期待できる。
応募者がこれまでに取り組んできた人力のパワードスーツの開発をさらに進め、人力でできることを可能な限り検討した後に、モータ等の力を補助するアクチュエータの利用を検討するという開発手順が適切である。