デジタル人材の育成

未踏事業ご紹介冊子:コンテンツピックアップ(3)

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未踏事業をご紹介する冊子「MITOU: Ingenious Creators - ITで切り拓く未来」から、「[特集2]拡がる未踏エコシステム」をピックアップしました。

さまざまな分野で活躍する修了生の姿を、インタビューと共に紹介します。

拡がる未踏エコシステム ー様々な分野をリードする未踏修了生ー(3)アカデミア

アカデミア

社会の発展を根底から支える大学等のアカデミア。未踏修了性は専門分野で技術を追及したり、大学で後進の育成などを行ったりする重要な役割を担っています。

東京大学教授の松尾豊氏(2004年度)は、日本ディープラーニング協会理事長や人工知能学会の各種委員を務めるなど、国内におけるディープラーニング普及の牽引役とも言える役割を担っています。

九州大学教授の荒川豊氏(2005年度)は、センシング技術とデータ処理技術、ネットワーク技術を組み合わせた人に寄り添うサイバーフィジカルシステム“ヒューマノフィリックシステムの研究”の第一人者として知られています。

コンピュータで折紙を設計する「計算折紙」の研究者である東京大学准教授の舘知宏氏(2006年度)は、自身で開発したFreeformOrigamiシステムを用いた折紙作家としても注目され、東京大学大学院特任准教授の中村裕美氏は、2010年度未踏に採択されてから現在に至るまで、主に電気味覚を専門とする研究を深めています。

ほかにもCG分野で光伝搬シミュレーションや高速レイトレーシングを研究するウォータールー⼤学准教授の蜂須賀恵也氏(2002年度)、大規模なコーパスを用いた意味解析や統計的自然言語処理を研究する東京都立大学准教授の小町守氏(2005年度)、CGやヒューマンインタラクションが専門で、子どもたち対象のワークショップなどアウトリーチ活動にも尽力し、未踏PMを務める明治⼤学准教授の五十嵐悠紀氏(2004年度2期、2005年度)など、数多くの未踏修了生がアカデミアで活躍しています。

Interview 中村 裕美氏

中村 裕美氏の写真

Hiromi Nakamura

中村 裕美氏

東京大学大学院 情報学環 学際情報学府
暦本研究室 特任准教授

1986年生まれ。電気刺激を舌に伝えることで味を制御する「電気味覚食器」のプロトタイプを開発し、年々改良を重ねている。2016年春には料理研究家・医師・広告代理店とコラボレーションし、無塩料理×電気味覚の食事イベントも開催。

電気刺激で味覚を変える 人間拡張テクノロジーを追求

電気刺激で味覚を変えるフォーク型デバイス

研究室全体では、人間と一体化して身体機能や感覚・知覚、認知などの能力を拡張させるHumanAugmentation、人間拡張と呼ばれるテクノロジーを研究テーマとしており、私個人としては未踏に採択された当時から「電気味覚」を主に専門としてきました。フォーク型のデバイスなどを使って口内に電気刺激を与えることで、人が感じる食べ物の味を強めたり、弱めたり、あるいは変えたりするものです。

アカデミアの立場からは学術的な観点から新しい知見を見出すことが主な使命ですが、知見を社会へ応用していくことも重要な使命と考えています。食は生活と切り離せないものですので、私は電気味覚を21世紀の調味料と位置づけています。

例えば、減塩を必要とする方の食事の塩味を塩を足さずに強めたり、文化やエンターテインメントにおける新たな食体験を提供したりするなど、電気味覚は多くの可能性を秘めています。私は電気味覚を人生をより豊かなものにするテクノロジーに発展させていきたいと考えています。

研究者には、様々なスキルが求められます。この研究分野の場合は大体デバイスも自作して実験を行い、論文を執筆します。成果を理解してもらうためにはデザインスキルやコミュニケーション能力も必要です。研究を続けていくには様々なスキルが求められてきます。まさに「総合格闘技」ですね。

そこには未踏期間中の経験も活きています。PMやOB・OGのアドバイスを糧に考察を深めて新たな知見を得、発表につなげることができました。私も研究室内の学生たちに対して、自分の力で先を切り開ける思考力や問題解決能力、そしてそれを形にしていく力を身に付けてもらうことを目指していきます。