デジタル人材の育成
首藤 一幸(東京工業大学 大学院情報理工学研究科 数理・計算科学専攻 准教授)
チーフクリエータ
片山 育美(多摩美術大学 美術学部 情報デザイン学科 情報デザインコース)
コクリエータ
大田 昌幸(早稲田大学大学院 基幹理工学研究科 情報理工学専攻)
コクリエータ
田中 和紀(工学院大学大学院 工学研究科 情報学専攻)
近年、インターネットの発達によって誰でも簡単に情報発信できる世の中になりました。blog、フォトアルバムなどで情報発信をする人々は、自分の発信した情報がだれかに"伝わる"楽しさや感動を知っています。
情報には、発信者の思いや感情が含まれています。発信者が届けたいのはビットの集まりではなく、思いそのものです。しかし、現状の情報発信ツールであるblogなどは、テンプレートにデータを流し込むという表層的なデザインにとどまっています。「なんとなくかっこいい」だけでは、発信者の本当に伝えたいことは表現できません。
情報を効率よく、分かりやすく伝えるためには、目を引くためだけの派手なデザインは必要ありません。情報を的確に伝えるためには、目には見えない情報構造(重要度、順序、関連性)にもとづいて情報を可視化することである"情報デザイン"を行う必要があります。
本提案では、情報デザインのプロセスを体系化し、ノウハウをプログラム化することによって、"専門的にデザインを学んでいない人でも情報デザインすることができるツール"を開発します。
具体的な開発としては、情報デザインの「情報整理」と「情報の視覚化」に基づいて、個人がFlashウェブマガジンを発行できるウェブサービス「ログマガ」を開発します。ログマガでは、個人が今までに発信したブログデータ、Twitter、写真(flicker)などを素材として集め、整理し、情報をウェブマガジン形式に視覚化します。
本システムの開発によって、だれもが自分の伝えたい思いを表現することが可能になります。個人の情報発信力、情報編集力の可能性が大きく広がることを期待します。
旅行などで撮影した写真、書いたブログエントリなどを元に、半自動的にウェブマガジンを作成・発行できる情報デザインツールを開発するという提案。
いまどき、そういった情報はウェブに載せることが一般的、というか普通になりつつあり、また、補助情報(お店、地域情報等)もウェブにある。デジタルカメラで撮った画像ファイルなどの生データは溢れている時代なので、それらに対して、提案ツールを使って構造を与えることで、デザインの専門家でなくとも紙面のデザインができる。
デザインの専門家が暗黙のうちに行っている情報デザイン(含むグラフィックデザイン)を補助してくれるツールの提案である。
単純に、どういうウェブマガジンができるものか、伝わる紙面ができるものか、見てみたい。大変楽しみである。
気になるのは、利用者がスケジュール等の補助情報をどのくらい入力しないといけないものか、および、デザイン結果が用意済みテンプレートに縛られやしないか、という点である。
作った、動いた、完成、という種類のツールではなく、プロトタイプを試してどんどん改変していくという進め方になるだろうから、最初に動かすところまではなるべく手間をかけずにさっくりと作ってしまって欲しい。
開発の過程では、デザイナが暗黙のうちに行っている作業を明にあぶり出すことになるので、情報デザイン過程そのものの分析、明示も行うことになる。その観点から得た知見も、何かの形で世に出して欲しい。