デジタル人材の育成
後藤 真孝(産業技術総合研究所 情報技術研究部門 メディアインタラクション研究グループ長)
チーフクリエータ
松永 昇悟(電気通信大学大学院 知能機械工学専攻)
コクリエータ
松山 隼輔(電気通信大学 知能機械工学科)
弾塑性変形シミュレーションライブラリを作成し、3Dモデルの変形操作を体験できるソフトウェアの開発を簡単に行えるようにします。
近年、アニメーションの作成や3Dゲームなどで3Dモデルの変形が行われています。しかし、実世界と同じように手で触って変形するシステムは今までありませんでした。
そこで、3D空間での変形作業を円滑に行うために、変形のシミュレーションと変形操作のインタフェースの2つを作成します。
1つ目の変形のシミュレーションは、変形による造形を可能にするために現実世界での針金の変形に着目しました。針金は少しの力では元の形状に戻り、大きい力を加えると塑性変形の効果により形状が維持される特性があり、この弾塑性変形特性を再現します。
2つ目の変形操作のインタフェースは3Dモデルで作成したバーチャルハンドを操作することで、いままでのマウスポインタとは異なった直観的な操作性を実現します。
これらの2つを物理シミュレーションライブラリの一部として開発し、3Dモデリングソフトに組み込むことで誰でも使用できるようにします。また、実際に提案ライブラリを使用したアプリケーションとしてモール遊びとキーフレームモーション作成ツールを作成しライブラリの有用性を実証します。最後に、3Dモデルの操作と相性の良い3次元デバイスと組み合わせることで、3Dモデルの変形をバーチャル体験できるようにします。
本提案で特徴的な点は、インタラクティブな操作性を実現するために、変形のリアルタイムシミュレーションライブラリを開発した点にあります。このライブラリを軸として、ゲームの制作、バーチャル体験システムの構築、キャラクターのアニメーション制作などの分野への応用を考え、簡単にライブラリを使用できる環境を構築します。
3Dモデルの変形操作を現実世界の変形物のようにインタラクティブに行うことを可能にするシステムの提案である。
現実世界の変形物の多くは、弾性変形と塑性変形の両者の特徴を兼ね備えた弾塑性変形の特徴を持つため、その3Dモデルに対するリアルタイムシミュレーションにより、一定以下の力では元の形状に戻るが、それを越えると元の形状に少ししか戻らなくなる直感的な造形がインタラクティブに可能になる点が優れている。しかもBlenderへ組み込むことで、多くの人が容易に使えるようになる点が素晴らしい。
松永君、松山君は、これまでの実績に基づいて、松永君は主に弾塑性変形シミュレーションを、松山君はBlenderとの統合やGUI作成を担当する計画を立てており、着実に成果が出していける強力なペアといえる。
当初想定していないどういう課題が生じて解決していくのか、多くのユーザを呼び込むためにどういうキラーコンテンツを用意していくのか等、二人の腕前が試されるところであり、これからの活躍が楽しみである。