デジタル人材の育成
後藤 真孝(産業技術総合研究所 情報技術研究部門 メディアインタラクション研究グループ長)
チーフクリエータ
旭 直人(京都大学大学院 情報学研究科 社会情報学専攻)
コクリエータ
なし
人は、2つのもので挟んで何かを得ようとする時がある。例えば、「カレーを作る時、野菜を切ることと煮込むことは知っているけど、その間に何をするのだろう?」「就職活動でエントリーした後に、面接を受けるまでに何をすればいいのか」「織田信長に関することと言えば、桶狭間の戦いがあって、最後には本能寺で死んだことは知っているがその間には何があったのだろう?」「この本は簡単すぎるし、あの本は難しすぎる、2つの本の間くらいのものはないのか?」といったような具合である。
つまり、2つの知っていることを使って間にあてはまるものを探すということである。
また、2つの事柄の間が欠けていてそれを埋めたい、と思う場合もある。例えば、「東京へ旅行に行きました。いろいろなところを巡って楽しかったです。…」「~のところについて、~は簡単なのでここでは省略する。」といったような文章は、web上ではよく見かけるが、肝心な部分が「いろいろ」といった言葉で省略されてしまっていることがある。
ユーザは、「東京へ行った」ことと「楽しくなった」ことの間に何があったのかを埋めてほしい!、省略された部分こそ気になる!という欲求が生まれる。
そこで本提案では、ある2つの入力を与えると、その2つに挟まれたものを出力する、といったようなシステムを提案する。
入力はイベントやオブジェクト、そしてその2つのイベント、オブジェクトの間に存在する行動、オブジェクトを2つの入力間に存在する軸(入力によって変化する)で評価して出力するようなシステムの実装を行う。
このシステムでは、ユーザのわかっている状況やものを入力とすることにより、検索キーワードの洗練やウェブページの閲覧、横断的検索を行わずに与えられた2つのイベント、オブジェクトの間にあるものをあらゆる軸の観点からユーザは得ることができる。
「隙間を埋める」というコンセプトのもとに、二つのキーワード(出来事や状況でもよい)を入力すると、その間にあるものをWeb情報源から自動的に見つけ出す検索システムの提案である。
しかも再帰的に、「あるもの」と「あるもの」の間のものを見つける、という作業を繰り返すと、隙間が埋まっていくことも検討しており、大変興味深い。どういう観点で隙間を埋めるかという評価軸の扱いが鍵になり、どこまで自動で的確な軸を求められるかが大きな挑戦と言える。
旭君は、提案書と面接の両方で、わかりやすく伝えようという姿勢が強くて好感が持て、特に面接では「はさんでポンッ」というキャッチフレーズまで考えてきた。
期間内に迅速にWebサービスを構築して公開し、ユーザの人達にどういう風にすれば広く使ってもらえるかを探求していくことが大切となる。そういう意味では、作って終わりというよりは、その後の根気強い改善や機能追加が大切になる提案であり、旭君の頑張りに大いに期待したい。