デジタル人材の育成

未踏IT人材発掘・育成事業(本体):2008年度上期採択プロジェクト概要(宮原PJ)

1.担当プロジェクトマネージャー

竹田 正幸(九州大学大学院 システム情報科学研究院 教授)

2.採択者氏名

  • チーフクリエータ
    宮原 克典(九州大学 大学院システム情報科学府情報理学専攻博士後期課程2年)

  • コクリエータ
    なし

3.未踏プロジェクト管理組織

  • 株式会社ゼータ

4.採択金額

  • 6,300,000円

5.テーマ名

  • 分散共有空間を実現する3Dメッセンジャの開発

6.関連Webサイト

  • なし

7.申請テーマ概要

本申請プロジェクトでは,分散共有空間を実現するコミュニティツールである3Dメッセンジャの開発を行う。ここで分散共有空間とは,空間を構成する区画を,分散したそれぞれの端末で管理・処理を行いながらも,ユーザからはあたかもひとつながりの空間であるように感じられる連結された仮想空間である。本申請プロジェクトでは,ユーザの使用するPCがそれぞれ固有の仮想空間を持つため,この仮想空間での処理はそのPCが行う。そして,個々のユーザのPCをPeer-to-peerネットワーク通信によって情報をやりとりすることで,それらのPCがそれぞれ管理する仮想空間同士を結合する。このように複数の仮想空間を共有し,その空間をコミュニケーションの場として活用する。
本申請プロジェクトでは,「アバタ」,「ルーム」という2つの概念を定義する。「アバタ」とは,ユーザが操作し,コミュニケーションの媒体となる仮想人形である。「ルーム」とは,それぞれの端末が管理・処理を行う仮想空間であり,これが複数つながることで分散共有空間を実現する。ユーザは他のユーザとルームを結合して,アバタを操作して別のルームへ移動し,アバタ同士でチャットするなどしてコミュニケーションを楽しむことができる。本申請プロジェクトでは,ルーム同士の情報交換をPeer-to-peer通信で行うため,従来のサーバ・クライアントモデルが持つ管理コストなどの問題を解消することができる。
ルームは各個人が持つ固有の空間なので,自由にレイアウトして公開することで,Webサイトの様な役割を持たせることができる。よって,このルームやアバタを編集するためのツールも開発する。そのため,本申請プロジェクトでは“3Dメッセンジャ”と“ログインサーバプログラム”,そして“編集ツール”の開発を行う。

8.採択理由

「セカンドライフ」に代表されるように、オンライン仮想3次元空間(メタバース)を利用した様々なコミュニティツールが開発され、注目を集めている。しかし、多くのメタバースでは、サーバ・クライアント通信を採用し、大規模な仮想3次元空間をサーバ内に構築しているため、サーバの運用コストが非常に高価になるという問題がある。これらのツールでは、1人のユーザがすべてのユーザとコミュニケーションを図ることが可能である。しかし、実際には、仮想空間内でコミュニケーションをとる相手は、数人程度であることがほとんどであり、そのような大規模なコミュニティの構築は必ずしも必要ではない。そこで、本提案では、小規模なコミュニティの場を安価に提供するために、peer-to-peer通信により分散共有空間を実現する新しいコミュニティツール「3Dメッセンジャ」の開発を行うことを目的とする。これによって、一般ユーザでも簡単に仮想3次元空間を構築できるようになることが期待できる。さらに、各ユーザが作成した仮想3次元空間を「ドアメタファ」でシームレスに連結させることにより、無限に広がる分散共有空間を実現することも可能となる。このような環境は独自のものであり、他に類をみない。以上のことから、未踏性の高い提案であると判断し、採択とした。