デジタル人材の育成
古川 享(慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科 教授)
チーフクリエータ
角田 哲也(東京大学大学院学際情報学府 博士課程3年)
コクリエータ
大石 岳史(東京大学大学院情報学環 特任講師)
コクリエータ
工藤 雷太(東京大学大学院学際情報学府 修士課程1年)
Google Earth(グーグル社)、Virtual Earth(マイクロソフト社)の3次元都市モデルを拡張現実感(AR:Augmented Reality)技術を用いて、現実の都市環境に合成表示する。仮想地球儀ソフトで描画されたウィンドウ上から3次元モデルを抽出し、カメラで撮影した現実世界の画像との合成を行う。GPS、磁気センサ等を用いて両者の3次元空間における位置・方向を合わせるとともに、緯度経度時刻情報から3次元モデルの陰影付けを正確に行う。
アプリケーションとして、遺跡の復元、過去の町並みの再現、建築、都市開発のシミュレーション、広告、販売促進、キャラクターの表示等を想定している。企業、自治体を対象としたBtoBのARコンテンツ制作サービス、一般ユーザを対象としたBtoCのプラグイン開発によって収益を上げる。競合する既存のARサービスに対して本提案は、インターネット上の3次元インフラ、3次元のCGM(ConsumerGenerated Media)コンテンツを利用することにより、製作コスト、開発スピード、ターゲットユーザ数の面において差別化を図る。
また本提案は、インターネット上の仮想空間サービスと協調的に発展していくことが可能である。従来はブラウザ上で3次元都市を鑑賞したり、他ユーザとのチャットや交流を楽しむという趣味的利用に留まっていた仮想空間サービスに対して、AR技術を用いて現実の都市に展開することにより新しい利用法と市場を開拓する。一般ユーザが自由にモデルを制作、追加する枠組みを提供することで、仮想空間、AR技術のシナジー効果を実現し、相互の発展を促すことが期待できる。
本提案は、今後の都市計画と建築設計や過去の遺跡を視覚的にとらえることに留まらず、医療情報システムにおける人体内部の可視化や災害時の災害発生、災害対策シュミレーション、エンターテインメントの世界、ユニバーサルデザインを意識した高齢者や身体障害者向けのビューワーなどへの応用が可能と思われる。実装できそうなハードウェアの選択肢も増えている昨今の中で、多くのデバイスへの展開をも望みたい拡張性、将来性のある提案と判断し採択した。