デジタル人材の育成
筧 捷彦PM(早稲田大学 理工学術院基幹理工学部 情報理工学科 教授)
チーフクリエータ
百武 暁人(電気通信大学大学院 情報システム学研究科 情報メディアシステム学専攻)
コクリエータ
なし
街中にある情報ディスプレイは広告媒体などに広く利用されています。これは、情報の提供者側が提供したい情報を常に表示し続け、情報へのアクセスに特に操作を必要としません。そのため、ディスプレイの近くを通りかかるだけで、情報を目にすることができ、不特定多数の人間に対して商品などの情報を広めることに適しています。しかし、常に特定の情報を一方的に提示し続けるため、通行人が表示された情報に興味を持った場合、更なる情報へアクセスすることができず、ニーズに対応したインタラクティブな情報の提供ができていません。
本システムは、カメラをポインタとして使用することによる、ディスプレイ映像への操作を実現します。これは、ディスプレイに透明偏光マーカを、カメラに円偏光フィルタを取り付けることにより可能となります。ディスプレイに取り付けるマーカシートは透明であるため、表示される情報を視覚的に損なうことなく、ユーザの持つカメラ付き小型デバイスの3次元位置および、その姿勢を取得することが可能となります。また、シンプルなシステムであるため、デバイス依存性が低く、汎用性が高いといえます。応用としては、液晶ディスプレイへの近距離でのインタラクションが可能である点を生かして、公共の場にあるディスプレイに対して、直接触れることなく、デバイスで写真を撮るような動作で操作を行うことや、ディスプレイに表示された商品の情報を操作している小型デバイスへと転送するなどが考えられます。
本システムの特徴は以下が挙げられます。
動画へのインタラクションが可能
大型ディスプレイへのインタラクションが可能
まず、QRコードのように静止したマーカに対するインタラクションと異なり、動画像内のオブジェクトに直接カメラを向けることでインタラクションが可能です。さらに、カメラの視界にマーカシートの一部のみしか映らない場合でもカメラ位置を推定可能であるため、マーカシート全体が認識できないような大型ディスプレイに対するインタラクションが可能です。
実用的な利用法として、広告媒体とのインタラクションを目標としています。通行人がCMに興味を持った場合、商品のオブジェクトにカメラを向けることでオブジェクトを操作することや、情報を小型デバイスに受信することを可能とします。
提案は、偏光を利用して、ARマーカーやバーコードを透明化して、離れたところから大画面をインタラクティブに操作可能にしたシステムを開発する、というもの。未踏期間中には、大画面広告ディスプレイとのインタラクションを実現したいと意欲を燃やしている。
偏向フィルターを活用することで、本来の画像の上にARマーカーやバーコードを裸眼では見えないように重畳する、という着想はすばらしいのだが、キャムコーダや携帯電話のカメラを使って重畳されたコードを取り出すために偏向フィルタをかけると、コードだけしか見えなくなってしまうという難点を抱えている。専用の装置を製作すれば解決できるものの、未踏ユースの開発期間の中でそこまで実施するのは難しいかもしれない。どのようにしてこの難点を解決し、目的とする機能を実用化して見せるかが、クリエータの腕の見せ所である。クリエータのがんばりに期待する。