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未踏/セキュリティ・キャンプ

2009年度上期 採択案件概要

1.担当PM

 筧 捷彦PM(早稲田大学 理工学術院基幹理工学部 情報理工学科 教授)

2.採択者氏名

 チーフクリエータ:伊藤 裕一(東京大学大学院 学際情報学府総合分析コース)

 コクリエータ:なし

3.未踏プロジェクト管理組織

 株式会社オープンテクノロジーズ

4.採択金額

 3,000,000円

5.テーマ名

 複数のネットワークの共有による高速な仮想ネットワークの構築

6.関連Webサイト

 なし

7.申請テーマ概要

 様々な無線技術による通信が一般的なものとなり、現在発売されているノートPCのほぼ全てには無線Lanが搭載され、広域無線Wanを使用している人も増えつつある。しかし、これらの無線通信はイーサネットに代表される有線通信に比べて通信速度が遅いという問題を抱えている。 

 提案するソフトウェアはこの問題を解決するために、「マシンの余剰通信帯域をお互いに利用し合う」という手法で、各マシンが持つ通信帯域を拡張し、より広い帯域を利用するためのものである。

 例えば、マシンA、Bがそれぞれ無線Wan(3Mbps)を持っていて、お互いに無線Lanの通信範囲にいるとする。このときマシンAは自分の無線Wanだけを利用するのであれば3Mbpsの帯域しか利用できないが、マシンBの帯域も利用することが出来れば合計で6Mbpsの帯域を使える。これを行うためには、マシンA、Bがそれぞれ無線Wanでデータをダウンロードしつつ、マシンBがダウンロードしたデータを無線Lanを通じてマシンAに転送するなどといった手法が考えられる。しかし、実際には一つの連続したシーケンスとしてのファイルを2つの経路でダウンロードする場合、どのようにして元のデータを分離し、その分離したものをどう組み立て直すかなどといった問題などが付随する。

 提案するソフトウェアはこの問題を克服するために、各マシンがそれぞれプログラマブルなソフトウェアルータを持ち、そのルータ内で実際にパケットデータ(例えばIPヘッダやポート番号など)を加工するという手法を用いる。

 この手法は従来のオーバーレイネットワークによるネットワークの制御とは異なり、レイヤ7より下の階層でパケットの加工を行う。そのため、オーバーレイより低レイヤでネットワークの動作を定義しているといえ、このような研究開発は現在議論が活発な次世代ネットワークのあり方の一つの例を提案するという意味でも有意義なものだと考えられる。

 私が開発するソフトウェアはこのソフトウェアルータを利用状況に合わせて適切に設定するためのミドルウェアと、ミドルウェアにより操作されるソフトウェアルータ本体である。このミドルウェアを使うことにより、柔軟に高速かつ効率的な通信を実現することが出来るようにすることがこの開発の目標となる。

8.採択理由

  ネットワークの貸し借りでなく、共有できる(他の帯域を借りられる)仮想ネットワークを実現する。マルチパスネットワークの一種である。

 現時点では、emobileを二つ使って実装している。WANの実質的な高速化を図るために、クライアントPCが属する無線LANの中にシステムサーバを設ける。システムサーバは、クライアントPCがアクセスしたい先のサイトに高速にアクセスでき、そのアクセス結果をクライアントPCへその無線LANの他のPC経由のパスも使って配送する。このアイディアでの高速化が生きるためには、技術面だけでなく、システムサーバの適切配置という社会面での問題も解決する必要がある。

 今回のプロジェクトのアイディアは、その一部を指導の先生から得たというものの、この形での高速化を実現したいという目的意識を明確にもっている上、なかなかの元気者であるので、未踏ユース期間中に成果を上げてくれると期待しての採択である。

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