プレスリリース
公開日:2022年8月17日
独立行政法人情報処理推進機構
IPA(独立行政法人情報処理推進機構、理事長:富田達夫)は本日、日本企業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の現状や実態の把握を目的として作成した「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート(2021年版)」を公開しました。全社戦略に基づいて部門横断的にDXを推進できるレベルにある「先行企業」の割合は486社中17.7%と昨年から倍増し、DXの進展が見られます。
IPAは日本企業におけるDXの現状や実態を把握することを目的として、各企業がDX推進指標に基づき提出した自己診断結果を分析し、2019年度からレポートを公開しています。DX推進指標は、経済産業省が作成したDX推進状況の自己診断ツールです。DX推進のための経営の仕組みや、DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築について、35項目の定性指標を設けて成熟度を0から5の6段階で評価しています。分析対象となった自己診断結果は2021年1月から12月までに提出された486件で、2019年の248件、2020年の307件から、年々増加しています。
本日公開したレポートでは、提出企業全体の傾向をはじめ、企業規模別、先行企業、DX認定制度による認定企業、複数年連続で提出している企業の特徴などについて分析を行いました。本レポートで2019年からの経年変化を見ると、日本企業のDXへの取組みはこの1年で加速したと考えられます。主なポイントは以下のとおりです。
全企業における成熟度の平均値は1.95で、2020年の1.60から0.35ポイント向上しました。成熟度は、最終的なゴールであるレベル5を「デジタル企業として、グローバル競争を勝ち抜くことのできるレベル」、レベル3を「全社戦略に基づいて部門横断的にDXを推進できるレベル」、レベル0を「DX未着手」としています。成熟度の平均値が3以上の「先行企業」は486社中86社で、17.7%でした。この割合は、昨年の8.5%から2倍、2019年の4.4%から4倍となっています。一方で、レベル3未満の企業は400社あり、全社戦略に基づいて部門横断的にDXを推進できるレベルに達していない企業が8割以上存在しています。
35項目の指標ごとに全企業の平均値を比較すると、上位5指標、下位5指標は以下のとおりでした。全体的にIT視点の指標が経営視点の指標よりも成熟度が高く、1位の「9-5 プライバシー、データセキュリティ」は、その重要性が社会的に浸透しているためか、他の項目よりも優先的に取り組まれていることが分かりました。下位5つのうち3つが「6 人材育成・確保」「6-1 事業部門における人材」「6-2技術を支える人材」であり、人材育成に関しては他の取組に比べるとまだ戦略を立てられていない企業が比較的多いと考えられます。一方でIT視点指標における「9-2人材確保」は上位にあることから、IT部門は設置されているものの、その人材のプロファイルや数値目標の整備が追い付いていない、もしくはそれらを定義することが難しいことが示唆されます。
各指標の平均値を経年で比較すると、全35の指標で成熟度レベルは毎年上昇しています。2019年と2020年の間には一部の指標のみで有意差がみられた一方で、2020年と2021年の間にはすべての指標で有意差がみられました。このことから、2020年から2021年にかけてDXの成熟度は平均的に見ると加速してきていると言えます。
IPAは、多くの日本企業が自社のDX取組状況を毎年自己診断し、アクションの達成度合いを継続的に評価することにより、日本企業のDXがいっそう加速することを期待しています。今後もDX推進指標による自己診断をさらに普及させつつ、継続的な観測と分析を行うことで、適切なDX推進政策の構築につなげていきます。また、DX推進指標の分析の高度化や指標自体の改善などを行うことで、より効果的に日本企業のDX推進に貢献していく予定です。
IPA 社会基盤センター DX推進部 千葉/佐々木