
「未踏会議」は未踏事業の魅力を広く伝える、年に1度のフラッグシップイベントです。例年「3月10日(みとうのひ)」に開催していましたが、誰にでも楽しんでいただけるイベントを目指し、今年は1日前倒して日曜日の3月9日に開催しました。

会場は東京ミッドタウン・ホール。入り口周辺を埋め尽くした未踏会議のカラフルなビジュアルが、お祭り気分を盛り上げます。YouTube Liveとニコニコ生放送でも、約7時間にわたりイベントの様子を生配信でお届けしました。

受付を済ますと未踏統括プロジェクトマネージャーがお出迎え。
イチゴ栽培、筋トレ、ロボット、量子コンピューティングまで! 展示ブースで未踏的プロダクトに出会う
ホールAでは未踏修了生たちが自ら出展し、いま現在取り組んでいるプロダクトやサービスを披露しました。 展示されたプロダクトは、ジャンルも技術も多種多様。しかし共通しているのはそのすべてが「未踏的」ということです。これまでにないアイデアや新技術が集結し、さらにその背景にある技術的な裏付けや開発の苦労話なども開発者から直接聞ける貴重な機会とあって、各ブースとも終日にわたり賑わいを見せていました。

あらゆる分野が揃う展示のごく一部をご紹介
HarvestX(2019年度未踏IT人材発掘・育成事業修了生 市川友貴さん)
イチゴの受粉を自動で行うロボットを世界で初めて開発し、果物工場を実現しました。ブースでは自社工場で栽培したイチゴの試食も実施。ロボットが受粉したイチゴは形も美しく、ケーキのデコレーション用としても高い評価を得ているそうです。

Closer(2022年度未踏アドバンスト事業修了生 樋口翔太さん)
学習コストが高く大企業でないと難しかった産業ロボットの導入を、安価かつ簡単に行えるシステムを開発しているCloser。ブースには箱積みロボットシステムが展示されていました。画面上で箱のサイズや積み込むパレットを指定するだけで、あとは自動でロボットがいい感じに箱積みを行ってくれます。

瞬景(2023年度未踏アドバンスト事業修了生 水野史暁さん、山本恒輔さん、海老原祐介さん)
机上のモニターの映像を見ながらラジコンカーを遠隔操作できる体験型デモを実施。映像のタイムラグがほとんどないため、実際に運転席に座っているような感覚で操作できます。工事現場での重機操作などにも応用が可能です。

BONSAIENCE(2024年度未踏アドバンスト事業修了生 内海忍さんほか6名)
盆栽に魅せられた若者たちが取り組む、樹形の3D化プロジェクト。アーカイブとしての意義以外にも、枝と枝の間に分け入るなど現実世界では不可能な視点からの鑑賞も可能になり、盆栽の新たな楽しみ方も生み出しました。開発した技術で埼玉県大宮の盆栽美術館とコラボし、Web上で銘木のデジタル美術館を公開しています。

黒瀧悠太さん、濱田玲奈さん(2024年度未踏ターゲット事業修了生)
リザバーコンピューティングは、低電力・低コストなAIを実現する手段として注目されている技術です。黒瀧さんと濱田さんは、リザバーコンピューティング技術を使ったパーソナル筋トレシステムを開発しました。センサーを仕込んだダンベルを使って、正しい動きを何回か行うだけで学習が終了し、トレーニングの良し悪しを判別できるようになります。

反保紀昭さん(2024年度未踏アドバンスト事業修了生)
多軸3Dプリンタは、従来の3Dプリンタでは作れなかった形を作ることができますが、非常に高価なため一般には普及していません。反保さんは多軸3Dプリンタのハードウェアを低価格で製作し、ソフトウェアを開発してオープンソース化することで、一般ユーザーへの普及を目指しています。

QARouter(2024年度未踏ターゲット事業修了生 加藤駿典さん、永山虹空さん、遠山航汰さん)
電子基板の設計に、組み合わせ最適化に優れた量子アニーリング技術を活用する取り組み。効率的な配線を行うことができるソフトウェアを開発し、デモを実施しました。量子コンピューティング技術を身近に感じることができる応用事例です。

出展者の感想は……?
未踏修了生の皆さん、出展してみていかがでしたか?

古田花恋さん(2024年度未踏IT人材発掘・育成事業修了生)
「自分自身と気を交わすためのMRによる剣道稽古システム」で出展。
「剣道をやっていた人に来ていただいたり、いろいろな人と知り合いになったりすることができ、コミュニティの形成に役立ちました」

比留間大地さん(2024年度未踏アドバンスト事業修了生)
「世界初! 生成AIとの共創を前提とした次世代型ペイントツール「Mazin Studio」」で出展。
「いろいろな方と話せてむちゃくちゃ楽しかったし、新しい協業先も見つけられそうで非常に有意義でした」

VANQC(2024年度未踏ターゲット事業修了生) 武田直幸さん、金子和哉さん、吾郷太一さん)
「量子機械学習をもっと身近に「LeanQML」」で出展。
「量子は全然知らないという方が興味を持ってくれたり、量子は知らないけど機械学習は詳しいという方と話がもりあがったり、一日本当に楽しかったです」

岡田拓真さん(2023年度未踏IT人材発掘・育成事業修了生)
「コーヒーの香りの違いを認識するAI 「Connoisseur(カノサー)」」で出展。
「未踏期間中は味をコントロールできるエスプレッソマシンの開発を行い、現在は香りの分析にも取り組んでいます。今回の展示でコーヒーからいろいろなフレーバーが出るということを初めて知ったという方も多く、裏側の技術にも興味を持っていただけました。楽しい場となりました」
最先端の世界をわかりやすく。ゲストを交えたトークセッション
ホールBでは未踏修了生やプロジェクトマネージャーにゲストを交えた3つのトークセッションが繰り広げられました。
ITで世の中を楽しくする! 未踏から生まれた数々のエンタメ
堅苦しく取られがちな未踏事業ですが、実はエンタメ分野でもたくさんの修了生が活躍しています。1つ目のトークセッション「この人、未踏だったんだ!」には、人を楽しませるプロダクトと生みの親の未踏修了生たちが次々登壇。ファシリテーターで出演したお笑い芸人の野田クリスタルさんとともにその魅力を紹介しました。

髙橋征資さん(バイバイワールド株式会社 代表取締役/2009年度下期未踏ユース修了生)と拍手ロボット「ビッグクラッピー」。歌や声掛けも自由自在な盛り上げロボット。

青木俊介さん(ユカイ工学株式会社 代表/2008年度上期未踏本体修了生)とユカイ工学製癒し系ロボットの数々。手にしているのは最新作の「猫舌フーフー」。熱いものをふーふーして冷ましてくれる小型ロボです。

中城哲也さん(株式会社Live2D 代表取締役社長/2006年度下期未踏本体修了生)は2Dアバターライブ配信界を席巻するソフト「Live2D」の開発者。野田クリスタルさんのアバターも登場、本人の動きと同期して動く様子がスクリーンに映し出されました。

「おしりかじり虫」や「ウゴウゴルーガ」の作者、「うるまでるび」のうるまさん(2005年度上期未踏本体修了生)も登場(一番右)。全員揃ったところで今の活躍につながる未踏での経験談や採択のメリットなどが語られました。
AIが急激に普及する今、小説家は何を考えているのか
予想を超えたスピードで生成AIの活用が広まっています。AIがあることがあたりまえの世界がついに到来してしまった今、小説家たちはどのようにAIと向き合い、物語を描いていくのでしょうか。2つ目のセッションでは「AIについて小説家は何を語る? 人を幸せにするAI」と題して、AIエンジニアかつSF小説家でもある未踏修了生の安野貴博さんと、お笑い芸人・作家の又吉直樹さん、執筆にAIを使ったことを明言して話題になった作家の九段理江さんが、AIとの関わりや、今後の期待や不安まで、今現在の思いを率直に語りあいました。

画面左から、ファシリテーターを務めた九龍ジョーさん、又吉直樹さん、九段理江さん、安野貴博さん。
田村淳が迫る!「量子コンピューター活用最前線」
トークセッション3つ目のタイトルは「量子コンピューター活用最前線に田村淳が迫る!」。期待の技術として注目されているものの、難解なイメージが付きまとう「量子コンピューター」。タレントの田村淳さんの追求を受けて立つのは未踏ターゲット事業のプロジェクトマネージャーを務める量子コンピューティング界第一人者の田中宗さん・藤井啓祐さんです。基礎知識から活用例の紹介、量子ゲートの演算の決まりを組み込んだゲームの対戦まで、量子コンピューターを楽しく身近に感じられた45分でした。

画面左から、田村淳さん、田中宗さん、藤井啓祐さん。
当日は約800名の皆様にご来場いただき、MITOU WONDER=驚きに満ちた未踏の世界を体感していただくことができました。未踏事業を初めて知ったという方にも、いつも未踏を応援してくださっている方にも楽しんでいただけたのではないでしょうか。
年に1度の未踏の日、次回もぜひ注目してください。
出展ブース一覧とステージプログラムの概要は、Webサイトからご覧いただけます。
未踏会議2025 MEET DAY 特設サイト
当日配信したステージプログラムと展示会場レポートのアーカイブをYouTubeで公開しています。ぜひご覧ください
未踏会議2025 MEET DAY