ホーム > トピックス >

「KIDOU Global Conference」&「SxPARK Fes」登壇・出展レポート

2025年9月16日から19日にかけ、大阪梅田地区では「UMEDA INNOVATION WEEK」と題したスタートアップイベントに関する様々なイベントが集中的に開催されました。その一環として開催された「KIDOU Global Conference」「SxPARK Fes」に未踏人材が登壇、出展しました。

「KIDOU Global Conference」で発信! 技術で国境を超える未踏人材たち

9月18日には、大阪発の起業支援プログラム「起動」が開催するグローバルカンファレンス「KIDOU Global Conference」が行われました。グローバルな舞台へ飛び出す次世代のテック起業家と、世界中の投資家・企業・支援機関をつなぐスタートアップイベントです。
大阪梅田にあるコングレスクエア グラングリーン大阪を会場に、トークセッションやスタートアップ企業の展示が行われ、国内外問わず多くの来場者で賑わいました。

グローバルをテーマにしたトークセッション

グローバルをテーマに2つのトークセッションが行われました。
1つ目は「日本をアップデートせよ U30テックリーダーたちの挑戦」。デジタル化が遅れる産業に切り込んで起業し、グローバルに活躍する3名の未踏修了生が登壇しました。
市川 智貴さんはイチゴの受粉を自動で行う世界初のロボットを、野城 菜帆さんは、海中の様子をリアルタイムで把握できるIoTデバイスを、樋口 翔太さんは導入の敷居を下げた小規模工場向けの産業ロボットを開発しています。

トークセッションの様子

左から市川 友貴さん(2019年度未踏IT人材発掘・育成事業修了生/HarvestX株式会社 代表取締役社長)、野城 菜帆さん(2021年度未踏アドバンスト事業修了生/株式会社MizLinx 代表取締役CEO)、樋口 翔太さん(2022年度未踏アドバンスト事業修了生/株式会社Closer 代表取締役CEO)

2つ目のセッションは「天才デジタルイノベーター集結 日本発グローバルAIの勝ち筋」。
巨大テック企業が世界を席巻し、主導権を明け渡してしまった日本企業。しかしAIの台頭により大きな転換期が訪れています。日本の勝算はどこにあるのか。グローバルに活躍する未踏人材が、自らの経験をもとに未来へとつながる提言を行いました。

トークセッションの様子

左から、比戸 将平さん(2002年度未踏ユース修了生/ダイキン工業株式会社 テクノロジー・イノベーションセンター 技師長)、梶田 真実さん(未踏アドバンスト事業PM、株式会社SingularPerturbations 代表取締役CEO)、古橋 貞之さん(2006年度上期未踏ユース修了生、トレジャーデータ株式会社 チーフアーキテクト)

比戸 将平さん

比戸さんはAI企業のPreferred Networksで活躍後ダイキン工業に移り、AI分野を中心に製造業のDXをリードしています。
「日本では米国などと比べデジタル技術で突出した人材が少なく、投資額も小さいのが現実。しかし製造業をはじめとした日本で競争力ある事業会社にはまだ貴重なデータが眠っていて、自らの手で最先端AIとかけ合わせることで大きな価値を生み出すことが可能だ。それを実現できる人材が求められている」

梶田 真実さん

未踏アドバンスト事業PMの梶田さんは、警備業界向けに犯罪予測システムを提供するスタートアップの創業者。同社のシステムはブラジルで大きな成果を上げ、高い評価を得ています。
「日本では技術のバックグラウンドをもつ経営者が少ないため、アグレッシブに技術を取り入れられなかった。技術と経営、両方の経験を持つ人材が増えると日本も変わっていくのではないか。自社の事業領域の強みとAIをかけ合わせて独自の価値を作っていければ、十分勝ち筋はある」

古橋 貞之さん

古橋さんは大規模データ処理と分析を行うプラットフォームを提供するトレジャーデータの共同創業者です。アメリカで起業後、各国へ展開。現在75か国以上でビジネス展開を行うグローバル企業へと発展しました。
「シリコンバレーで感じたのは、起業してイノベーションが生まれることで豊かになれると皆が信じているということ。挑戦することの価値を皆が認めている。成功するためにはある種の狂気が必要だが、日本のクラフトマンシップはそれに匹敵する。未踏のように挑戦を評価する環境で新しいものにチャレンジしていけば、日本でももっとイノベーションを起こせるのではないか」

KIDOU Global Pitch

「KIDO Global Pitch」では、プレシード期とシード期のスタートアップ起業家によるピッチを実施。2名の未踏修了生が登壇し、英語で自社の事業を紹介しました。

「KIDOU Global Pitch」のステージ

山本 愛優美さん(2022年度未踏アドバンスト事業修了生/株式会社e-lamp. 代表取締役)
山本さんは未踏事業で開発した心拍可視化デバイスを活用し、マッチングサービス「ematch」を運営。その可能性と新規性についてピッチを行いました。

佐々木 佑介さん(2024年度未踏アドバンスト事業修了生/株式会社きゅうりトマトなすび 代表取締役CEO)
佐々木さんは、データを活用した総合的な農業デジタル化支援を行う企業を起業。ピッチでは、農業特化型生成AIサービス「ノウノウ」について紹介しました。

佐々木さんはOfferBox賞を受賞しました。景品としてアメリカボストンにて開催されるグローバルアントレプレナープログラムへの渡航費援助が贈られました。

「KIDOU Global Pitch」授賞式

未踏発のクリエイティビティが光った「SxPARK Fes」

9月17日・18日には(公財)大阪産業局と(一社)デジタル人材共創連盟主催のもと、同じく大阪梅田にあるグラングリーン大阪ロートハートスクエアうめきたで「SxPARK Fes」が開催されました。自分の「好き」を形にしたい・社会を変えたいという想いを持つ次世代のテッククリエイターや起業家を発掘し、企業や支援機関をつなぐイベントです。

AI ラップシステムVS 梅田サイファーのラップバトル

同会場のステージでは、「AIラップバトルの可能性 人間×AIが生み出す新しいエンタメの未来」と題したセッションが行われました。大阪発の人気ヒップホップクルー「梅田サイファー」に、未踏修了生の三林 亮太さんが開発したAIラップシステムがラップバトルを挑みました。
三林さんは事前に梅田サイファーのメンバー3名の音声データを入手して、梅田サイファーAI版を制作。プロのラッパーとAI化した本人がラップバトルで対決する、前代未聞の企画が実現しました。

AI VS 梅田サイファーのラップバトルの様子

画面左から、未踏修了生の三林さん、梅田サイファーのKOPERUさん、KBDさん、KennyDoesさん。三林さんの左隣にあるのがラップシステム

-

三林さん「ラップへのあこがれがあったんですが、素人がいきなりサイファー(輪になり即興でラップをするセッション)に参加するのは怖かった。コンピューターなら失敗しても怒らないし、相手をしてもらえると思い、ラップシステムを開発しました」。

KOPERUさん「たしかにサイファーにはそういう面もありますね(笑)。常日頃から一緒にラップできるパートナーがいれば、めちゃくちゃうまくなれると思うんで、いいと思いますね」

AIと梅田サイファーのメンバーが1対1で対決するスタイルでラップバトルは行われました。
梅田サイファーのメンバーが発したリリック(ラップの歌詞、詩)をAIラップバトルシステムがその場で音声認識し、すぐに返しのリリックを生成、音声合成して返していきます。リアルの梅田サイファーメンバーとは毛色が異なる独自のリリックをAIが生み出し、ステージが爆笑に包まれる一幕も。

AI KOPERU VS KOPERUのラップバトルの様子。テーマは「梅田」

AIと対決するという前代未聞のラップバトルを終えた梅田サイファーのみなさん、制作者の三林さんの感想は。

KOPERUさん「ラリーがスムーズなのがすごいと思いました。あと声がいいですね(笑)」

KBDさん「ちょっと意地悪なことを言ってみたんだけど、ちゃんと拾って返してくれますね。リリカルにしっかり返してくれるのはAIならではでしょう」

KennyDoesさん「テクニカルな面でいうと、全体的に韻が甘い。小節の最後に終われなくてはみ出すところがあったので、もう少し韻を学習してもいいんじゃないかと思いました」

三林さん「目の前でプロのラップを見られてめちゃめちゃ楽しかったです。プロの視点からフィードバックがもらえたのがありがたかった。今後の開発にもつなげられそうです」

AI相手のラップバトルでも梅田サイファーのメンバーそれぞれの特徴が発揮された

セッションの後のDJタイムには、椎名 貫太さんがVJで参加。音楽に合わせた映像で会場を彩りました。

才能溢れる未踏修了生のプロダクト

ステージの周囲では展示が実施されました。未踏修了生が未踏採択期間中の開発成果や現在取り組んでいるプロダクトを披露しました。
展示されたプロダクトは、どれも自分の「好き」を具現化したユニークなもの。未踏ブースではプロダクトの実物を展示し、開発者である未踏修了生が自らプロダクトについて説明を行いました。

AIラップバトルシステム
未踏採択プロジェクト:ラップバトル対話システムの開発
三林 亮太さん(2022年度未踏IT人材発掘・育成事業修了生)
ラップバトルで重要とされている「ライム(韻)」「アンサー(返答)」「フロー(リズム)」を考慮したラップ生成がリアルタイムでできる高度なシステムです。

VJ文化普及プロジェクト
未踏採択プロジェクト:ジェネラティブVJソフトウェアの開発を容易にするシステム
椎名 貫太さん(2024年度未踏IT人材発掘・育成事業修了生)
VJ(Visual Jockey)とは、音楽イベント等でリアルタイムに行われる映像演出のこと。自らもVJとして活躍する椎名さんは、VJ文化の普及を目指して、ジェネラティブ VJ (リアルタイムCG技術を用いたVJ)を気軽にはじめられるソフトウェア「Fluss」を開発しました。

ドキドキを可視化するデバイス
未踏採択プロジェクト:感情共有を促進する心拍フィードバック装置の開発
山本 愛優美さん(2022年度未踏アドバンスト事業修了生)
山本さんが開発した「e-lamp.」は、心拍フィードバックを光の点滅で可視化するイヤリング型のデバイス。いわば、ドキドキの可視化デバイスです。自分の心を外部と共有しながらコミュニケーションすることを可能にしました。未踏修了後も、心拍を使ったマッチングイベントなど「脈拍」を使った事業に取り組んでいます。

粘菌アート 粘墨画・粘山水
未踏採択プロジェクト:粘菌ファブリケーションのための粘菌の自動培養システム
迫田 海斗さん(2024年度未踏IT人材発掘・育成事業修了生)
粘菌を愛し、粘菌と共に生きる迫田さんは、粘菌の自動培養システムを開発しています。ブースには、開発した技術を利用したプロダクトを展示。墨と粘菌が織りなす水墨画的表現の「粘墨画」は、粘菌と墨に浸したオートミールによる自然の表現、いわば粘菌版の枯山水です。

盆栽をデジタル化するBONSAIENCE
未踏採択プロジェクト:盆栽のデジタルツイン化と樹形美の科学
内海 忍さん、小山 賢晋さんほか(2024年度未踏アドバンスト事業修了生)
盆栽に魅了された若者たちが取り組む、樹形の3D化プロジェクト、「BONSAIENCE」。名品盆栽のデジタル美術館やユーザーが自ら撮影・アップロードした盆栽を3D化して閲覧できるデジタルプラットフォームを実現しました。また、蓄積される盆栽ビッグデータを用いて、樹形美の科学的分析にも挑戦しています。

未踏修了生の展示プロダクト

上段左から、三林さん、椎名さん、山本さんの展示。下段左から、迫田さん、内海さん・小山さんたちの展示

「SxPARK Fes」での展示、トークセッションともに未踏修了生のプロダクトのユニークさが光った内容となりました。ご来場いただいた皆様、ご協力いただいた未踏修了生の皆様、ありがとうございました。

PAGE TOP