2025年度未踏IT人材発掘・育成事業「スーパークリエータ」
SUPER CREATOR
谷口 朝洋 たにぐち ともひろ
所属:慶應義塾大学 大学院政策メディア研究科 / 合同会社CrossLayer 代表
-
略歴
2000年9月 奈良県生まれ
2020年4月 大阪府立大学 工学域機械工学科 入学
2024年3月 大阪府立大学 工学域機械工学科 卒業
2024年4月 慶應義塾大学 大学院政策メディア研究科 修士課程 入学
2026年4月 慶應義塾大学 大学院政策メディア研究科 博士課程 入学
2026年4月 合同会社CrossLayer 設立 -
受賞歴
2023年11月 4DFF学会 Top Award
2023年3月 日本機械学会畠山賞 -
担当プロジェクトマネージャー
竹迫 良範
開発テーマ名
ロボットコンテストのための3Dプリントプリプロセッサの開発
概要
本プロジェクトでは、ロボットコンテスト等のものづくりにおいて極めて重要な「軽量性と強度の両立」という課題に対し、3Dプリントの内部構造(インフィル)を応力分布に基づき局所的に最適化するソフトウェア「Strecs3D」を開発した。従来の3Dプリントでは、パーツ全体に一律のインフィル密度が適用されるため、負荷の低い部位には過剰な材料が消費され、逆に応力集中部では強度が不足するという構造的な非効率性が存在していた。この問題に対し、設計(CAD)と製造(スライサー)の間に「スライシング・プリプロセッサ」という新たな工程を介在させるワークフローを構築した。具体的には、入力された3Dモデルに対して有限要素法(FEA)による応力解析を行い、得られた応力値とGibson-Ashbyモデルに基づく密度計算から、モデルを力学的に最適な複数の領域に分割する。これらの最適化情報は製造メタデータとして3MF形式で出力され、既存のスライスソフトとシームレスに連携可能である。三点曲げ試験では、同一質量の均一インフィルと比較して最大荷重で約1.97倍、剛性で約1.65倍の性能向上を達成し、経験や勘に頼らない力学的根拠に基づいた効率的なデジタル製造プロセスを実現した。
図1: 「Strecs3D」による応力解析とインフィル最適化の様子(左)と、インフィル密度が最適化されたノズルパス(中央)と、実際の印刷物(右)
図2: 「Strecs3D」を用いてインフィル最適化を行なったパーツ(左から順にハンドル、肩持ち梁、ベアリングホルダー、ドローンフレーム、壁掛けフック、デスクフック、ロッドコネクター、モーターマウント、フレームコネクター、スマホスタンド、タブレットスタンド)
-
2025年度 未踏IT人材発掘・育成事業 成果報告会(MITOU2025 Demo Day)動画
PMの評価
当初の実施計画で掲げていた開発項目は早い段階で完了し、実装量や技術の専門性も含めて、当初の計画を上回る圧倒的な成果を生み出した。各社スライスソフトが扱う3MF形式のファイルがあるが、Ultimaker Cura、Bambu Studio、Prusa Slicerの各社の独自拡張の仕様をリバースエンジニアリングし、それぞれのソフトでも扱えるようにプロダクトを修正し、実用性を大きく向上させた。彼自身が世界的な視野を持っていることもあり、英語圏での情報発信も行い、「Strecs3D」のGitHubスター数は853とニッチな領域にも関わらず大きな反響を得た。
クリエータからひとこと
未踏事業での成果を社会実装するため、2026年4月に合同会社CrossLayerを設立いたしました。現在は、博士課程での研究、仕事、そして趣味の開発がすべて一本の線で繋がり、起きている間中ワクワクしながらものづくりに没頭する日々を送っています。
技術面では、長年趣味として取り組んできた印刷経路生成プログラムと、本事業で培ったインフィル最適化技術を融合させ、過去の知見をフル活用した次世代のインフィル構造実現に挑んでいます。実務での3Dプリント案件から得た技術的課題を研究へフィードバックし、さらなる革新を生むという研究と仕事の好循環が生まれ、とても充実した日々を過ごしています。