2025年度未踏IT人材発掘・育成事業「スーパークリエータ」
SUPER CREATOR
真家 彩人 まいえ あやと
所属:なし
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略歴
2003年7月 東京都生まれ
2022年3月 東京都立西高等学校 卒業
2022年4月 東京大学 教養学部理科一類 入学
2026年3月 東京大学 工学部システム創成学科 卒業 -
受賞歴
2016年10月 第1回全国小中学生プログラミング大会 中学校部門 優秀賞
2017年10月 NHK 第1回夏休みWhy!?プログラミングアワード 受賞
2018年10月 第3回全国小中学生プログラミング大会 準グランプリ
2018年10月 NHK 第2回夏休みWhy!?プログラミングアワード 受賞
2020年11月 U-22プログラミング・コンテスト2020 経済産業省商務情報政策局長賞<プロダクト>、Best Viewers賞
2022年11月 U-22プログラミング・コンテスト2022 経済産業省商務情報政策局長賞<テクノロジー>、useful(日本事務器)賞
2023年11月 U-22プログラミング・コンテスト2023 経済産業大臣賞<総合>
2024年1月 BCN ITジュニア賞2024 -
担当プロジェクトマネージャー
落合 陽一
開発テーマ名
共感覚に基づく視覚化によって直感的な音作りを可能にするシンセサイザー
概要
本プロジェクトで開発したシステムは、一言で表すと「音色が視えるシンセサイザー」である。
従来のシンセサイザーは、豊かな音色を奏でられる一方、一つずつ試聴しないとどのような音かわからないという課題や、パラメータと音色の関係がわかりにくいという課題があった。
そこで本プロジェクトでは、音作りのユーザーインターフェイスの直感性を向上するためのアプローチとして、音色の視覚化に焦点を当てた。このシステムでは、形状と材質を用いて音色を視覚的に表現する。形状と材質は、ユーザー自身の共感覚(感覚間協応)に基づき、深層学習モデルによって推定する。プリセットを選択するユーザーインターフェイスでは、各プリセットに対応する音色の視覚化の結果がアイコンとして表示されることで、どのような音色かを試聴前に一覧することができる。また、音色のパラメータを編集するユーザーインターフェイスでは、視覚化の結果がスライダー上の対応する位置に表示されることで、パラメータと音色の関係を直感的に把握することができる。画像推定モデル、ソフトウェア、ハードウェアを一体として設計・開発し、ユーザーがスタンドアロンのシンセサイザーとして利用できるシステムを構築した。
図1: 開発したシンセサイザーの外観
図2: 音色パラメータ編集画面
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2025年度 未踏IT人材発掘・育成事業 成果報告会(MITOU2025 Demo Day)動画
PMの評価
真家氏の能力評価
技術的側面
真家氏の技術力は突出している。5歳からのピアノ、小学3年からのプログラミングという2つの根を持ち、U-22プログラミング・コンテスト2023において3度目の挑戦で経済産業大臣賞(総合)を獲得した「OneSynth」は、未踏以前の段階で既に完成度の高いシステムであった。未踏ではこれをさらに発展させ、深層生成モデルによる共感覚モデリングと勾配ベースのパラメータ探索を統合し、音色の視覚的操作という新しいインタラクション・パラダイムを実装した。
東京大学松尾・岩澤研究室に所属し、機械学習の理論的基盤を持ちながらも、音楽とテクノロジーの融合という独自の応用領域を切り開いている。プロジェクト期間中に深層生成モデルのアーキテクチャを洗練させ、リアルタイムでの音色と視覚の双方向マッピングを完成させた点は、工学的にも高い水準にある。
さらに、ソフトウェアの開発に留まらず、専用筐体の設計・制作を含めたハードウェアの統合も自ら行い、スタンドアロンのシンセサイザーとして完成させた。ソフトウェアとハードウェアの両面にわたる実装能力は、物質と情報の融合を志向する計算機自然の理念を技術的に体現する力の表れである。
人間的側面・共感性と巻き込み力
真家氏の人間的成長として特筆すべきは、U-22での3年間の経験で培われた粘り強さと、外部評価に依存しない内発的な探究心である。経済産業大臣賞という最高の評価を獲得してもなお開発を止めず、未踏に応募してきたという事実は、このテーマに対する没入性が外部評価によって消費されるものではなく、内発的動機に基づくものであることの証左である。
孫正義育英財団9期生としても選出されており、複数の外部機関がこの人物の将来性を認めている。プロジェクト期間中も自主的な開発が途切れることなく、プロジェクトへの真摯な姿勢が一貫していた。
また、音色を視覚化するという取り組みは、音楽制作の専門知識がない人々にも音の世界への参入障壁を下げるものであり、技術の共感的な拡張として社会的意義を持つ。
未踏性と時代の技術的背景理解
真家氏は音と視覚の間の非対称性という根源的課題に対し、共感覚という人間の知覚メカニズムに着想を得た計算的解を提示した。これは技術的解決であると同時に、人間の知覚と計算の関係性に対する深い洞察に基づいている。
深層生成モデルの急速な発展により、共感覚的対応の計算的モデル化が現実的になったという時代背景を的確に捉え、その上で「計算による知覚の拡張」という本質的な問いに取り組んでいる。これはまさに計算機自然の思想が目指す方向であり、時代の技術的動向と自らのライフワークを論理的に接続する能力を示している。
総合評価
真家彩人氏は技術力、独創性、ライフワーク性のいずれにおいても高い水準にある。U-22経済産業大臣賞、孫正義育英財団という外部評価に加え、プロジェクト期間中の開発を通じて「音と視覚の間の永遠の溝」に対する独自の解を提示し、その世界観は「未だその世界観に属さない人々がその新しい世界があると信じられる程度の完成度」に到達していると確信する。音楽と計算の融合を幼少期からのライフワークとして追求し、単なるツール開発を超えた知覚論的探究へと昇華した点は、まさに未踏的人材の典型である。スーパークリエータとして推薦する。
クリエータからひとこと
今秋からロンドン大学クイーンメアリー校の修士課程に進学する予定です。留学先ではSound and Music Computingについて学び、そこで培った専門性を今後の開発や普及活動に役立てていきたいと考えています。
私の目標は、開発したシンセサイザーを通じて、シンセサイザーの楽しさ、ひいては音楽の楽しさを多くの人々と共有することです。その意味では、今回の成果はあくまで一つの通過点に過ぎません。これからも継続して開発に取り組んでいくだけでなく、本システムを多くの方に体験していただける機会を予定していますので、ご期待ください。