2025年度未踏IT人材発掘・育成事業「スーパークリエータ」
SUPER CREATOR
平塚 心太朗 ひらつか しんたろう
所属:北見工業大学 大学院工学研究科 共創工学専攻
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略歴
2000年10月 栃木県生まれ
2019年4月 北見工業大学 工学部 地域未来デザイン工学科 入学
2023年3月 北見工業大学 工学部 地域未来デザイン工学科 卒業
2023年4月 北見工業大学 大学院工学研究科(博士前期課程) 工学専攻 入学
2025年3月 北見工業大学 大学院工学研究科(博士前期課程) 工学専攻 卒業
2025年4月 北見工業大学 大学院工学研究科(博士後期課程) 共創工学専攻 入学 -
受賞歴
2023年9月 一般社団法人 日本光学会 情報フォトニクス研究グループ ポスター発表 最優秀講演賞
2023年11月 一般社団法人 日本光学会 第9回 OPJ優秀講演賞
2024年2月 HOKKAIDO学生アプリコンテスト2025 北海道経済産業局長賞・フェンリル賞 -
担当プロジェクトマネージャー
岡 瑞起
開発テーマ名
「みんなで楽しくできる」XRリハビリテーション空間の構築
概要
「あの時もっとリハビリをしておけば……」
本プロジェクトは、リハビリテーションにおける孤独感や単調動作の繰り返しにおける退屈さを改善するため、XR技術を用いて、患者・家族・療法士など、だれもがリハビリへ参加したくなる「みんなで楽しくできる」リハビリテーション空間の構築に挑戦した。
ヘッドマウントディスプレイ単体でのアプリケーション実行が可能なスタンドアロン形式のアプリケーションにおいて、インターネット不要なLAN上での相互通信を実現し、同一のXR空間を共有することができるシステムを実装した。これにより、患者の自宅や、有料老人ホーム、デイケアセンターなど多様な環境に容易に導入が可能となった。また、このXR空間共有システムをベースに、ゲーミフィケーションした上肢機能のリハビリコンテンツを複数実装した。
未踏期間中では、これらの開発物を用いて複数の介護施設において、XRリハビリのワークショップを実施し、計24名の利用者に体験いただいた(図1)。結果として、XRリハビリの楽しさ・グループ体験・リハビリへの意欲・従来リハビリとの比較・ユーザビリティの全項目で肯定的な評価や、「またやりたい!」という声をいただくことができた。
図1: 釣りを題材として開発したXRマルチプレイリハビリソフトウェアを用いて、介護施設にてワークショップを実施した際の様子
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2025年度 未踏IT人材発掘・育成事業 成果報告会(MITOU2025 Demo Day)動画
PMの評価
平塚氏は、リハビリテーションという難しい医療・福祉の領域で、技術力と現場への共感の両方を備えたクリエータだった。
このプロジェクトの原点は、父親の脳卒中という個人的な体験にある。「もっとリハビリを支えられたのではないか」という後悔が、「リハビリを孤独で退屈な体験から、みんなで楽しめるものに変えたい」という明確なビジョンにつながった。新雪プログラムからの継続的な取り組みが、未踏事業でひとつの形になった。
技術面では、Unity 6とMirror Networkingを使ったアドホック型XRマルチプレイシステムを独自に構築し、インターネット不要のLAN環境で最大12台のHMD同時接続を実現した。QRコードによるセンチメートル精度の空間共有、OpenXR準拠のベンダー非依存設計、動的オーソリティ転送など、技術的な完成度は高い。リハビリ文献に基づく4段階の適応的難易度調整(成功率65〜80%を維持するアダプティブモード)も実装しており、医療知見を技術設計に落とし込む力がある。
ただ、平塚氏の真価は技術力だけではない。最も印象に残ったのは、介護施設でのワークショップでの対応力だ。2施設・計24名の高齢者(70〜90代、軽度認知障害から車椅子利用者まで)を対象とした実証実験の初日、操作が複雑でユーザーの反応は良くなかった。しかし平塚氏はその夜のうちに問題を分析し、操作の簡略化や自動リリース機能を追加。翌日のワークショップでは参加者から笑顔と「またやりたい」という声を引き出した。現場で失敗し、即座に改善し、翌日に成功させる——このサイクルは、まさに未踏事業が育てたい力そのものだ。
平塚氏の最大の強みは、「リハビリを必要とする人の生活をより良くしたい」という強い想いと、それを技術で形にする一貫した姿勢にある。XRマルチプレイリハビリという、市場にも学術にもまだない領域を自分の手で切り拓いた。倫理審査という壁にぶつかっても代替施設を探して粘り強く調整を続け、3Dプロジェクタ方式が合わないとわかれば固執せずMR環境に集中する判断も的確だった。技術と社会の間に立ち、両方を理解しながらプロダクトを磨き上げる姿勢は、エンジニアとしてだけでなく、社会課題に取り組むイノベーターとしての資質を示している。医療機関との共同研究や事業化を通じて、このビジョンがより多くの人に届くことを期待している。
クリエータからひとこと
現在は、上肢機能のリハビリだけでなく、対象となるリハビリ分野を広げた開発を行っています。また、医療機関と連携して、XRリハビリの効果を現場のアセスメントだけでなく、生理指標から解き明かす研究を行っています。残りの博士後期期間で、エビデンスを積み上げ、サービスとして社会に届けられるよう奮闘中です! 取り組みにご興味がある方はご連絡ください!