2025年度未踏IT人材発掘・育成事業「スーパークリエータ」

SUPER CREATOR

田中 宇宙 たなか そら

所属:富士通クライアントコンピューティング株式会社

  • 略歴

    2001年3月 北海道 士別市生まれ
    2020年4月 北見工業大学 地域未来デザイン工学科 入学
    2024年3月 北見工業大学 地域未来デザイン工学科 卒業
    2024年4月 北見工業大学 大学院工学研究科 情報通信工学プログラム 入学
    2026年3月 北見工業大学 大学院工学研究科 情報通信工学プログラム 卒業
    2026年4月 富士通クライアントコンピューティング株式会社 入社

  • 担当プロジェクトマネージャー

    稲見 昌彦

開発テーマ名

独りでも楽しめるギター練習支援XRアプリケーション

概要

「SoRock」は、ギター初心者が独学でも楽しく練習を継続できるXRアプリケーションである。ギターは自己表現や他者との交流を可能にする魅力的な楽器である一方、初心者は「好きな曲は難しく、教材曲は好みに合わない」という壁に加え、平面的な教材だけでは理解しにくい立体的な運指や、一人で練習を続ける孤独感に直面しやすい。SoRockでは、音源分離やコード解析を用いて好きな楽曲から練習用譜面を自動生成し、熟練度に応じて難易度を調整できる仕組みを実装した。また、XR空間上にバーチャルハンドやピッキングガイドを提示することで、コードの押さえ方やストロークを三次元的に理解できるようにした。さらに、仮想バンドメンバーとの合奏、ライブ演出、スコアリングを組み合わせることで、成果を実感しながら継続できる体験を設計した。ユーザー評価では、利用者が好きな楽曲の演奏やランキングへの挑戦を動機に練習を重ね、上達を実感しながら自発的に継続する様子が確認された。SoRockは、ギター練習を単調な反復練習から、好きな曲を演奏し、バンドと共演し、成長を楽しめるエンターテインメント性の高い練習体験へと転換した。

図1: 「Sorock」の概要

好きな楽曲をWebアプリケーションにアップロードするだけで、練習用の譜面を自動生成する。ユーザーは生成された譜面をもとに、HMD上のライブ会場で仮想バンドメンバーと合奏しながら、没入感のあるギター練習を体験できる。

図2: バーチャルライブ空間で、手元を確認しながらギターを練習する様子

PMの評価

田中氏は、北見工業大学大学院工学研究科の大学院生である。本プロジェクト以前に「新雪プログラム」でバーチャルバンドメンバーの基礎部分を開発しており、その技術を発展させる形で本プロジェクトに臨んだ。
田中氏は以下の3つの能力を高い水準で備えている。
構想力:ギター初心者の挫折という明確な課題に対して、段階的な譜面生成、三次元の運指ガイド、バーチャルバンドとの合奏を一つのシステムにまとめ上げた構想は、音楽教育とXR技術の交差点に新しい可能性を見つけている。中でも「音補完機能」の着想は秀逸である。練習支援ツールの多くが「間違いを指摘する」方向に設計されている中で、「足りない音を補って楽曲として成立させる」というアプローチは、初心者にまず「弾けた」という成功体験を届けることを優先した設計哲学の表れであり、新規性と有用性の両面で高く評価できる。
実装力:譜面自動生成のWebアプリケーション(FastAPI + Celery + Redis + Docker)からMeta Quest 3上のXRアプリケーション(Unity)まで、バックエンドとフロントエンドの全工程を一人で開発した。音源分離、コード解析、IK制御のバーチャルハンド、MIDIピックアップによるリアルタイム判定、LLMによるフィードバック生成、ゲーミフィケーション、照明演出の自動制御と、極めて広範な技術スタックを統合し、使える状態にまで仕上げ切った。
展開力:2種類のユーザテスト(動画教材との比較実験と3週間の自由環境テスト)を自ら設計・実施し、システムの有効性を裏付けるデータを得た。特に3週間の自由環境テストは、練習指示なしで自発的な練習継続と上達を確認するという意欲的な設計であった。MIDIピックアップからマイク入力への移行やアプリストアリリースに向けた準備も進めており、社会実装への意識が一貫している。
以上のことから田中氏は「スーパークリエータ」の基準を十分に満たしていると判断する。

クリエータからひとこと

現在はソフトウェアエンジニアとして企業で働きながら、未踏で開発した「SoRock」のリリースに向けて改良を進めています。特に、これまでMIDIピックアップを用いていた音判定システムを、より多くの環境で利用しやすいマイク音声取得ベースの方式へ換装しています。また、仮想バンドメンバーが演奏状況に応じてより自然に振る舞う仕組みの開発にも取り組み、初心者が一人でも楽しく続けられる、より良い合奏練習体験の実現を目指しています。

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