2024年度未踏IT人材発掘・育成事業「スーパークリエータ」

SUPER CREATOR

スーパークリエータ

髙名 典雅 たかな のりまさ

所属:筑波大学 理工情報生命学術院 システム情報工学研究群

  • 略歴

    2001年8月 千葉県生まれ
    2022年3月 木更津工業高等専門学校 情報工学科 卒業
    2024年3月 筑波大学 情報学群 情報科学類 卒業
    2024年4月 筑波大学 理工情報生命学術院 システム情報工学研究群 入学

  • 受賞歴

    2021年 第52回 インターネットと運用技術研究会 学生奨励賞
    2024年 筑波大学 情報科学類 学類長賞
    2024年 第36回コンピュータシステム・シンポジウム 最優秀若手発表賞

  • 担当プロジェクトマネージャー

    田中 邦裕

髙名 典雅

開発テーマ名

RISC-Vの拡張を仮想化できるハイパーバイザの開発

概要

オープンソースの命令セットアーキテクチャである RISC-V では仕様を「拡張」という単位でモジュール化しており、設計者はこの拡張を組み合わせることで必要な機能だけを組み込んで仕様を作れる。拡張は盛んに策定されており、2024 年末までに 122 個も策定されている。一方で実際に利用されている数は、調査の結果 35 個にとどまっていることがわかった。
このような状況を打破するために本プロジェクトではハイパーバイザを用いて拡張の振る舞いをエミュレーションし、より手軽に手元の環境で試すことができるシステムを構築した。拡張とモジュールは1対1で対応しているのでユーザはモジュールをインストールするだけで環境を整えることができる。これにより、今まで使われてこなかった拡張を活用できるようになるだけでなく、ソフトウェアの開発者やユーザが手軽に拡張を試せる環境を提供することでフィードバックを促進し、根本の原因である開発サイクルが上手く回らない問題を改善できる。
また、ハイパーバイザだけでなく、デコーダや拡張をエミュレーションするモジュールを自動生成するツールの開発にも取り組み、より導入を容易にした。

システムの概要

図1: システムの概要

命令のエミュレーションの概要

図2: 命令のエミュレーションの概要

PMの評価

RISC-Vの拡張を仮想化するハイパーバイザの開発という、極めて技術的に高度な課題に挑戦し、見事に成果を出した。RISC-Vはオープンアーキテクチャとして拡張性の高さが魅力であり、多くの命令セットが策定されているものの、ハードウェア実装が追いつかず、実際には活用されていない拡張が多数存在するという問題があった。その課題に対し、ハイパーバイザを用いて拡張命令を仮想化し、ソフトウェア上で試験・運用できる仕組みを構築するというアプローチを取ったのは、非常に理にかなっており、かつ未踏性のある新しい視点だった。
低レイヤー技術に対する深い理解を持ち、コンセプトづくりにとどまらず、実装レベルで動作するシステムを完成させた点は素晴らしかった。仮想化技術とRISC-V拡張の融合という難易度の高い課題に対して、理論と実践の両面でしっかりとアプローチし、確かな成果を出したことを高く評価している。プロジェクトの規模や難易度を考慮しても、一人でここまでのシステムを作り上げたのは非常に印象的だった。

クリエータからひとこと

髙名 典雅

成果報告会後もなかなか時間が取れない中で継続的に開発を進めており、モジュールの管理方法の改善や実機対応を進めています。
この先RISC-Vのシェアは着実に増えていってこのプロジェクトの必要性も増していくはずなので、引き続き開発と普及活動を頑張っていこうと思います。
ハイパーバイザ単体についても、RISC-V H 拡張に対応した実機はこれからどんどん増えてくると思うので今のうちに主導権を握れたらなと考えています。
また、論文執筆も進めており、実機での評価が取れたら学術雑誌へ投稿する予定です。
未踏期間中ひたすら苛烈なアウトプットの時間だったので、今年は色々なことを勉強するインプットの年にしたいです。

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