2024年度未踏IT人材発掘・育成事業「スーパークリエータ」
SUPER CREATOR

伊組 烈火 いぐみ れっか
所属:慶應義塾大学 環境情報学部
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略歴
2005年7月 東京都生まれ
2025年4月 慶應義塾大学 環境情報学部 入学 -
受賞歴
2023年5月 未踏ジュニア 採択
2023年12月 未踏ジュニアスーパークリエータ 認定
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担当プロジェクトマネージャー
曾川 景介

開発テーマ名
Capability-Based Microkernelによるセキュアなユーザレベルメモリ管理システム
概要
現代のKernelにおけるTrusted Computing Base(TCB)は日々肥大化し、セキュリティ・リスクを高めている。この課題を解決するのがMicrokernelであり、特権的モードで動作するコードを最小限に抑え安全性を実現する。また、Object-Capability Modelによるセキュリティ機構は安全性を保ったまま柔軟性を高める。
「A9N Microkernel」はこれら2つをもって構築した3rd-generation Microkernelである。実装の結果、世界最速のIPC性能を達成した。また、セキュアなシステムを構築するために周辺環境の整備を行った。具体的には、A9Nを用いてOSを開発するための「Nun OS Framework」や「Bootloader」、そしてModern C++によるエラーハンドリングを実現するための「liba9n」を開発した。

図1: 「A9N Project」のロゴイメージ

図2: 「A9N Microkernel(x86_64)」の起動直後コンソール
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2024年度 未踏IT人材発掘育成事業 成果報告会(MITOU2024 Demo Day)動画
PMの評価
本プロジェクトは、マイクロカーネルの進化形として極めて高い技術的完成度を持つだけでなく、今後の拡張性や実用性の観点でも非常に優れたCapability-Based Microkernelである「A9N」を開発した。特に、セキュリティ・パフォーマンス・スケーラビリティの3要素を兼ね備えたアーキテクチャは、今後のOS設計の参考になるものを残した。加えて、ハイパーバイザやOS開発のためのフレームワークの「Nun」など、当初予定にはなかった周辺ツールも開発したこともあり、PMの期待を大きく超えたと言える。具体的な実装部分では、「liba9n」というC++標準のエラーハンドリングとは異なる独自のエラーハンドリングライブラリを開発することで、ヒープメモリを利用することなく型安全なエラーハンドリングを実現したことは、非凡なプログラミングセンスを感じざるを得なかった。
クリエータからひとこと

現在は「A9N Microkernel」をHypervisorとして利用するための拡張実装をしています。今後も開発を続行し,安全なシステム基盤の普及を目指します。