2024年度未踏IT人材発掘・育成事業「スーパークリエータ」
SUPER CREATOR

上條 陽斗 かみじょう はると
所属:東京大学 大学院工学系研究科 建築学専攻 博士後期課程
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略歴
2000年6月 東京都生まれ
2023年3月 東京大学 工学部建築学科 卒業
2025年3月 東京大学 大学院工学系研究科 建築学専攻 修士課程 修了
2025年4月 東京大学 大学院工学系研究科 建築学専攻 博士後期課程 入学 -
受賞歴
2023年3月 東京大学工学部長賞(研究最優秀)
2023年9月 日本建築学会 優秀卒業論文賞
2023年11月 日本建築学会 第18回コロキウム構造形態の解析と創生2023 若手優秀発表賞
2024年3月 三越伊勢丹 Future Fashion Award 「空中で暮らす世界」部門大賞
2024年11月 YAMAGIWA UNDER 25 IDEA & DESIGN COMPETITION 最優秀賞
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担当プロジェクトマネージャー
落合 陽一

開発テーマ名
量産可能な4Dファブリケーションテキスタイルの開発
概要
4Dファブリケーションとは、製造物の時間変化による変形を取り入れた製造手法であり、特に本プロジェクトではテキスタイルの製造に焦点を当てている。4Dファブリケーションは注目を集めているが、量産性に欠き応用が限定されている。本プロジェクトはその課題を解決すべく、(1)材料と加工法の見直しによる従来手法の改善、(2)ジャカード織機による新たな4Dファブリケーションテキスタイルの提案を行った。ジャカード織においてはピンタック織りの技術を応用し、布にヒンジ構造を埋め込むことで立体的な表現を行った彫刻シリーズ《forming patterns》を制作した。テキスタイルという柔らかい素材を用いて、いかに立体的でシャープな表現が可能かという問題に熱意を持って取り組んだ。

図1: 《forming patterns》ジャカード織による立体的な彫刻。テキスタイルに埋め込まれた構造からエッジの立った造形が生まれる

図2: 《Active Textile - Pillar》従来の4Dファブリケーション手法の生産性を改善することで大規模化を実現した
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2024年度 未踏IT人材発掘育成事業 成果報告会(MITOU2024 Demo Day)動画
PMの評価
上條氏は本プロジェクトにおいて、テキスタイル技術とデジタルファブリケーションの融合という挑戦的な課題に取り組んだ。特筆すべきは、月に一度の頻度で富士吉田市のテキスタイル産業の様々な工場を訪れるという実地調査を通じて、「テキスタイルとその製法に関する知識が、特に織りの技法に特化すればテキスタイルを専門に学んだ学生に劣らない程度に得られた」という専門性の深化である。
この深い専門知識の獲得は、ジャカード織りという伝統的技術を4Dファブリケーションという現代的文脈で再解釈するという独創的なアプローチの基盤となった。特に、ピンタック織りの技法に着目し、サインカーブの振幅を大小交互に配置した襞パターンを開発して、一方向に曲がりやすく他方に曲がりにくいヒンジ構造を発見したことは、情報パターンと物理的挙動の関係についての深い理解を示している。
最古のデジタルファブリケーション機器とも言えるジャカード織機の可能性を現代的視点で再評価し、伝統技術と先端技術の融合によって新たな表現領域を開拓した点は、技術の歴史的連続性と革新性の両立を示す卓越した業績である。また、従来の4Dファブリケーション手法の改善と、既存のテキスタイル産業技術の再解釈という二方向からのアプローチは、問題解決における視野の広さと創造的思考を反映している。
クリエータからひとこと

未踏の成果物を中心とした個展を2025年3月に開催しました。個展では未踏で制作した作品の他に、手漉き和紙の4Dファブリケーション手法なども模索しました。芸術領域での活動をこれから増やそうとしています。