2024年度未踏IT人材発掘・育成事業「スーパークリエータ」
SUPER CREATOR

和田 唯我 わだ ゆいが
所属:慶應義塾大学 理工学研究科 博士後期課程
-
略歴
2000年1月 佐賀県生まれ
2018年3月 佐賀清和高等学校 卒業
2023年3月 慶應義塾大学 理工学部 情報工学科 卒業
2024年9月 慶應義塾大学 理工学部 修士課程 修了
2024年9月 慶應義塾大学 理工学部 博士課程 入学
2025年3月 Carnegie Mellon University 研究留学 -
受賞歴
2022年 ICASSP 2022 CORSMAL Challenge 入選
2023年 CVPR 2023 DialFRED Challenge 優勝
2024年 CVPR 2024 Highlights Paper 入選
-
担当プロジェクトマネージャー
落合 陽一

開発テーマ名
機械学習に基づく中山間地域向け農業用散布ドローン群
概要
本プロジェクト「Agriswarm」は、作業負荷の高い果樹受粉を担うミツバチを代替し、中山間地域の労働力不足と耕作放棄を解決するための小型自律ドローン群システムを開発した。クリエータが自ら栽培に関わる福島県の実ほ場での実運用を想定し、花粉媒介昆虫の減少といった社会的課題に応える。機体にはJetson Orinを搭載し、カメラとIMUを組み合わせたVisual SLAMで衛星測位に頼らず棚下を飛行、経路計画アルゴリズムで障害物を自律回避しながら花へ接近し独自に設計した受粉機構によりミスト散布で受粉する。内部システムには機械学習を利用し,独自の学習パイプラインおよびYOLO系列と6D姿勢推定を組み合わせることで花の位置と姿勢を高精度に推定することを可能にした。さらに、受粉飛行中のデータをGaussian Splattingで統合して三次元点群を構築、樹冠占有面積率等の果樹栽培指標を計測して栽培管理に活用した。高負荷の推論・最適化・制御を単一ボードに集約したことで通信インフラが薄い山間部でも完結した運用が可能となり、受粉と果樹管理の双方を省力化しながらデータ駆動の経営判断を支援する成果を得た。

図1: 受粉作業中の蜂型ドローン

図2: Gaussian Splattingによって再構成したほ場の3Dモデル
-
2024年度 未踏IT人材発掘育成事業 成果報告会(MITOU2024 Demo Day)動画
PMの評価
和田氏は本プロジェクトにおいて、特に機械学習とコンピュータビジョンの領域で卓越した技術的貢献を示した。無限の条件が存在する自然環境下において高い汎化性能を有しつつ、比較的非力なコンピュータ上でも低レイテンシ・高スループットに動作する機械学習モデルの構築という挑戦的課題に取り組んだ。
特筆すべきは、ハイエンドコンピュータでのモデル開発が一般的な中で、限られた計算リソースの中で効率的に動作するシステムを設計・実装した点である。GPSに依存しない自己位置推定技術やGaussian Splattingを用いた3Dモデル化など、最新技術を実践的課題解決に応用する能力は卓越している。
また、実際の農業フィールドでの実証を通じて、一般的な機械学習研究のようにデータセットが既知のものとして与えられる環境とは異なり、実際の運用における真の分布に近い検証・テストデータの重要性を実感したことは貴重な学びとなった。伝統的な分割統治のアプローチを取りながらも、実際の運用環境での性能を重視する実践的な技術開発姿勢は高く評価できる。
計算リソースの配分管理という点からも大きな成長を遂げており、限られたVRAM・CPU使用量の適切な配分を考慮したシステム・モデル設計を行った。これらの学びは個々の技術的成長にとどまらず、機械学習モデルの実応用における実践的知見として、今後のキャリアにおいても重要な礎となるだろう。
クリエータからひとこと

社会実装に向けた機械学習システムの改良を進める一方、論文化を視野に入れた新たなアルゴリズムの開発を進めております。引き続き、ドローン並びに機械学習の社会応用を目指し、活動していきます。