2024年度未踏IT人材発掘・育成事業「スーパークリエータ」
SUPER CREATOR

高橋 直希 たかはし なおき
所属:早稲田大学 基幹理工学部数学科 / 株式会社CoeFont 共同創業者
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略歴
2002年2月 神奈川県生まれ
2017年4月 東京科学大学附属科学技術高等学校 電気電子分野 入学
2020年4月 早稲田大学 基幹理工学部 入学
2020年10月 株式会社CoeFont 創業 -
受賞歴
2019年10月 アプリ甲子園2019 全国3位
2019年10月 韓国科学アカデミー科学フェア2019(釜山)優秀革新的研究賞
2019年12月 第63回日本学生科学賞 入選1等受賞
2020年2月 第4回 関東・甲信越静地区 高校生探究学習発表会 ポスター日本語部門 優秀賞
2023年8月 Apple WWDC Swift Student Challenge Winner 選出
2023年12月 ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS(インタラクティブ部門 総務大臣賞、ACCグランプリ・マーケティング・エフェクティブネス部門 ACCシルバー)
2025年3月 言語処理学会第31回年次大会 若手奨励賞(共著)
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担当プロジェクトマネージャー
岡 瑞起

開発テーマ名
ニューラル言語モデルによる個人最適な日本語入力システムの開発
概要
かな漢字変換を用いた日本語入力は1960年代の登場から今日に至るまで発展し、多くの日本語利用者に用いられてきたが、長文脈理解と個人最適化には未だ限界があった。本プロジェクトではエンドツーエンドで変換を担うニューラル言語モデル「zenz」と、先周り学習モジュール「Tuner」、macOS向けIMEクライアント「azooKey」を中核に高精度で個人最適化された日本語入力体験を実現する。
zenzを用いたニューラルかな漢字変換システム「Zenzai」では、投機的デコーディングなどの工夫により、GPU前提ながらM1程度の端末でも快適に動作する。Tunerは画面上のテキストを収集してユーザ特化の言語モデルを構築することで個人固有の語彙や表現を即座に反映する。azooKeyはこのZenzaiを搭載し、さらに外部のAPIを利用する「いい感じ変換」では絵文字推薦やスタイル変換を単一UIで呼び出せるようになる。
また、本プロジェクト成果の一部として、コード、学習データ、評価ベンチマーク、モデルウェイトなどをOSSとして公開している。また、いくつかのフォークプロジェクトも進行しており、研究、実用の両面で日本語入力の技術と体験を飛躍させることを目指している。

図1: 「azooKey on macOS」を構成する主要なコンテンツ

図2: 「Tuner」によるテキスト蓄積の分析画面
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2024年度 未踏IT人材発掘育成事業 成果報告会(MITOU2024 Demo Day)動画
PMの評価
高橋直希氏は、ニューラル日本語入力システムの核心部分となる画面情報取得から個人最適化モデルの構築まで、極めて高度な技術的課題を解決し、プロジェクトの成功に決定的な貢献をした点が特に秀でている。macOSのアクセシビリティAPIという情報の乏しい先端領域において独自の研究と実装を行い、高精度なテキスト収集・管理機能を実現した技術力は卓越している。MinHashを用いた近似重複除去アルゴリズムの実装や、Marisa-Trieを活用した効率的な5-gram言語モデルの構築など、大規模データ処理からモデル実装まで複数の専門領域で革新的な手法を開発した。これらの技術は既存研究にない独自の発展を遂げ、システム全体の中核を形成している。また、変換候補ウィンドウのUIデザインと実装においては、macOSネイティブの体験に近い高品質なインタフェースを実現し、ユーザビリティの観点でも卓越した成果を示した。複数の技術的難題を独自の手法で解決し、プロジェクト全体の革新性を支えた点はスーパークリエータとしての資質を明確に示している。
クリエータからひとこと

「Zenzai」についての共著論文が3月の言語処理学会で若手奨励賞を受賞いたしました。現在は、「Tuner」の正式リリースに向けた開発に注力しつつ、共同創業した会社ではカスタマーサクセスマネージャーとして貢献しています。また、大学では研究室に配属され、卒業に向けて研究にも取り組んでいます。最近は個人で開発したiOSアプリを複数リリースするなど個人での開発も精力的に行っています。