2024年度未踏IT人材発掘・育成事業「スーパークリエータ」

SUPER CREATOR

スーパークリエータ

後藤 汰誓 ごとう たいせい

所属:九州大学 大学院芸術工学府 芸術工学専攻音響設計コース

  • 略歴

    2002年10月 熊本県生まれ
    2023年3月 熊本高等専門学校 制御情報システム工学科 卒業
    2025年3月 九州大学 芸術工学部 芸術工学科 音響設計コース 卒業
    2025年4月 九州大学 大学院芸術工学府 芸術工学専攻 音響設計コース 入学

  • 受賞歴

    2025年3月 情報処理学会 第142回音楽情報科学研究発表会 学生奨励賞(Best New Direction部門)

  • 担当プロジェクトマネージャー

    稲見 昌彦

後藤 汰誓

開発テーマ名

ユーザとモノのネットワーク体験を創作するためのARシステム

概要

「Monokko」は、日常生活のモノをエージェント化し、ユーザーとモノの間に愛着を育む関係性を構築するARシステムである。人間の生活空間には感情や記憶と結びつく多様なモノが存在しており、これらを単なる道具ではなく、「同居するエージェント」として捉え直す試みである。Apple Vision Proなどの高性能XRデバイスの登場により、物理的なハードウェアに依存せず、現実空間のモノをデジタルに拡張してエージェント化するアプローチが現実味を帯びている。
このシステムでは、モノと日常の中で自然に対話し、愛着を育めるインタラクションを実現する。モノに一切の加工をせずエージェント化できる点が大きな特徴であり、視覚呈示とチャットボットによる会話により、自然にモノへの愛着が促進される。
また、システムの世界観を深めるための「キューブン」という専用デバイスも開発された。箱状のキャラクターとして設計されたこのデバイスは、ユーザーのタッチに反応して内部プログラムが起動し、音声合成で呼びかける機能を持ち、会話はバックエンドと共有されてエピソードとして蓄積され、家庭内に社会的なシステムを形成する。

「Monokko」コンセプトアート

図1: 「Monokko」コンセプトアート

「キューブン」使用の様子

図2: 「キューブン」使用の様子

PMの評価

本プロジェクトでは、バーチャルエージェント「Monokko」とそれを現実世界と繋ぐデバイス「キューブン」を含む一連のシステム開発を行った。後藤氏はプロジェクト全体の進行管理と方向性の統括を担い、「モノに宿るエージェント」というコンセプト構築から、ユーザがモノッコに自然に愛着を形成できる体験デザイン、専用デバイス「キューブン」の設計・実装、さらにはデモや展示イベントの企画・開催まで、多岐にわたる役割を果たした。
後藤氏の最も優れた点は、技術的な実装能力と創造的なビジョンの双方を高いレベルで兼ね備え、それらを実際のプロダクトとして具現化する力である。プロジェクト全体をリードし、他のメンバーの技術的検証を有機的に連携させる過程で、「なぜこの技術を使うのか?」を常に問い続け、コンセプトと体験の両面から最適解を追求する姿勢は、真のクリエータとしての資質を示している。
以上の理由から、後藤氏は「スーパークリエータ」としての基準を十分に満たしていると判断する。

クリエータからひとこと

後藤 汰誓

現在「Monokko」についての論文をまとめるため作業を進めています。これは「Monokkoとは何なのか?」ということを、より学術的・概念的な目線から説明し、AIエージェントを生活に取り入れるためのデザイン実践として位置付けるためです。
これからも、Monokkoに限らず、研究・作品制作、そして社会応用といった実践を通じて人間とテクノロジーの関係性について考えていきます。

トップへ戻る