2024年度未踏IT人材発掘・育成事業「スーパークリエータ」
SUPER CREATOR

須賀 幹太 すが かんた
所属:株式会社メルカリ
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略歴
2018年3月 東京学芸大学附属高校 卒業
2019年4月 早稲田大学 先進理工学部 入学
2023年3月 早稲田大学 先進理工学部 卒業
2023年4月 早稲田大学 大学院先進理工学研究科 入学
2025年3月 早稲田大学 大学院 卒業
2025年4月 株式会社メルカリ 入社 -
受賞歴
2020年11月 iGEM 2020 Grand Jamboree Gold Medal.
2022年11月 iGEM 2022 Grand Jamboree Gold Medal.
2023年3月 早稲田学生文化賞
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担当プロジェクトマネージャー
五十嵐 悠紀

開発テーマ名
人工遺伝子回路設計のための統合開発環境
概要
人工遺伝子回路の回路設計からDNA配列生成までを一貫して行える世界初の統合開発環境である「Synergetica」を開発した。従来では人工遺伝子回路を設計する際に、手書きベースで回路を思案し、複数の統一されていないツールを横断してシミュレーション等をする必要があった。しかし本ツールを使うことで、すべての工程を1つのツールで完結可能になり開発効率が格段に向上した。また、SynergeticaはUI/UXに非常にこだわっており、GUIベースの直感的な方法とDSLを用いたプログラミング的な方法の2種類で遺伝子回路を構築することができる。これによってバイオロジーに詳しくない人々でも人工遺伝子回路を構築しその挙動を即座に確認することができるようになった。Synergeticaを通じて研究の効率化だけでなく、人工遺伝子回路 -ひいては合成生物学が人々にとってより身近になり、人工生命システム開発の民主化と新規産業創出を加速することを期待している。
今後は、構築された人工遺伝子回路を生物に導入した時の実験結果を元に、シミュレーションを性能改善できるような機能追加を進める予定である。

図1: Synergetica: A modern, end-to-end genetic circuit design desktop app
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2024年度 未踏IT人材発掘育成事業 成果報告会(MITOU2024 Demo Day)動画
PMの評価
人工遺伝子回路の設計・シミュレーションを含む全工程を扱える統合開発環境(IDE)「Synergetica」を開発した。情報学と生物工学の両方を理解し、それらを統合する役割を担うことで、プロジェクトの円滑な進行に貢献した。技術的な観点だけでなく、チーム内の合意形成や意思決定にも積極的に関与し、全体の調整力を発揮した。特に、回路設計GUIでデザインされた任意の回路に対して、動的に微分方程式を立式する実装は、高度な専門知識と独自のスキルを活かして遂行し、プロジェクトに不可欠な成果を生み出した。また、シミュレータのロジック構築や各実装のプロトタイプ開発を担当し、システムの方向性を示したことも、彼の大きな貢献の一つである。
プロジェクト全体を俯瞰する視点を持ち、チームの調整役としても活躍した。ユーザインタビューを実施し、チームとの議論を重ねながら開発項目を取捨選択するなど、技術とマネジメントの両面で優れた能力を発揮した。最終的なコードとして残った部分は少なかったものの、各領域での試作・検証を積極的に行い、開発の基盤を築いた点を評価する。今後の人工遺伝子回路設計の現場を大きく変える可能性を見せることができたとして、非常に高いその企画力、プログラミング能力、プロジェクト管理能力、プレゼンテーション能力が非常に高い能力をもつ者としてスーパークリエータとして認めるに値する。
クリエータからひとこと

公開した「Synergetica」がGitHubで100以上のスターを獲得し、世界中の人々から多くの関心をいただいていることを嬉しく思います。今後はSynergeticaがより生物実験の現場と接続しやすくなるような改善を考えていきたいです。個人としては一旦bioengineeringの最前線から離れ、一般ドメインのMachine Learningエンジニアとして経験を積むことにしました。ここで実世界におけるサービス開発のノウハウを広く吸収し、いずれはSynergeticaを初めとするbio-engineeringのソフトウェア/サービス開発に還元したいと考えています。