2024年度未踏IT人材発掘・育成事業「スーパークリエータ」
SUPER CREATOR

奥田 宗太 おくだ そうた
所属:順天堂大学 大学院医学研究科 医学専攻生化学・生体システム医科学 博士課程
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略歴
2000年9月 東京都生まれ
2019年 早稲田大学本庄高等学院 卒業
2019年 早稲田大学 先進理工学部 電気・情報生命工学科 入学
2023年 早稲田大学 先進理工学部 電気・情報生命工学科 卒業
2023年 早稲田大学 大学院先進理工学研究科 電気・情報生命専攻 入学
2025年 早稲田大学 大学院先進理工学研究科 電気・情報生命専攻 修士課程 (理学) 修了
2025年 順天堂大学 大学院医学研究科 医学専攻 生化学・生体システム医科学 博士課程 入学 -
受賞歴
2022年3月 情報・通信研究機構(NICT) SecHack365 2021 優秀修了
2022年11月 iGEM Grand Jamboree 2022 Waseda_Tokyo Team Gold Medal、Best Foundational Advance Project Nominated 他
2024年11月 iGEM Grand Jamboree 2024 Waseda_Tokyo Team (Advisorとして参加) Gold Medal、Top 10 Project、Best Bioremediation Project 他
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担当プロジェクトマネージャー
五十嵐 悠紀

開発テーマ名
人工遺伝子回路設計のための統合開発環境
概要
人工遺伝子回路とは、デザインした遺伝子発現の相互作用を表現するために設計されたDNAのことである。この設計されたDNAを大腸菌など宿主の細胞に挿入すると、その宿主が元々持っている機能の改変や新しい機能の追加などを、ソフトウェアにパッチを当てるように行える。例えば、論理ゲートや振動回路などが基本的な計算回路の実装や、生命体の機能を流用した、化学シグナルに対して直接応答するセンサなどを開発することもできる。これらを自在に設計できるようになることは、化学システムである我々生物や世界と直接相互作用する計算機を作れることを意味する。
「Synergetica」は誰でも、簡単に、人工遺伝子回路を設計する統合開発環境である。「Synergetica」は(1)GUI/DSLによる回路設計 (2)回路シミュレータ (3)配列ジェネレータを搭載し、それらがスムーズに連携する。ユーザーは人工遺伝子回路の基本的な構成要素である遺伝子パーツを並べるだけで、その回路がどのような挙動を示すか、どのような配列であるかを瞬時に確認できる。また、パーツ間の相互作用やその強度の変更にシームレスに応答するシミュレータによって、探索的に回路をいじくりながら、今まで未発見だった動作をする回路を発見できるかもしれない。人工遺伝子回路設計に必要なツールを全部詰め込んだSynergeticaは、今までにない快適な人工遺伝子回路設計体験を提供する。

図1: 「Synergetica」のメイン画面

図2: 生成配列出力画面
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2024年度 未踏IT人材発掘育成事業 成果報告会(MITOU2024 Demo Day)動画
PMの評価
人工遺伝子回路の設計・シミュレーションを含む全工程を扱える統合開発環境(IDE)「Synergetica」を開発した。プロジェクト全体の遂行に加え、システムの機能要件の策定、文献調査、ユーザインタビューなどを担当した。常に全体像を把握しながら進行管理を行い、プロジェクトを成功に導き、これまで世の中になかった、人工遺伝子回路専用のIDE環境を世の中に誕生させることができた。本プロジェクトを通じて、「これまで世の中にないものを生み出し、先駆的なことを成し遂げたい」という強い意思が常に感じられた。プロジェクト管理の能力を発揮しつつ、開発面での役割に悩む場面もあったが、チームメンバーへの尊敬と期待を持ち続けながら、自分にできることを模索し、最後までプロジェクトを前進させた。自分たちのチームだからこそ、このプロジェクトを成功させるのだという強い思いでチームを牽引し、その推進力とリーダーシップを高く評価する。今後の人工遺伝子回路設計の現場を大きく変える可能性を見せることができたとして、非常にその高い企画力、プロジェクト管理能力、プレゼンテーション能力が非常に高い能力をもつ者としてスーパークリエータとして認めるに値する。
クリエータからひとこと

今後は「Synergetica」に精密な数理シミュレータ、高品質な配列設計モデルを搭載するための生物実験を伴う基礎工学研究を進めていきます。外部環境(例えば栄養や酸素の濃度)、内部環境(例えば、転写翻訳リソースの量)、ゆらぎを加味した人工遺伝子回路の動作シミュレータや、高品質なRBS配列設計モデルの開発は研究途上の分野です。これらはハイスループットな生物実験とその評価系の構築によって得られる大量のデータを集めることによって高精細なものになります。これらの積層の上で、最終的に人工遺伝子回路配列と生命体の挙動を精密に紐づけることができれば、計算機の中で人工遺伝子回路の進化などを観察できるようになるかもしれません。楽しみです。