(旧)オープンソフトウェア・センター2007年度「自治体等におけるオープンソースソフトウェア活用に向けての導入実証」成果

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2007年度「自治体等におけるオープンソースソフトウェア活用に向けての導入実証」成果

実証実験の目的

 IPAは、2004年度は学校教育現場において、2005年度は自治体においてOSSデスクトップの導入実証を実施し、2006年度にはデスクトップだけでは無くサーバを含む業務システムでのオープンな標準の活用に向けた導入実証を実施し、普及を促進するために解決すべき課題を抽出してきました。その結果、学校教育現場や自治体においてOSSは一定の可用性を持ち、コストの面でも既存のIT環境に比べて優位な点を持つことを実証しました。
 しかし、自治体のIT基盤全体にわたって一層のOSS活用を達成するためには、次のような課題解決に向けた取り組みが必要であることが明らかになりました。

  1. 基幹業務システムへのOSS適用検証
  2. システム間相互連携検証。
  3. 文字コード、セキュリティの扱いの検証
  4. レガシーシステム移行検証

 そこで、2007年度は上記課題解決に向けた取り組みとして、適用範囲を基幹業務分野まで広げ、より広範囲なIT環境へのオープンな標準の活用推進を目指しました。事業目的としては、デスクトップを含む情報システム全体でのTCO削減を図ることを基本的な狙いとし、同時に自治体共通基盤の適用推進、情報交換の標準化、システム間相互連携の実現といった自治体業務システム改善の流れの中でのOSSの適用検証を中心に実証実験を実施しました。

概要

今回実施した、5件の実証内容は以下の通りです。

  1. 秋田県「OSS活用による統合運用基盤構築に向けた実証実験」
      秋田県庁では、平成17年度より継続して「効率的なIT化の推進」を実施しています。こうした背景の中で、施策の一つとして構築を検討しているシステムの「全体共通基盤」の1機能である「システム監視の統合」に着目し、OSSのシステム監視ツールである「Hinemos」を使用した「共通監視基盤」システムを構築しました。さらに、全システムの統合監視実現に向けて、現状ではシステムごとにベンダー固有の監視ツールで運用監視している監視項目の中から共通の監視項目を抽出し、全体で約150あるシステムの中の100システムに対してこの共通監視項目による統合監視の実証を行いました。その結果、「死活」、「ログ」、「性能」といった監視項目については統合監視が可能であり、かつ、運用コストも現状と比較して大幅に削減出来る可能性が実証されました。
  2. 新潟県上越市「OSSによる統合DBを介した基幹システムと業務システム連携の実証」
     上越市役所では、自治体情報システム共通の課題である(1)コスト増大、(2)データ活用が困難、(3)運用負荷の増大の解決に向けて、地域内外情報システムを連携させるための共通基盤として総務省が推進している「地域情報プラットフォーム」を適用し、実際の業務システムとの連携実証を通じてその適用効果を実証しました。具体的には、「地域情報プラットフォーム」のベースとなっている共通基盤と統合DBで使用されている商用ソフトウェアをOSSに置き換えて再構築し、この共通基盤の上で統合DBによるデータ連携を用いて業務システム(学童保育支援システム)を運用し、連携実証を行いました。同時に、構築したシステム設計書、環境設定資料などのドキュメント整備と開示、ならびに実装したソフトウェアのライセンスの明確化及び明示を実施しました。これらの実証結果は、「地域情報プラットフォーム」適用を検討する上で、他の自治体やそのシステムをサポートするベンダーには極めて有用なものになると見込まれています。
  3. 島根県松江市「Rubyの普及を目指した自治体基幹業務システム構築」
      Rubyは、世界的に利用が拡大されつつある国産OSSプログラミング言語です。このRubyの開発を始めたのが松江市在住の技術者であることから、松江市では産業振興政策として「Ruby City MATSUEプロジェクト」を立ち上げRubyの普及を推進しています。しかし、現状Rubyが最も利用されているのは情報系フロント業務が大半であり、基幹系業務システムに対する適用事例が少ない上に基幹系業務システム特有の処理(帳票出力処理、バッチ処理等)への適用時の安全性、処理性能等の確認が不十分と言われています。また、Rubyを熟知した技術者もまだ少なく、自治体システム構築技術者に多いCOBOL技術者にとって、Rubyでのシステム開発はハードルの高いものとなっています。
     そこで、松江市が平成20年度から運用を予定している「高額合算システム(高額医療・高額介護合算制度にかかわる事務処理)」をRuby及びOSS技術によって構築し、その開発を通じて前述の課題解決に向けた各種検証を行いました。実証検証時点では高額医療・高額介護合算制度の細目が未確定であったため、本運用時手戻り発生のリスクがありましたが、Rubyによる開発の標準化、コーディング規約の作成等により、メンテナンス性を考慮したシステムが作成出来ました。大量データのバッチ処理や帳票印刷機能などRubyの基盤技術に無い機能も、個別にライブラリとして開発、もしくは既存OSSを利用するなどの工夫によって開発を行いました。また、COBOL技術者でもRubyでのシステム開発を行えるように人材教育マニュアルも作成しています。結果として、Rubyでも堅牢な基幹業務システム開発が可能との評価が得られました。
  4. 宮崎県延岡市「入札管理業務のOSS導入実証実験」
      延岡市役所では、COBOLで開発された入札業務管理システムが古く、業務の合理化・効率化が必要になっていました。また、既にOSSのコンテンツ・マネジメントシステム(CMS)で市のホームページへの各種情報掲載システムを運用していましたが、各課独自に所有する業務システムとのシステム連携が無いため、業務効率が悪いという課題も抱えていました。
      そこで、従来の入札業務管理システムを新たにOSSで開発すると同時に、CMSと連携して入札結果を迅速にホームページに掲載することで、レガシーシステムの置き換えと業務連携が同時に可能となり、業務の合理化・効率化に寄与すると考え、OSSを利用してCMSと入札業務管理のシステム連携を実施しました。その結果、全体的な業務効率が向上し、さらに入札業務管理システムから入札結果をCMSに取り込む機能を開発したことにより、市の業務効率化と共にWebページでのタイムリーな情報公開が可能となりました。
  5. 静岡済生会総合病院「病診連携及び医療情報標準化の推進を目的としたOSS利用によるASP型電子カルテシステム」
      静岡県では、平成16年度に「静岡県版電子カルテシステム」を開発し、さらに医療情報標準化に向けた「厚生労働省電子的診療情報交換推進事業(SS-MIX)」を推進中です。しかしながら、情報システムが大手ITベンダー製で情報形式も公開されていないことなどから、総合病院と地域診療所間の情報交換を行いたくても現状では実現が難しいといった課題がありました。
      このような課題を解決するために、静岡県静岡済生会総合病院では、電子カルテシステムの情報形式に前述のSS-MIXをいう標準の情報形式を適用し、病院・診療所間のシステムを連携させることで双方での同一電子カルテ参照を可能とし、なおかつシステムはOSSで開発する、という実証検証を行いました。また、病院・診療所間のネットワーク構築、アプリ等インストール、病診連携標準化データのファイル共有、プリンタの設定等を手順化し、共通のドキュメントにしました。その結果、ASP型電子カルテシステムの診療情報交換機能は概ね業務に適用出来るレベルのものが完成しました。また、インストール作業等手順書のドキュメント化は、OSS作業経験の少ない人への支援情報として有用であり、第三者(中小ベンダー)よる他の事業体への普及やシステムを継続的に進化させるための有用な情報となると思われます。