2003年 7月 3日
独立行政法人 情報処理推進機構
セキュリティセンター(IPA/ISEC)
多機能なウイルスが増加!!
情報処理推進機構セキュリティセンター(IPA/ISEC)は、2003年6月及び2003年上半期のコンピュータウイルスの届出状況をまとめた。
2003年上半期の届出件数は7,366件となり、前年同期11,567件から約36%減少した。
届出件数の上位は、依然としてメール機能を悪用するウイルスが占めており、感染するとバックドア(侵入口)を仕掛けたり、P2P※で感染を拡大するなどの複数の機能を持ったウイルスが増加している傾向が伺える。
なお、上半期にIPAに届出のあった新種ウイルス13種類の内、W32/SobigやW32/Fizzerなど、セキュリティホールを悪用していない(添付ファイルをユーザが開かなければ感染しない)ウイルスが9種類と過半数を占め、件数も増えているので、「添付ファイルは安易に開かない」というウイルス対策の基本を改めて徹底して頂きたい。
上半期の届出上位ウイルス(すべてメール機能悪用ウイルス) *亜種の届出を含む
届出件数 | 初届出年月 | ウイルスの特徴 | |
---|---|---|---|
W32/Klez | 2,630件 | 2001.11 | 情報漏洩(データファイル送信) |
W32/Sobig | 719件 | 2003. 1 | 差出人アドレス詐称 |
W32/Bugbear | 664件 | 2002.10 | バックドア(侵入口)作成 |
&W32/Fizzer | 543件 | 2003. 5 | バックドア(侵入口)作成、P2Pで拡大 |
VBS/Redlof | 467件 | 2002. 8 | 本文を見ただけで感染 |
※サーバー等を介さずに、パソコン等の端末同士で直接データのやりとりを行うシステムのこと。
上半期の届出状況の詳細については「2003年上半期ウイルス届出状況」を参照されたい。
6月の届出件数は1,401件と5月の1,458件より若干の減少となった。
6月の届出上位4種は、いずれも差出人アドレスを詐称するウイルスであった。これらのウイルスは、本来の送信者を特定するのが困難であり、連絡が取れないことから蔓延する可能性が高いので、継続して注意が必要である。
届出上位のウイルスには、添付ファイルを開かなければ感染しないウイルスがある。例えセキュリティホールを悪用したウイルスであろうと、修正プログラムさえ適用していれば自動的にファイルを実行されることはなく、感染被害に遭うことはない。
そこで、下記の点だけはウイルス対策の基本として徹底して頂きたい。
ウイルスの感染経路の9割以上はメールである。添付ファイルがある場合は、安易にクリックすることなく、ウイルス検出データファイルを最新版に更新したワクチンソフトで検査しよう。
ワクチンソフトには、自動的にウイルス検出データファイルを更新する設定やリアルタイムでファイルを検査する設定などが用意されているので、ぜひ活用しよう。
セキュリティホール(ソフトウェアの欠陥)のあるブラウザやメールソフトを使用していると、そこを悪用されてウイルスに感染してしまうケースがある。このような被害を防ぐには、欠陥を修正しておけばよい。ベンダーのWebサイトなどの情報を定期的に確認し、最新の修正プログラムを適用しておこう。
(Windows/DOS ウイルス1,281件、マクロウイルス及びスクリプトウイルス120件、Macintosh及びUNIXウイルスは0件。)
(*) 印は今月の新種ウイルスを示す。
Windows、DOSウイルス | 届出件数 | マクロウイルス | 届出件数 |
---|---|---|---|
W32/Klez | 425 | XM/Laroux | 14 |
W32/Bugbear | 298 | W97M/X97M/P97M/Tristate | 4 |
W32/Fizzer | 233 | X97M/Divi | 2 |
W32/Sobig | 181 | XM/VCX.A | 1 |
W32/Yaha | 50 | WM/Concept | 1 |
W32/Lovgate | 16 | WM/Cap | 1 |
W32/Hybris | 12 | W97M/Ethan | 1 |
W32/Nimda | 11 | ||
W32/Badtrans | 9 | ||
W32/Magistr | 7 | ||
W32/Frethem | 5 | スクリプトウイルス | 届出件数 |
W32/Gibe | 4 | VBS/Redlof | 59 |
W32/CIH | 3 | Wscript/Fortnight | 28 |
W32/Ganda | 3 | VBS/LOVELETTER | 4 |
W32/Sircam | 3 | VBS/Haptime | 3 |
W32/Opaserv | 3 | VBS/Netlog | 2 |
WYX | 2 | ||
W32/Aliz | 2 | ||
W32/Ska | 2 | ||
W32/Inor | 2 | ||
W32/Funlove | 2 | ||
W32/Valla (*) | 2 | ||
W32/MTX | 2 | ||
W32/Spaces | 1 | ||
W32/CodeRed | 1 | ||
W32/Mofei (*) | 1 | ||
W32/Goner | 1 |
備考:件数には亜種の届出を含む
記号 | 対象ウイルス |
---|---|
WM | MSword95(WordMacroの略) |
W97M | MSword97(Word97Macroの略) |
XM、XF | MSexcel95、97(ExcelMacro、ExcelFormulaの略) |
X97M | MSexcel97(Excel97Macro) |
W97M/X97M/P97M | MSword97、MSexcel97、MSpowerpoint97(Word97Macro、Excel97Macro、PowerPoint97Macroの略) |
W32 | Windows32ビット環境下で動作 |
VBS | VisualBasicScriptで記述 |
Wscript | WindowsScriptingHost環境下で動作(VBSを除く) |
Solaris | Solaris環境下で動作 |
FreeBSD | FreeBSD環境下で動作 |
Linux | Linux環境下で動作 |
届出者 | 届出件数 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
2003/6 | 2003年合計 | 2002年合計 | ||||
一般法人ユーザ | 1,194 | 85.2% | 6,363 | 86.4% | 15,313 | 75.2% |
教育・研究機関 | 124 | 8.9% | 506 | 6.9% | 1,914 | 9.4% |
個人ユーザ | 83 | 5.9% | 497 | 6.7% | 3,125 | 15.3% |
地域 | 届出件数 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
2003/6 | 2003年合計 | 2002年合計 | ||||
北海道地方 | 1 | 0.1% | 18 | 0.2% | 311 | 1.5% |
東北地方 | 7 | 0.5% | 133 | 1.8% | 534 | 2.6% |
関東地方 | 922 | 65.8% | 4,981 | 67.6% | 12,986 | 63.8% |
中部地方 | 184 | 13.1% | 755 | 10.2% | 1,894 | 9.3% |
近畿地方 | 246 | 17.6% | 1,148 | 15.6% | 3,254 | 16.0% |
中国地方 | 22 | 1.6% | 123 | 1.7% | 365 | 1.8% |
四国地方 | 3 | 0.2% | 27 | 0.4% | 151 | 0.7% |
九州地方 | 16 | 1.1% | 181 | 2.5% | 857 | 4.2% |
感染経路 | 届出件数 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
2003/6 | 2003年合計 | 2002年合計 | ||||
メール | 1,283 | 91.6% | 5,456 | 74.1% | 17,107 | 84.1% |
海外からのメール | 58 | 4.1% | 1,465 | 19.9% | 2,660 | 13.0% |
ダウンロード(※) | 13 | 0.9% | 96 | 1.3% | 121 | 0.6% |
外部からの媒体 | 22 | 1.6% | 117 | 1.6% | 119 | 0.6% |
海外からの媒体 | 0 | 0% | 1 | 0% | 4 | 0% |
不明・その他 | 25 | 1.8% | 231 | 3.1% | 341 | 1.7% |
(※)ホームページからの感染を含む
感染台数 | 届出件数 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
2003/6 | 2003年合計 | 2002年合計 | ||||
0台 | 1,344 | 95.9% | 6,983 | 94.8% | 18,633 | 91.5% |
1台 | 31 | 2.2% | 315 | 4.3% | 1,364 | 6.7% |
2台以上 5台未満 | 18 | 1.3% | 49 | 0.7% | 206 | 1.0% |
5台以上 10台未満 | 4 | 0.3% | 10 | 0.1% | 59 | 0.3% |
10台以上 20台未満 | 2 | 0.1% | 4 | 0.1% | 60 | 0.3% |
20台以上 50台未満 | 1 | 0.1% | 3 | 0% | 23 | 0.1% |
50台以上 | 1 | 0.1% | 2 | 0% | 7 | 0% |
ウイルスの被害の拡大を防止する意味から、今回は、IPA/ISEC に届出されたウイルスの中で、7月4日〜8月31日に発病する可能性がある主なウイルスを下記に掲げたので注意されたい。(参考:特定日発病ウイルス[ウイルスカレンダー] )
W32/Klez | 7月6日、8月6日 (毎月6日に発病) |
---|---|
VBS/Haptime | 7月6日、8月5日 (「月」と「日」の合計が13の時に発病) |
コンピュータウイルスに関する届出制度は、経済産業省のコンピュータウイルス対策基準に基づき、平成2年4月にスタートした制度であって、コンピュータウイルスを発見したものは被害の拡大と再発を防ぐために必要な情報をIPAに届け出ることとされている。
IPAでは、個別に届出者への対応を行っているが、同時に受理した届出等を基に、コンピュータウイルス対策を検討している。また受理した届出は、届出者のプライバシーを侵害することがないように配慮した上で、被害等の状況を分析し、検討結果を定期的に公表している。
TEL:03-5978-7508 FAX:03-5978-7518
E-mail:
相談電話:03-5978-7509 URL:http://www.ipa.go.jp/security/