ネットワーク WG Request for Comments: 1851 分類: 実験的 |
P. Karn Qualcomm P. Metzger Piermont W. Simpson Daydreamer 1995年 9月 |
ESP トリプル DES 変換
(The ESP Triple DES Transform)
このメモの位置付け
概要
目次
この文書では、読者が関連文書の "Security Architecture for the
Internet Protocol" [RFC-1825]
を深く理解していることを前提としている。その文書では、IP
のためのセキュリティ方式の全体について定義されており、この仕様の重要な背景について記述されている。
各データグラムには、それぞれの固有の IV が含まれる。各データグラムに IV
を含むことで、他のデータグラムが落ちたり、配送中に再送要求されたときでも、受け取られたデータグラムの復号を確実にすることができる。
IV 値の選択法は実装に依存する。
その他の実装では、通常、擬似乱数発生器を通すことによって、予測不可能な結果を示すようにしている。しかし、セッション鍵が有効である間は、乱数発生の周期を、反復を防ぐことができるほど十分に長くとるように気を付けるべきある。
入力と出力の両方が同じバイト数になるので余分な場所を必要とせず、暗号化と復号を容易に行うことができる。
受信時に、復号されるべきデータの長さが 8
バイトの整数倍でないならば、 [RFC-1825]
にて記述されているように、エラーが示される。
+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+ | セキュリティ・パラメータ・インデックス (SPI) | +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+ | | ~ 初期ベクトル (IV) ~ | | +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+ | | ~ ペイロードデータ ~ | | +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+ ... パディング | パディング長 | ペイロード番号| +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
この長さは、32 ビットの倍数でなければならない(MUST)。32 ビットと 64
ビットの長さは必ずサポートされなければならない。その他の長さの使用については、この仕様の範囲外である。この長さは、鍵管理の仕組みによって示される。
長さが 32 ビットの場合は、その 32 ビットの値に 32
ビット値のビット補完がされ(連結され)、64 ビットの IV
が形成される。32 ビットと 64
ビットの両方の処理では、ペイロードデータを整列させることができるので、これが最も一般的なフィールド長である。
仕様に従うすべての実装は、64
ビットのフィールド長も正確に処理しなければならない(MUST)。これにより、既存のハードウェア実装との完全な互換性を保つことができる。
暗号化の前と復号の後では、このフィールドは、ペイロード番号フィールドで指定された
IP プロトコル/ペイロードヘッダで始まる。IP-in-IP カプセル化(ペイロード番号 4)の場合には、これは別の IP
ヘッダとなることに注意すること。
暗号化の前に、この部分はパディング長フィールドとペイロード番号フィールドが
8
バイトの境界で整列するように、ここでは指定されない実装に依存した(むしろ乱数的な)値で埋められる。
復号の後は、これは無視されなければならない(MUST)。
このフィールドは、不透明である。すなわち、値は暗号化の前に設定され、復号の後にのみ調べられる。
このフィールドは、不透明である。
すなわち、値は暗号化の前に設定され、復号の後にのみ調べられる。
3 つの鍵(k1、k2、k3)すべてが同じ場合は、3DES は DES-CBC
と同等であることに注意すること。この性質は、3DES ハードウェアの実装を修正することなく、DES
モードで動作させることを可能とする。
トリプル DES についてのさらなる説明や実装情報に関しては、[Schneier94] を参照のこと。
ここで付加されたパディングのバイト数を含むパディング長フィールドを付加する。
ペイロードの始まりのプロトコルヘッダを示す IP プロトコル/ペイロード値を含むペイロード番号フィールドを付加する。
SPI によって示された長さの初期ベクトル(IV)を用意する。
ペイロードをトリプル DES(EDE
モード)で暗号化すると、同じ長さの暗号文が生成される。
オクテットはネットワーク順序(最上位オクテット(most
signifficant octet)が最初)[RFC-1700] で DES
ブロックにマッピングされる。ペイロードのオクテット 0(モジュロ 8)は 64ビットの DES
入力ブロックの 1-8 ビットに対応し、オクテット 7(モジュロ 8)は
DES 入力ブロックの 57-64 ビットに対応する。
示された SPI、IV、ペイロードを用いて、送信先に応じた適切な IP
データグラムを組み立てる。
カプセル化された IP ヘッダのトータル/ペイロード長フィールドには、暗号化されたデータ、SPI、IV、パディング、パディング長、そしてペイロード番号の各フィールドのバイト長の合計が反映される。
取り決められた IV の形式によって、IV
フィールドの長さが決定される。このフィールドは削除され、適切な 64 ビットの IV
値が形成される。
ペイロードの暗号化部分がトリプル DES(DED
モード)を使用して復号される。
ペイロード番号フィールドが削除され、調べられる。そのフィールドが認識されない場合には、ペイロードは適切な ICMP
メッセージをもって処分される。
パディング長フィールドが削除され、調べられる。指定された長さのパディングが、復号されたペイロードの最後から削除され、IP
トータル/ペイロード長フィールドがそれに従って調整される。
IP
ヘッダと復号されたペイロードの残った部分が、ペイロード番号フィールドによって指定されたプロトコル受信ルーチンに渡される。
その他の考慮事項として、アプリケーションは、たとえそれを選択する確率が低かったとしても
[Schneier94, p 223]、3 回の DES
の処理のすべてにおいて弱い鍵を選択しないように注意することが良い。
もともと、DES はグループであると思われていた。しかし、それが違うことが示された [CW92]。DES は、グループではないため、DES
を複数回処理した場合の構成は、単純に DES
を異なる鍵で使用したものとは一致しない。
独立した鍵を使用するトリプル DES
は、単純に予想されるように、3
倍の鍵長の暗号システムと同様に、総当たり攻撃による破壊を難しくするものではない。
二重暗号化にかかると単純に予想される時間内に三重暗号化を総当たりで破ることができるかは、空間と時間のトレードオフであるということが示されてきた。
しかし、2DES は、中間一致攻撃によって、DES
を破るのよりもさらに複雑なものを必要とせずに破ることが可能である
[ibid]。このため、独立した鍵を使用する 3DES
は、実際にはこのレベルのセキュリティを提供する必要がある。独立した鍵に対する現在知られている攻撃よりもいくらか高速な(16
倍)、2 つの独立した鍵を使用する 3DES への攻撃が、[OW91] にて紹介されている。
[Bell95]
に記述されているカットアンドペースト攻撃は、すべての暗号ブロック連鎖アルゴリズムの性質を不正に利用するものである。あるブロックが伝送中に破損した場合、復号の際に、それとそれに続くブロックの両方に対しては、復号の処理に誤りが発生するが、それに続くすべてのブロックは正しく復号される。攻撃者が同じ鍵に対して正当なアクセスができるならば、同じエンジンの他の利用者が以前に暗号化したデータを挿入したり、繰り返したりするために、この仕組みを利用することができ、平文が漏れることとなる。たいていの(ICMP、TCP、UDP)トランスポート・チェックサムは、この攻撃を検出することができるが、それ自身は暗号的な強度が考慮されていない。このような場合は、利用者別やコネクション別のインテグリティ・チェックが必要とされる
[RFC-1826]。
3 DES は、総当たり攻撃を受ける余地があまりないため、DES
より十分に強力であると広く信じられている。しかし、3DES
の実際の暗号解析に、総当たり法が利用される可能性は全くないということに気付くべきである。代わりに、差分解読法 [BS93]
または、線形解読法 [Matsui94]
の変形が利用される可能性がある。また、現在のコンピュータのスピードの向上を考えると、総当たり攻撃に対して永久に安全な暗号アルゴリズムはないということも覚えておくべきである。
すべての暗号システムに対して言えることであるが、これらのセキュリティが破られた場合のアプリケーションが持つ潜在的なリスクについての責任者は、暗号、特に暗号解析の開発に対して細心の注意を払うべきであり、3DES
が弱いと証明された場合には、他の変換に移行させるべきである。
コメントは ipsec@ans.net メーリングリストに提出して頂きたい。
[BS93] Biham, E., and Shamir, A., "Differential Cryptanalysis of the Data Encryption Standard", Berlin: Springer-Verlag, 1993年.
[CN94] Carroll, J.M., and Nudiati, S., "On Weak Keys and Weak Data: Foiling the Two Nemeses", Cryptologia, Vol. 18 No. 23 pp. 253-280, 1994年 7月.
[CW92] Campbell, K.W., and Wiener, M.J., "Proof that DES Is Not a Group", Advances in Cryptology -- Crypto '92 Proceedings, Berlin: Springer-Verlag, 1993年, pp 518-526.
[FIPS-46] US National Bureau of Standards, "Data Encryption
Standard",
Federal Information Processing Standard (FIPS) Publication 46,
1977年 1月.
[FIPS-46-1] US National Bureau of Standards, "Data
Encryption Standard",
Federal Information Processing Standard (FIPS) Publication
46-1, 1988年 1月.
[FIPS-74] US National Bureau of Standards, "Guidelines for
Implementing and Using the Data Encryption Standard",
Federal Information Processing Standard (FIPS) Publication 74, 1981年 4月.
[FIPS-81] US National Bureau of Standards, "DES Modes of
Operation",
Federal Information Processing Standard (FIPS) Publication 81,
1980.年 12月
[Matsui94] Matsui, M., "Linear Cryptanalysis method dor DES Cipher," Advances in Cryptology -- Eurocrypt '93 Proceedings, Berlin: Springer-Verlag, 1994年.
[MH81] Merle, R.C., and Hellman, M., "On the Security of Multiple Encryption", Communications of the ACM, v. 24 n. 7, 1981年, pp. 465-467.
[OW91] van Oorschot, P.C., and Weiner, M.J. "A Known-Plaintext Attack on Two-Key Triple Encryption", Advances in Cryptology -- Eurocrypt '90 Proceedings, Berlin: Springer-Verlag, 1991年, pp. 318-325.
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1995年.
[RFC-1700] Reynolds, J., and J. Postel, "Assigned
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10月.
[RFC-1825] Atkinson, R., "Security Architecture for the
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Research Laboratory, 1995年 7月.
[RFC-1826] Atkinson, R., "IP Authentication Header",
RFC-1826, Naval Research Laboratory,
1995年 7月.
[RFC-1827] Atkinson, R., "IP Encapsulating Security
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RFC-1827, Naval Research
Laboratory, 1995年 7月.
[Schneier94] Schneier, B., "Applied Cryptography", John Wiley & Sons, New York, NY, 1994年. ISBN 0-471-59756-2
[Tuchman79] Tuchman, W, "Hellman Presents No Shortcut Solutions to DES", IEEE Spectrum, v. 16 n. 7, 1979年 7月, pp. 40-41.
Phil Karn
Qualcomm, Inc.
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Perry Metzger
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Daydreamer
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