伝えよう、情報モラル

受賞作品発表

取り組み事例

“標語”は情報系の授業で、“ポスター”は課題として活用

神奈川県立神奈川総合産業高等学校(全日制) 神奈川県相模原市

様々な教科の授業で「IPA情報セキュリティコンクール」を活用している高校があります。神奈川県立神奈川総合産業高等学校では、情報系の授業の最後に、まとめとして標語を作り応募しています。また、編集技術の授業では、描画ソフトを使用した作画の課題としてポスターを制作しています。指導面、事務作業の両方で先生の負担が軽く、授業で使いやすいコンクールだ、との声が聞こえてきました。

様々な教科の授業でIPAコンクールを活用

佐藤 峻之 教諭、増山 一光 教諭、照内 康成 教諭、山本 泰三 教諭

左から
佐藤 峻之 教諭、増山 一光 教諭、
照内 康成 教諭、山本 泰三 教諭

 神奈川県立神奈川総合産業高等学校(全日制)では、様々な教科で「IPA情報セキュリティ標語・ポスター・4コマ漫画コンクール」(2014年度は、「第10回IPAひろげよう情報モラル・セキュリティコンクール2014」)を活用しています。2013年度は、「社会と情報」「プログラミング入門」「編集技術」などの授業で取り上げ、300件以上の標語と約60件のポスターを応募しました。
 同校では、生徒が提出する課題として強制的に取り組ませたり、コンクールの紹介に留めて、生徒が自発的に応募するように薦めたりと、取り組み方もさまざまでした。
 増山先生によると、「標語なら、僕にも・私にも作れると生徒が思うので授業を進めやすい。先生にとっても、指導や事務作業の負担感はありません」と言います。
 2012年度のコンクールに初参加した際、同校から入賞者が出ました。そのことを話すと、先輩が入賞できたのならと、作品づくりの意欲が増す生徒が多いそうです。

情報系の授業は、標語づくりでまとめる

 情報系の授業では、情報モラルやITセキュリティを取り上げます。一例としては、次のような流れで授業を進めます。Twitter、LINE、Facebookの3つの代表的なSNSを取り上げて、よい使い方と失敗事例を生徒に調べさせ、検討させます。班ごとのグループディスカッションを経て、全員の前で発表してもらいます。
 授業の最後は、IPAコンクールの標語づくりの時間にします。ここで、学んだばかりの情報モラルやITセキュリティのポイントを、生徒自身の言葉としてまとめてもらいます。
 増山先生は、「報道なども多く、話題には事欠かない分野なので、生徒にとって題材がないということはありません」と言います。生徒が標語を作ると、高校生ならではの感覚が表れる生き生きした言葉になるそうです。
 佐藤先生は、IPAが提供している中高生向けのITセキュリティ動画(http://www.ipa.go.jp/security/keihatsu/videos/20130329-3.html)を見せてから、標語づくりに取り掛かっています。この流れだと、生徒のアイデアが出やすいということです。「高校生が出演している動画なので切実に感じられて、自分の過去の失敗を思い出すきっかけになるのだろう」と話していました。

2013 年度入賞作品の一部  優秀賞 関根亜美さん

2013年度入賞作品の一部
優秀賞 関根亜美さん

イラストレーターの腕試しでポスター制作

 「編集技術」の授業では、Adobe社の描画ソフトIllustrator(イラストレーター)を使ってコンクールのポスターを描く授業を行っています。課題なので、生徒は必ず提出(応募)しなければなりません。
 この授業では、生徒は4月からイラストレーターを学んでいます。ある程度使い慣れてきた夏に、ポスター作りの授業2時限(1時限は90分)を行います。授業を担当する山本先生によると、IPAコンクールのポスターは、「短期間で作り、応募できるので、課題として取り組みやすい」そうです。
 山本先生は、セキュリティのマイナスイメージを取り除くことを重視しています。生徒が最初に出すアイデアの多くは「やっちゃダメ」というものです。もっと人の心に伝わる言葉や、より前向きになれる表現方法を生徒に求めると、深く考えたよいアイデアが出てくるようになると言います。キャッチフレーズは20個ぐらい考えさせました。

山本先生の授業で使っている「穴の開いた図」

山本先生の授業で使っている「穴の開いた図」

どのように伝わるか・伝えるかを考えさせる

 山本先生は、グラフィックデザインの観点では、目を引く作品や、キャッチコピーを見た人が「あっ」と思う作品を作るように生徒を指導しています。例えば、穴の開いた図を見せて、その部分にいろいろな言葉を入れ、作り手の意図を上手に伝える方法を考えさせています。「アイテムがあるらしいよ」、「危ないよ」などの言葉を入れた場合、どのように感じるかや、見た人との位置関係や距離関係を意識させるとのことでした。

 ITモラルの点では、書き込む側は冗談程度の軽い気持ちだとしても、相手は冗談として受け流すことはできないことがあります。このようなことに気付いて、画面の向こうを思いやり、相手の悲しみや喜びに配慮できる人になってほしいと山本先生は言います。

進め方

先生は結論付けなくてもよい

 佐藤先生は、IT機器やネットについて、「生徒の大多数が便利だと思っているが、危ない部分もあることを知らない生徒が半分ぐらいいる」と指摘します。授業でAndroidスマートフォンのセキュリティソフトについて聞いたところ、生徒30人のうち、インストールしていた生徒は5人だったそうです。
 照内先生は、生徒同士の議論が重要だと言います。班ごとにグループディスカッションを行い、そのまとめを発表してもらうと、結論に結びつくよい意見がいくつか出てきます。
 また、先生が結論を言うのではなく、「みんなどう思う?」と質問の形で生徒に投げ返すこともあるそうです。先生がまとめてしまうと、生徒は深く考えないためです。そこで、生徒に質問することで、生徒からの意見が出て、より深い考察につながるのです。
 具体的には、プライベートな写真をネットで意図的に広めたり、バイト先で撮った不適切な行為の写真をSNSに載せたりといった、近年ネットで起こったトラブルを授業で取り上げたそうです。

中学でITを使い始め、高校で利便性と危険性を体系化

 照内先生は、高校生のITリテラシーやセキュリティについて、「中学で使い始めて、ある程度の知識を持って高校に入ってきます。高校の情報系の授業は、散漫な知識を結びつけてまとめるようにしています」と言います。
 情報モラルとITセキュリティ教育を行うと、これらについての生徒の意識が向上するのを先生方は感じています。先生が対処にあたるような事故やトラブルの件数が減りつつあるようです。情報モラルを尊重して、ITセキュリティに敏感になることが、生徒達の生活に根付いてきているのでしょう。
 情報モラルやITセキュリティについて、高校で学ぶ入り口は情報系の授業です。しかし、他の教科の中でも話題は出てきます。IPAコンクールについて増山先生は、「情報系の授業に限らず、いろいろな授業の中で取り組めるので使い勝手がよい」と感じています。同校は、来年度もIPAコンクールを幅広く活用する予定です。

神奈川県立神奈川総合産業高等学校(全日制)

2005年に開校した総合産業科を設置した単位制の専門学科高校です。新たな産業の創出や科学技術の進展に、主体的に関わる人材の育成を目指しています。6系1分野から、興味のある科目を自由に選択して、幅広い分野を学べます。2009年からスーパーサイエンススクールの指定を受けています。
http://www.kanagawasogosangyo-h.pen-kanagawa.ed.jp/zennichi/

神奈川総合産業高等学校
(全日制)