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取り組み事例

標語コンクールをきっかけに、生徒が自らITセキュリティを学び出す

聖母被昇天学院中学校高等学校 大阪府箕面市

高校2年生の授業に、ITセキュリティの標語コンクールを活用している学校があります。先生によると、コンクールは生徒の授業へのモチベーション向上に適しているそうです。標語にまとめる作業を通じて、IT機器やネットの危険性や対処方法を調べ、周囲の人を啓発できるレベルまで、生徒が自らの力で到達すると言います。

どうしたら、賢くITを利用できるようになるか?

岡本弘之 教諭

岡本弘之 教諭
「情報科の授業アイデア」
http://www.okamon.jp

 聖母被昇天学院中学校高等学校の岡本弘之先生は、「○○してはいけません」と禁止事項を伝えるだけのITセキュリティ教育ではもったいないと考えています。トラブル回避のための「べからず教育」は、「マイナスをゼロにする」範囲にとどまってしまうからです。IT機器やネットサービスを賢く利用できれば、生徒は将来にわたって、より豊かな人生を送ることができます。「マイナスをプラスにする」ところまで持ち上げるITセキュリティ教育が、岡本先生の目指す目標なのです。
 こうした考え方を実践する授業として同高が採用したのが、「IPA情報セキュリティ標語・ポスター・4コマ漫画コンクール」(2014年度は、「IPAひろげよう情報モラル・セキュリティコンクール」)です。
 コンクールの中から標語部門を選んだのは、標語を作る過程において、短い言葉で伝える方法を学べ、みんなに呼びかけるという楽しみを生徒が得られるからです。

人気サイトを見せる具体的な授業が効果的

 ITセキュリティを教える授業はたいへんと、二の足を踏む先生も少なくありません。新しい問題点やネットサービスを理解するのは難しいとか、授業のための教材の準備に時間がかかるという声を聞くこともあります。
 IT機器やネットについては、生徒の方がよく知っている部分もあります。すでに、生徒間や子供同士で、トラブルを避けるためのマナーやノウハウが伝授されています。IT犯罪やトラブルの手口は進化し、使うITツール(サイト)も変化します。たとえば、いまは高校生にLINEの人気が高まっていますが、何年か前には存在もしませんでした。
 岡本先生は、「先生が生徒にすべてを教えるよりも、先生が生徒から問題点や対処方法を引き出す授業の方がうまくいく」「生徒に身近な具体的なサイトを見せて説明すると伝わりやすい」と感じています。具体的には、次のような流れで授業を進めています。
 高校2年生の選択科目「情報C」で3時限分の授業として実施し、2013年度は1学期に、Aクラス32名、Bクラス19名が受講しました。
 1時限目は、Web/ブログ/SNSなど、情報発信系のネットサービスの特徴をまとめて、生徒の基礎的な知識を育てます。その際には、先生の個人のWebページや、利用しているサイトを見せながら授業を進めました。LINEやFacebookなど、多くの生徒が使っているサービスで説明することで、生徒の興味が増すと言います。個人情報の公開・非公開など、セキュリティ上の重要なポイントは、設定画面を見せながら説明します。

生徒がKJ法でまとめたネットサービスの利点と注意点

生徒がKJ法でまとめたネットサービスの利点と注意点

生徒がITの利点と注意点を調べて発表

 2時限目は、4人を1グループとして、IT機器やネットサービスの利点と注意点をサイトで調べ、KJ法でまとめる授業です。KJ法は、小さなメモ用紙に要点を書き込み、机やホワイトボードに並べながら分類するアイデア発想法・要点整理法です。手法を広めた川喜田二郎氏のイニシャルからKJ法と呼ばれています。
 授業時間の中で、生徒はグループで討議したり、ネットで検索しながら要点のメモを作ります。生徒にとって、KJ法に触れるのは初めてです。「ひとり3つのメモを作ろう」というように、出てくると想定される要点の数よりも少し多めに目標設定をすることで、深く調べて考えるようになるそうです。「メモには自分の名前を書く」というルールで、全員参加の意識を高められます。
 IT関連でのトラブルや困った経験を生徒から引き出す工夫も必要です。恥ずかしさや怒られることへの懸念から、自分のことは言いづらいものです。大きなトラブルに遭遇していない生徒の方が圧倒的に多数です。そこで、知り合いの話や、報道で見聞きしたことを取り上げたり、過去のトラブルを調べてまとめるように生徒を指導します。自分で調べる機会を設けることで、授業の後でもITトラブルに関するニュースに生徒が敏感になる効果を期待できます。
 授業の最後に、全グループに要点を発表してもらいます。生徒が示した要点に先生が必要な説明を加えることで、より実践的な知識を得ることができるそうです。

学校の廊下に貼り出した標語ポスター

学校の廊下に貼り出した標語ポスター

標語のポスターで、中学生にもITセキュリティ啓発

 3時限目が標語づくりです。授業時間の中で各自が標語を作り、簡単なポスターにまとめます。ポスターは、プレゼンテーションソフトを使って、標語と短い説明文を入れるだけですが、中にはクリップアートを入れたポスターを作る生徒もいます。全員の標語をコンクールに応募し、ポスターは生徒玄関に掲示します。
 単に学校内・授業内だけで取り組むよりも、外部のコンクールに応募することで、モチベーションも上がり、伝えることをより意識した標語を作ることができるそうです。
 標語を校内で掲示することで、学校内でのイベント化につなげることができます。同校は中学校も併設なので、後輩の中学生への啓発にもつなげることができました。
 なお、「ITセキュリティの標語」と言うだけでは、生徒にはピンときません。ケータイ、スマホ、パスワード、ネットトラブルなど、生徒には明確なテーマが必要です。テーマはコンクール案内の説明の中に書いてあるので、その部分を重点的に生徒に案内しているそうです。

進め方

自分で調べて、トラブル解決できる道筋も

 これからコンクールへの参加する先生に向けた、岡本先生のアドバイスは次のようなものです。事前の準備としては、(1)学内の承認を得ることと、(2)授業の資料の準備が必要です。学内承認は、他の学校向けのコンクールと同じ流れで進められます。資料の準備は、前述のようにSNSの実際のサイトを使うやり方で、労力を軽減すると良いでしょう。
 授業では、生徒が新しいトラブルに出会ったとき、自分で問題解決できるように、対処方法や問題の調べ方を教えておくことも重要です。消費生活センター、警察のIT セキュリティサイト、情報モラル教材「ネット社会の歩き方 http://www.cec.or.jp/net-walk/」、LINEなどの設定方法を紹介するページなどを紹介しているそうです。
 ITセキュリティは、すぐに成果が見える分野ではありませんが、学校でも家庭でも繰り返し教えることで少しずつ定着していくと岡本先生は言います。生徒から授業の後に、「Facebookの設定を変えました」、「自分のブログを見直しました」といったコメントがあったそうです。少しずつですが、生徒が日常的にITセキュリティに注意を払う姿勢が育ちつつあるようです。

聖母被昇天学院中学校高等学校

大阪北部の箕面市にある1学年2クラスの小さな女子ミッションスクール。「誠実・隣人愛・喜び」をモットーに、一人ひとりが自分に与えられた使命を自覚し、社会に貢献できる女性となるよう、きめ細やかな教育を行っています。四季折々の美しい自然環境と充実の設備、学院全体がひとつの家族のような強い絆で結ばれている学校です。
http://www.assumption.ed.jp/