情報セキュリティ

営業秘密のツボ 2021年12月15日 第66号

公開日:2021年12月15日

営業秘密の管理や保護に関する様々な情報をお届けして参ります。

巻頭メッセージ

日本商工会議所・東京商工会議所
知的財産戦略委員会 委員 松澤 克明

商工会議所は、全国515か所に設置され、約122万の商工業者を会員に擁する地域総合経済団体です。地域経済社会の代弁者として政策提言・要望活動等を積極的に展開するほか、企業の活力向上に向け、経営課題へのきめ細やかな支援活動等を実施しております。

商工会議所の会員企業の大部分を占める中小企業は、業種や事業内容、規模などは多種多様ですが、いずれも特定分野においては他社が容易に真似出来ない卓越した技術やノウハウを持つ企業が多いことが特徴です。これらの技術やノウハウなどといった知的財産は、企業収益を生み出す源泉であり、他社と自社を差別する競争力であります。しかし、近年の経済のグローバル化やIoT技術の進展等により、企業にとって重要な情報が様々な経路から流出するリスクが高まっています。

商工会議所では、中小企業の経営者や従業員を対象に、知的財産の保護・活用や営業秘密の保護等をテーマに、セミナーの開催やメールマガジンの配信等、情報発信に取り組んでおります。本年9月には、「中小企業のための技術契約」と題し、知的財産戦略と技術法務の双方に関する全3回のセミナーシリーズをオンラインで開催しました。参加者からは、「発明を行い、今後は商品化に向けて契約を結んでいく段階であるため、大変参考になった」などの感想をいただき、企業の関心の高さがうかがえました。

一方、気がかりな点もあります。公正取引委員会が公表した2019年6月の「優越的地位にある取引先からの知的財産権・ノウハウの提供要請等に関する実態調査」や2020年11月の「スタートアップの取引慣行に関する実態調査報告書」によると、発注側の大企業が、その優越的な地位を利用して、技術やノウハウを不当に開示させる、いわゆる「知財の吸い上げ」の事例が報告されております。例えば、秘密保持契約(NDA)の締結ができなかったり、NDAを結べても片務的な内容で、一方的に営
業秘密の開示を求められるケースが生じております。こうした状況では、知財を活用したイノベーションの創造や新ビジネスの創出は進みませんので、適正な知財取引を推進する必要があります。

こうした状況もあり、現在、契約のひな形やガイドラインに基づき、適正な知財取引を行う旨が盛り込まれた「パートナーシップ構築宣言」の普及など、官民を挙げて取引の適正化が進んでおります。中小企業における知的財産の適切な管理・活用と合わせ、知財取引の適正化に関する普及啓発をさらに強化していく必要があります。

商工会議所ではこうした動向も踏まえ、今後も各種セミナーやメールマガジン等を活用した情報発信や専門家による相談対応等の支援を行って参りますので、ぜひ商工会議所をご活用いただければと存じます。

目次

【1】訴訟・判決コラム:弁護士知財ネット

弁護士知財ネットからの「訴訟・判決コラム」は、今回はお休みです。
過去の62本の掲載記事は、弁護士知財ネット 営業秘密メルマガコラムからご覧ください。

【2】サイバーセキュリティ対策

1.Emotetの攻撃活動再開について:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

Emotetは、情報窃取や他のウイルスへの感染のために悪用されるウイルスです。11月からEmotetの攻撃活動再開の兆候が確認され、Emotetへの感染を狙う攻撃メールの着信情報も複数観測しています。12月9日に被害相談の例を追記しました。メール添付されたWORDやExcelファイルのマクロなどには引き続きご注意ください。

詳細は、攻撃活動再開後の状況/被害相談の例(2021年12月9日 追記部分等)よりご確認ください。

2.NIST SP800-88 Rev.1:媒体のデータ抹消処理に関するガイドラインの翻訳を公開:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

廃棄するハードディスク等の情報記録媒体からの情報漏えいを防止するためのデータ抹消措置(サニタイズ)に関するNIST(米国標準技術研究所)のガイドラインを翻訳し、公開しました。

詳細は次のリンク先よりご確認下さい。

3.サイバーレスキュー隊(J-CRAT)活動状況(2021年度上半期)の公開:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

J-CRATでは主に国家支援型とされる攻撃者によるサイバー活動への相談対応やレスキュー活動、および情報収集を行っています。今般、2021年度上期の活動状況レポートを公開しました。今後とも、各組織がインシデント対応と脅威情報の共有ネットワークをより成熟させるとともに、政府関係機関との連携力を強化し、対応力を高めることが必要不可欠な状況です。

詳細は次のリンク先よりご確認ください。

【3】セミナー・イベント等のお知らせ

1.日系企業における営業秘密漏えい対策支援事業(中国、タイ、シンガポール)のご案内(オンライン対応可・無料):独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)

海外ビジネスを展開するにあたって、自社の経営や技術に関する情報を保護することは極めて重要です。
ジェトロでは、実際に営業秘密の保護・管理体制の導入を図る日本企業の中国、タイ、ベトナム、シンガポールの現地法人を対象に、専門家を派遣しコンサルテーションや社内研修を行う事業を実施します。サービス内容は支援対象企業のニーズにあわせてオーダーメイドでご提供いたします。

日本とは異なる商慣習や労務環境、司法保護状況に合わせて営業秘密の管理体制や保護措置を導入するために、ぜひご利用ください。
事業の詳細、申請書は次のリンク先よりご確認いただけます。

支援事業概要
支援期間

採択後から2022年2月18日金曜日まで

利用時間上限

1社あたり中国、タイは17時間
シンガポールは10時間

採択企業数

中国、タイ、ベトナム、シンガポールの4カ国で計40件程度

費用

無料

  1. 注釈1
    実際に対策を導入するための社内措置等の費用は自社負担となります。
  2. 注釈2
    今年度はオンラインでのご支援も可能でございます。
お問い合わせ先
  • ジェトロ知的財産課
    中国担当:赤澤、藤本
    タイ、シンガポール担当:古賀、峯

    Mail:CHIZAI@jetro.go.jp
    Tel:03-3582-5198

2.営業秘密・知財戦略セミナー資料掲載のお知らせ:独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)

INPITでは、過年度のセミナーで知財戦略アドバイザーが使用した資料を公開しています。営業秘密保護・活用のポイント、権利化/秘匿化などの基本事項やおさえていただきたい事柄について説明しています。
この度、一部内容を見直し、最新版を公開いたしました。

・秘密情報を守るために 営業秘密管理の導入に向けて
・はじめての「営業秘密管理」

詳細は営業秘密・知財戦略相談窓口よりご確認ください。

【4】営業秘密関連情報のご紹介

1.事業者の情報管理を支援する専門家を無償で派遣します。(産業競争力強化法に基づく「技術情報管理認証制度」):経済産業省 安全保障貿易管理課

経済産業省では、平成30年9月より産業競争力強化法に基づく技術等の情報の管理について国の認定を受けた機関による認証を受けられる制度を運用しております。

今般、事業者に対する情報管理のアドバイス・講師派遣や本認証制度の説明や申請支援、情報管理体制の監査の支援業務等を無償で支援する専門家派遣の公募を8月5日木曜日より実施しています。

2.不正競争防止法テキスト2021を公表しております:経済産業省 知的財産政策室

不正競争防止法テキストの最新版は次のリンク先からご覧いただけます。

また、不正競争防止法について説明会をしてほしいなどのご要望がございましたら、知的財産政策室までご連絡をお願いします。
知財室員がご説明に伺います。

3.「秘密情報の保護ハンドブック」及び「情報管理も企業力 秘密情報保護ハンドブックのてびき」を配布しています:経済産業省 知的財産政策室

不正競争防止法の講義等において、不正競争防止法の概要をはじめ、秘密情報の保護ハンドブックや同ハンドブックのてびきの紹介・説明をさせていただいております。

これらの資料は、経済産業省ホームページからダウンロード可能です。
また、ご希望の方には、冊子をお届けすることも可能でございます。

次のリンク先をご確認いただき、社内研修等での活用をご検討いただけますと幸いです。

4.データ利活用に関する資料を公表しております:経済産業省 知的財産政策室

平成30年改正によって、不正競争防止法に限定提供データに関する規定が創設されました。企業が保有・活用する「情報」の保護を、営業秘密と相互補完的に守る不競法上の枠組みです。

知財室では、データ利活用に関する資料についてもホームページにて公表しております。

データ利活用の留意点を網羅的に説明した詳細版
データ利活用のQ&Aや企業の成功事例を載せた冊子になります。

データ利活用のエッセンスをまとめた概要版
データ利活用に取り組み始めたい方向けの冊子になります。

データ利活用のポイント集を基に企業のデータ利活用の事例を詳細に記載した事例集になります。

データ利活用を始めたいが何から始めて良いかわからない、データ利活用においてどのような点に気をつければ良いか等の疑問をお持ちの方は是非ご覧ください。

5.営業秘密・秘密情報管理、知財戦略のFAQ:独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)

INPITが運営する「知財ポータル」にて、「取引先から我が社のノウハウの提供を求められている。どうしたらよい。」といった、営業秘密管理におけるよくある質問を一問一答形式のFAQとしてとりまとめています。

詳しくは知財総合支援窓口 知財ポータルの営業秘密・知財戦略よりご覧ください。

6.「営業秘密・知財戦略相談窓口」をご活用ください:独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)

知的財産戦略アドバイザーが企業の実情に合わせた秘密情報の管理体制(例えば、書類・記録媒体の管理方法、電子データの管理等)の整備をご支援いたします。

地方自治体や中小企業支援機関が主催するセミナー・講演会、中小企業における社内研修等への講師派遣も無料で実施しており、ご好評いただいております。是非ご活用ください。
登壇予定のセミナーは次のリンク先でお知らせしております。

お問い合わせは、次をご参照ください。

E-mail:trade-secret@inpit.go.jp

事務局のつぶやき

今月の知財室

いつもつぼマガをご愛読いただきありがとうございます。
経済産業省知的財産政策室の金見でございます。

今年もいよいよ残すところあとわずかとなりましたね。
1日1日を大切にしたいと思うと同時に、クリスマスや年末年始というワクワクイベントが待ち構えているために、早く時間が過ぎてほしいと思うところもあり、毎年この時期はなんだかソワソワしてしまいます。

皆さまはこの12月、どのようにお過ごしでしょうか。
急に寒くなってきましたが、体調など崩されず、良い12月をお過ごしくださいませ。

さて、話はガラッと変わりますが、知的財産政策室では先月より、最新版の「不正競争防止法テキスト2021」をHPに掲載しております。

不正競争防止法の概要を中心に説明する冊子のため、昨年度版から大きく内容が変わったものではございませんが、事例を新しいものに入れ替えるなどしております。新年を迎えるにあたって、お手元のテキストも最新版に差し替えてみてはいかがでしょうか。

テキストについて何かご不明な点などございましたら知的財産政策室までお問い合わせください。

「つぼマガ」第66号をお読みいただき、ありがとうございました。

メルマガ「営業秘密のツボ」について

お問い合わせ先

発行/編集:営業秘密官民フォーラム

事務局

経済産業省 経済産業政策局 知的財産政策室

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皆様のご意見、ご要望などをお待ちしております。
ご意見およびご要望は、次のアドレスにメール願います。

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    tradesec-infoアットマークipa.go.jp