第1章 総論
総論と対策の分類

Webアプリケーションに起こりうる問題

Webアプリケーションプログラムは、他のソフトウェアに比べて次のような特性をもつ。

これらの特性から、Webアプリケーションにはいくつかの情報セキュリティ問題が生じがちである。それらは概ね次のように分類できる。

(1) 暴露問題

Webサーバは予定外のファイルを開示するおそれがある。また、あるWebコンテンツに埋め込まれたURLによって別のWebコンテンツを呼び出す際、そこに置かれたパラメータが重要な情報を暴露していしたり、干渉を受けるおそれがある。

暴露問題
図1-1: 暴露問題

(2) エコーバック問題

Webアプリケーションが入力パラメータをそのままHTMLページやHTTPレスポンスヘッダ中にエコーバック(鸚鵡返し(おうむがえし))するロジックをもつことは、スクリプト注入HTTPレスポンスによるキャッシュ偽造の問題を許してしまう。

エコーバック問題
図1-2: 鸚鵡返し問題

(3) 入力問題

Webアプリケーションが取り込む入力パラメータにはSQL注入コマンド注入をはじめとする攻撃を意図した悪意ある内容が含まれているおそれがある。

入力問題
図1-3: 入力問題

(4) セッション問題

Webアプリケーションがセッションを維持する仕組みは必ずしも堅固なものではなく、他者からの干渉やセッションの乗っ取りのおそれがある。

セッション問題
図1-4: セッション問題

(5) アクセス制御

Webアプリケーションを構成するコンテンツのひとつひとつはそれぞれ URLで呼び出される形式をとるものであり、実装方法によってはアクセス制御が迂回されるおそれがある。

アクセス制御問題
図1-5: アクセス制御の迂回

(6) その他の問題

上記以外にもメールの第三者中継や偽ページの問題がある。

近年のマッシュアップによる開発においても、技術動向を反映した問題がある。

Webアプリケーション編の記事の構成

ソフトウェア開発工程の流れおよび上記カテゴリをふまえ、「Webアプリケーション編」の構成は次のようになっている。: