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社会基盤センター

SEC journal論文賞

  IPAでは、2005年1月から2017年8月にかけて情報化社会を支えるソフトウェアの安全性や信頼性向上に向けた活動の一環として、ソフトウェア開発技術に関する情報提供や、開発技術の普及、研究促進を目的に、その最新動向、開発における実証的な論文や事例、IPAの活動成果などを掲載した「SEC journal」を発行しました。また同ジャーナルではソフトウェア開発現場で役立つ論文を募集しており、応募論文は有識者の査読(*1)により、SEC journalへの掲載が決定されます。IPAでは2013年から2017年にかけてその掲載論文の中から毎年1回「SEC journal論文賞」を選定(*2)し、授与、表彰しました。

2017年SEC journal論文賞

   2016年8月から2017年7月に掲載決定となった論文の中からSEC journal論文賞の受賞論文を選定し、2017年11月15日(水)にEmbedded Technology 2017/IoT Technology 2017内で開催したSEC journal論文賞表彰式にて、「SEC journal論文賞」を授与しました。

SEC journal論文賞の発表・表彰式

日時:2017年11月15日(水) 10:30~10:50
会場:パシフィコ横浜 会議センター5F 部屋番号:503(神奈川県横浜市西区みなとみらい1-1-1)

対象論文

  2017年SEC journal論文賞は、以下の論文を対象に選定されました。

掲載号論文テーマ
48号 自動運転車を取り巻くSystem of Systemsの安全性要求の妥当性確認と検証PDF文書[1.13MB]
49号 CMMI成熟度レベル別に見たソフトウェア品質の良否にかかわる要因の複合的分析PDF文書[1.29MB]
49号 要求仕様の一貫性検証支援ツールの提案と適用評価PDF文書[1.32MB]
49号 実践的保証ケース作成方式PDF文書[1.5MB]
50号 定性的信頼性/安全性解析支援ツールの開発PDF文書[1.3MB]
50号 NE比を活用した,つながるシステムにおける利用時の品質向上の提案PDF文書[1.18MB]
50号 オープンシステム・ディペンダビリティのための形式アシュランスケース・フレームワーク(FFO) PDF文書[1.25MB]
51号 ISBSGデータを用いた見積もり研究に対するIPA/SECデータを用いた外的妥当性の評価
PDF文書[1.04MB]
51号 提案依頼書に含まれる無理難題の分類PDF文書[927KB]


2017年SEC journal論文賞 受賞論文

  2017年SEC journal論文賞の受賞論文は以下の3編です。(所属などは投稿当時の情報です)

最優秀賞
論文テーマ 要求仕様の一貫性検証支援ツールの提案と適用評価
執筆者 位野木 万里
所属団体 工学院大学
共著者 1 近藤 公久(工学院大学)
論文 掲載論文(SEC journal49号)の詳細・ダウンロードPDF文書[1.32MB]

 最優秀賞には、「要求仕様の一貫性検証支援ツールの提案と適用評価(執筆者:位野木 万里氏 他1名)」が選ばれました。
 要求定義に関する標準や知識体系が策定され、各組織はそのような標準や知識体系に基づく要求定義を実践しつつありますが、実際の要求定義は、開発対象となる領域、課題、技術などの条件に応じて工夫が必要となり、標準が示す一般化されたやり方のみでは対応が困難であるのが実情です。要求定義工程で定義した要求仕様の品質に関しては、完全性、トレーサビリティ、一貫性などの品質特性が定義されますが、これらの検証は組織のベテラン技術者が、各自の属人的な方法で実施していることが多いと考えられます。要求仕様書の検証のしやすさを考慮して、ダイアグラムや形式言語を用いて仕様を厳密に記述する取り組みも行われていますが、ステークホルダはそのようなダイアグラムや形式言語の専門家でないことから、自然言語により仕様を記述するという状況をなくすことも困難です。
 本論文は、要求仕様の品質特性である「一貫性」に着目し、ベテラン技術者が経験的に得た検証知識、例えば、「アクター」「データ」「画面」「振る舞い」の設計要素が要求仕様書で一貫した定義で記述されていることを確認するといった検証ノウハウを、ルールと辞書として形式知化し、それら知識に基づき、要求仕様の一貫性検証支援ツールを実現しました。実システムの要求仕様書を用いて本ツールの適用評価を行い、本ツールは技術者の効率的な仕様検証を支援する点において一定の効果があることを明らかにしています。
 要求仕様の一貫性検証といった開発現場にとって重要課題である非常に魅力的なテーマに取り組んだこと、提案の検証支援ツールによりベテラン技術者のみが従事していた要求仕様検証を、これまで検証の経験がない組織でも取り組むことが期待できることなどの点が評価されました。検証支援ツールの完成度も高く、開発現場での適用検証によりその効果も確認されている点、多くの組織で利用できるよう辞書やルールのカスタマイズが考慮されているといった実フィールドで供し得る実用性も高く評価されました。

優秀賞

  本年は該当論文なし

所長賞

  受賞論文:2編

論文テーマ CMMI成熟度レベル別に見たソフトウェア品質の良否にかかわる要因の複合的分析
執筆者 柳田 礼子
所属団体 日本電気株式会社
共著者 1 野中 誠(東洋大学)
共著者 2 誉田 直美(日本電気株式会社)
論文 掲載論文(SEC journal49号)の詳細・ダウンロードPDF文書[1.29MB]

 所長賞には、「CMMI成熟度レベル別に見たソフトウェア品質の良否にかかわる要因の複合的分析(執筆者:柳田 礼子氏 他2名)」が選ばれました。
 社会生活になくてはならない製品・システムにおいて、ソフトウェアが重要な位置付けとなり、信頼性の確保が重要視されています。特に、IoT(Internet of Things)で利用される機器やシステムの規模が拡大するに伴い、それらを制御する「ソフトウェア」の不具合に起因する機器の故障や、システムの停止が社会に与える影響は大きくなってきており、ソフトウェア品質の向上がますます求められる環境となってきています。
 このような環境の中、本論文はソフトウェア品質を効率的に向上させるため自社の商用ソフトウェア開発プロジェクトのデータを用い分析しています。ソフトウェア品質の良否に影響する要因の一つとしてCMMI(Capability Maturity Model Integration)で示される開発組織の能力があり、成熟度レベルが高いほどリリース後のソフトウェア欠陥密度が低くなることが先行研究により示されていますが、成熟度レベルを上げるのには一般に長い期間を要します。そのため、成熟度の状況に応じたプロセス改善を効率的に進めることが求められ、それぞれの成熟度レベルにおいてソフトウェア品質の良否に影響する要因を把握することが必要となります。本論文では、商用ソフトウェア開発プロジェクト522 件のデータを対象に、成熟度レベル別に分類木を構築し、有意差検定と相関分析を組み合わせてソフトウェア品質の良否に影響する要因を複合的に分析し主たる要因を導いています。
 522件という多くの社内の実データにて評価し、信頼性が高いことと合わせて、社内の実データや分析結果を公開し、産、学で広く利用可能にした点も高く評価されました。分析過程の解説も記述されているため読者の自社データを用いた分析も可能となり利用性も高まっています。CMMIの記述や、過去の知見や経験則が自社の実データで実証されており、現場を動かすモチベーションにもなる研究であると判断しました。

     
論文テーマ 提案依頼書に含まれる無理難題の分類
執筆者 門田 暁人
所属団体 岡山大学大学院 自然科学研究科
共著者 1 住吉 倫明(岡山大学 工学部情報系学科)
共著者 2 神谷 芳樹(みたに先端研)
論文 掲載論文(SEC journal51号)の詳細・ダウンロードPDF文書[927KB]

 同じく所長賞に、「提案依頼書に含まれる無理難題の分類(執筆者:門田 暁人氏 他2名)」が選ばれました。
 開発プロジェクトの失敗要因は様々ですが、RFPの記述に起因するものが少なくありません。RFPは開発プロジェクトのベースとなる重要な書類ですが、RFPの記述が十分でないことで、契約締結後にユーザの意図している要求とベンダが理解した要求との間のギャップが明らかになるといったことがしばしば起きています。このような問題を回避するために、要求を漏れなく記述するための方法が研究され実践されています。
 本研究は、RFP の記述の漏れや正確さに関するものではなく、RFP には受注者にとって無理難題ともいえるリスクの高い要求が含まれている場合があり、この点もプロジェクト失敗の原因となり得る点に着目し、受注者(ベンダ)の視点に立ち、RFPに含まれる無理難題を抽出・分類し、どのような無理難題が存在するかを明らかにしたものです。また、無理難題の事例集としてまとめることで、ベンダのリスク管理に役立てるとともに、発注者側によるRFPのチェックに役立つものとしています。
 RFPに注目しプロジェクト失敗の原因を探るアプローチはこれまでも存在しますが、記述の漏れや正確さではなく、記述内容の無理難題への着目は新たな観点であり、今後の発展が期待できます。分析結果から得られた「無理難題事例集」は発注者、受注者共に参考にできるものであり、利用性の高さも評価されました。研究結果を活用できる場面も多いのですが、RFPにあえて無理難題を含めることがあるという点も認識されていることと考えます。このような商慣習に関して問題提起となっている点も評価されました。

2016年SEC journal論文賞

   2015年8月から2016年7月に掲載決定となった論文の中からSEC journal論文賞の受賞論文を選定し、2016年11月17日(木)にEmbedded Technology 2016/IoT Technology 2016内で開催したSEC journal論文賞表彰式にて、「SEC journal論文賞」を授与しました。

SEC journal論文賞の発表・表彰式

日時:2016年11月17日(木) 11:00~12:00
会場:パシフィコ横浜 アネックスホール 2階 F203(神奈川県横浜市西区みなとみらい1-1-1)

対象論文

  2016年SEC journal論文賞は、以下の論文を対象に選定されました。

掲載号論文テーマ
43号 契約を用いたソフトウェア開発の修正傾向調査PDF文書[731KB]
44号 IT組織における職場リーダー像の系統的な導出PDF文書[611KB]
45号 ソフトウェア開発記録の多次元データ分析に向けた可視化方式Treemap Forestの設計と実証的評価PDF文書[1.27MB]
46号 プロセス改善技術者育成コースの設計と実装PDF文書[1.22MB]
47号 組込みシステムにおける検証アーキテクトと育成プログラムPDF文書[1.54 MB]
47号 Goal Structuring Notationを用いた汎用的な安全要求の明確化と評価PDF文書[1.07 MB]


2016年SEC journal論文賞 受賞論文

  2016年SEC journal論文賞の受賞論文は以下の2編です。(所属などは投稿当時の情報です)

最優秀賞

  本年は該当論文なし

優秀賞

  受賞論文:1編

論文テーマ プロセス改善技術者育成コースの設計と実装
執筆者 久野 倫義
所属団体 三菱電機株式会社
共著者 1 中島 毅(芝浦工業大学)
共著者 2 芝田 晃 (三菱電機株式会社)
共著者 3 近藤 聖久 (三菱電機株式会社)
共著者 4 小笠原 公一 (三菱電機株式会社)
論文 掲載論文(SEC journal46号)の詳細・ダウンロードPDF文書[1.22B]

 優秀賞には、「プロセス改善技術者育成コースの設計と実装(執筆者:久野 倫義氏 他4名)」が選ばれました。ソフトウェア開発組織の改善の核となるプロセス改善技術者(SEPG要員)の重要性は、誰しも感じることであると思いますが、改善技術者の育成は難しいという現実があります。スキル項目が多岐にわたること、育成できる指導者が潤沢ではないといったこと等が要因として挙げられます。
 本論文では、 これまでのSEPG要員に対する教育、ISO/IEC 15504 Part 5やCMMI6で示されるプロセスの理解など、抽象的な知識を詰め込む形式ではなく、SEPG要員が現場で直面する問題を解決できることに絞った達成レベルとする育成コースのプログラムを構成・実施し、短期間での育成を可能とした事例を紹介しています。コース開発の背景、設計上の課題と解決策、その実施結果の評価などが過年度の実績に基づき紹介されており、産業界で横展開可能な有効性のエビデンスを示している点なども評価されました。

SEC所長賞

  受賞論文:1編

論文テーマ Goal Structuring Notationを用いた汎用的な安全要求の明確化と評価
執筆者 柿本 和希
所属団体 奈良先端科学技術大学院大学
共著者 1 川口 真司(宇宙航空研究開発機構)
共著者 2 高井 利憲(奈良先端科学技術大学院大学)
共著者 3 石濱 直樹(宇宙航空研究開発機構)
共著者 4 飯田 元(奈良先端科学技術大学院大学)
共著者 5 片平 真史(宇宙航空研究開発機構)
論文 掲載論文(SEC journal47号)の詳細・ダウンロードPDF文書[1.07 MB]

 所長賞には、「Goal Structuring Notationを用いた汎用的な安全要求の明確化と評価(執筆者:柿本 和希氏 他5名)」が選ばれました。一般安全要求と呼ばれるものや、国際標準規格などの安全規格など汎用的に適用される安全要求はあいまいな記述を含んでいますが、あいまいな記述に対する解釈の誤りはコストの増大や事故の原因につながります。
 本論文では、汎用的な安全要求が暗黙的に仮定する知識などの暗黙知をゴール構造化記法(Goal Structuring Notation,GSN)を用い明確にすることにより、思い込みによる危険性の見過ごしを防止する効果があることを示しています。「安全」に前提をおかなければ、様々な分野のソフトウェアやシステムの開発現場に適用可能である点も評価されました。

2015年SEC journal論文賞

   2014年8月から2015年7月に掲載決定となった論文の中からSEC journal論文賞の受賞論文を選定し、2015年11月19日(木)にEmbedded Technology 2015内で開催したSEC journal論文賞表彰式にて、「SEC journal論文賞」を授与しました。

SEC journal論文賞の発表・表彰式

日時:2015年11月19日(木) 14:40~15:10
会場:パシフィコ横浜 アネックスホール 2階 F203(神奈川県横浜市西区みなとみらい1-1-1)

対象論文

  2015年SEC journal論文賞は、以下の論文を対象に選定されました。

掲載号論文テーマ
40号 概念段階におけるハザード・脅威の識別手法PDF文書[890 KB]
40号 次世代ソフトウェア信頼性評価技術の開発に向けてPDF文書[771 KB]
40号 UMLによる組込みソフトウェア設計の検証支援環境の開発PDF文書[842 KB]
41号 アーキテクチャ横断的要素に着目したトレーサビリティ確保によるアプリケーションライフサイクル高信頼性維持のためのアプローチPDF文書[841 KB]
42号 チェックリストを用いたコードレビューと判別モデルの組合せによるモジュールの不具合リスクのランク付けPDF文書[841 KB]
42号 組込みソフトウェア開発における設計関連メトリクスに基づく下流試験欠陥数の予測PDF文書[715 KB]


2015年SEC journal論文賞 受賞論文

  2015年SEC journal論文賞の受賞論文は以下の1編です。(所属などは投稿当時の情報です)

最優秀賞

  本年は該当論文なし

優秀賞

  本年は該当論文なし

SEC所長賞

  受賞論文:1編

論文テーマ 組込みソフトウェア開発における設計関連メトリクスに基づく下流試験欠陥数の予測
執筆者 角田 雅照
所属団体 奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科/近畿大学 理工学部情報学科
共著者 1 門田 暁人(奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科/岡山大学 大学院自然科学研究科)
共著者 2 松本 健一(奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科)
論文 掲載論文(SEC journal42号)の詳細・ダウンロードPDF文書[715 KB]

 所長賞には、「組込みソフトウェア開発における設計関連メトリクスに基づく下流試験欠陥数の予測(執筆者:角田 雅照氏 他2名)」が選ばれました。本論文では、組込みソフトウェア開発の設計工程から得られるメトリクスを用いて、テスト後半(結合テスト、総合テスト)における欠陥数の予測を試みています。モデルの説明変数としては、品質保証に関するメトリクスに加えて、各仕様書のドキュメント量に関するメトリクスも採用していて、高い予測精度となっています。これまで品質管理を支援することを目的として様々な方式が研究・提案されていますが、定量的にその効果を示しているものは多くありません。実プロジェクトのデータをもとにしたメトリック利用研究であり、産業界での有効性のエビデンスを示している点も評価されました。

2014年SEC journal論文賞

   2013年8月から2014年7月に掲載決定となった論文の中からSEC journal論文賞の受賞論文を選定し、2015年1月21日(水)に第12回クリティカルソフトウェアワークショップ (12thWOCS2) 内で開催したSEC journal論文賞表彰式にて、「SEC journal論文賞」を授与しました。

SEC journal論文賞の発表・表彰式

日時:2015年1月21日(水)15:40~16:55
会場:御茶ノ水ソラシティ カンファレンスセンター (東京都千代田区神田駿河台4-6)

対象論文

  2014年SEC journal論文賞は、以下の論文を対象に選定されました。

掲載号論文テーマ
35号 ソフトウェアプロダクトラインのエンタープライズ・システムへの適用と評価PDF文書[1.11 MB]
36号 ピアレビュー有効時間比率計測によるピアレビュー会議の改善と品質改善の効果PDF文書[2.08 MB]
36号 ソフトウェア品質の第三者評価における探索的データ解析ツールの利用とその効果:OSSデータを対象とした検証実験PDF文書[1.79 MKB]
37号 要件定義プロセスと保守プロセスにおけるモデル検査技術の開発現場への適用PDF文書[983 KB]
38号 非機能要件に着目したRequest For Proposal (RFP) 評価 PDF文書[1.28 MB]
38号 UISSを活用したIT人材のキャリアパス設計PDF文書[1.12 MB]
39号 プラットフォーム依存種検索によるソースコードからのプラットフォーム依存部抽出手法PDF文書[1.94 MB]


2014年SEC journal論文賞 受賞論文

  2014年SEC journal論文賞の受賞論文は以下の3編です。(所属などは投稿当時の情報です)

最優秀賞

  本年は該当論文なし

優秀賞

  受賞論文:1編

論文テーマ ソフトウェアプロダクトラインのエンタープライズ・システムへの適用と評価
執筆者 中村 伸裕
所属団体 大阪大学/住友電気工業株式会社
共著者 1 谷本 收(住友電工情報システム株式会社)
共著者 2 楠本 真二(大阪大学)
論文 掲載論文(SEC journal35号)の詳細・ダウンロードPDF文書[1.11 MB]

  優秀賞に選ばれたのは、「ソフトウェアプロダクトラインのエンタープライズ・システムへの適用と評価(執筆者:中村伸裕氏 他2名)」です。ソフトウェアプロダクトラインは、ソフトウェアを共通性と可変性が事前に整理された再利用資産から開発する手法で、派生ソフトウェアを効率よく開発でき、組込みソフトウェア開発では多く適用されています。本論文では、この手法の適用が難しいと指摘されているエンタープライズ・システム開発への適用の試みを述べています。成果として、ソフトウェアを再利用可能な形のソフトウェア資産として部品化して開発することで、各アプリケーションで開発するソースコード量を削減し、プログラム開発のコスト削減を実現しました。しかもソフトウェア資産は10 年以上の期間にわたり全開発プロジェクトで再利用されており、組織全体での開発ソースコード量と、開発コストの減少に繋がったという点が評価されました。

SEC所長賞

  受賞論文:2編

論文テーマ ピアレビュー有効時間比率計測によるピアレビュー会議の改善と品質改善の効果
執筆者 久野 倫義
所属団体 三菱電機株式会社 設計システム技術センター
共著者 1 中島 毅(三菱電機株式会社 設計システム技術センター)
共著者 2 松下 誠(大阪大学 大学院情報科学研究科)
共著者 3 井上 克郎(大阪大学 大学院情報科学研究科)
論文 掲載論文(SEC journal36号)の詳細・ダウンロードPDF文書[2.08 MB]

  所長賞には、「ピアレビュー有効時間比率計測によるピアレビュー会議の改善と品質改善の効果(執筆者:久野倫義氏 他3名)」が選ばれました。ピアレビュー会議とは、ソフトウェア開発における各段階で、成果物を同僚やチームメンバーがレビューすることであり、品質向上のための重要な活動です。しかし、ピアレビュー会議を完了したソフトウェアにおいても欠陥が残存している場合も多いことから、本論文では、ピアレビュー会議測定ツールを用いてピアレビュー会議の課題を定量的に明確化し、ピアレビュー会議が欠陥抽出を中心とした活動になるように改善を行っています。独自の指標を導入して単位時間当たりの指摘件数を向上させ、そのことから、テスト段階へ流出する欠陥数が減少し、品質向上の成果に繋がった点が評価されました。また、そうした改善手法定着のため社内人材教育に展開している点が特に評価され、今回の受賞となりました。

論文テーマ プラットフォーム依存種検索によるソースコードからのプラットフォーム依存部抽出手法
執筆者 岡本 周之
所属団体 株式会社日立製作所 横浜研究所/大阪大学 大学院情報科学研究科
共著者 1 藤原 貴之(株式会社日立製作所 横浜研究所)
共著者 2 楠本 真二(大阪大学 大学院情報科学研究科)
共著者 3 岡野 浩三(大阪大学 大学院情報科学研究科)
論文 掲載論文(SEC journal39号)の詳細・ダウンロードPDF文書[1.94 MB]

  同じく所長賞として、「プラットフォーム依存種検索によるソースコードからのプラットフォーム依存部抽出手法(執筆者:岡本周之氏 他3名)」が選ばれました。組込みシステム開発においては、プラットフォーム変更に伴うソフトウェア移植作業の効率向上が求められています。本論文では、プラットフォーム間移植工数の削減を目的として、プラットフォーム依存種検索によるソースコードからの依存部抽出手法を提案しています。この手法に従って実際にプラットフォーム依存部抽出ツールを開発し、製品ソースコードの移植に適用した結果、依存部の検索・判定・修正工数および同判定工数が大幅に削減できるなど、手法の有効性が検証されています。実際に開発現場で必要とされているテーマに則し、その有効性を実証したという点が評価されました。

2013年SEC journal論文賞

  2013年に掲載された論文の中からSEC journal論文賞の受賞論文を決定し、2014年1月17日(金)に第11回クリティカルソフトウェアワークショップ (WOCS2)内にてSEC journal論文賞表彰式にて、「SEC journal論文賞」を授与しました。

プレスリリース文:平成25年SEC journal論文賞の受賞論文を発表

SEC journal論文賞の発表・表彰式

日時:2014年1月17日(金)16:00~17:15
会場:御茶ノ水ソラシティ カンファレンスセンター

対象論文

  2013年SEC journal論文賞は、以下の論文を対象に選定されました。

掲載号論文テーマ
30号 ソフトウェア技術者「レベル3以上2倍化」の実現PDF文書[1.61 MB]
31号 事例紹介:OEMソフトウェア製品の検証プロセスPDF文書[1.2 MB]
32号 プロジェクトコミュニケーション管理プロセスの適用評価PDF文書[1.49 MB]
33号 Javaプログラムのアクセス修飾子過剰性分析ツールModiCheckerの機能拡張とその応用例PDF文書[1.15 MB]
34号 アプリケーション保守サービスの定量化手法PDF文書[1.83 MB]
34号 ITSS調査データから見るIT技術者のキャリア形成とスキルの関係PDF文書[1.84 MB]
34号 システム価値向上を目的としたScrumの試行・評価PDF文書[1.81 MB]
34号 若年技術者向けソフトウェア開発研修プログラムの開発と評価PDF文書[1.84 MB]


2013年SEC journal論文賞 受賞論文

  2013年SEC journal論文賞の受賞論文は以下の3編です。

最優秀賞
論文テーマ アプリケーション保守サービスの定量化手法
執筆者 酒井 大
所属団体 日本アイ・ビー・エム株式会社 グローバルビジネスサービス
論文 掲載論文(SEC journal34号)の詳細・ダウンロードPDF文書[1.83 MB]

  2013年に投稿された論文には、ソフトウェアの開発手法を実際に適用し、その効果を実証したものや、他の手法との比較を行った内容が多く見られました。その中で、最優秀賞に選ばれた「アプリケーション保守サービスの定量化手法(執筆者:酒井 大 氏)」の論文は、作業の内容や質が多岐に渡るため今までコストや工数を見積もることが難しかった保守サービス量(*1)を独自の手法を用いて数値化し、これを可能にした点が評価されました。この手法は、アプリケーションの保守サービス量を定量化することで受発注者間の合意形成や、より効率的な保守サービスの実現に貢献が期待できます。 なお最優秀賞は過去3年間、対象者なしとの審査結果が続いており、4年ぶりの授与となりました。

(*1)アプリケーションの運営保守サービスにかかる作業量。

優秀賞
論文テーマ システム価値向上を目的としたScrumの試行・評価
執筆者 中村 伸裕
所属団体 住友電気工業株式会社 情報システム部
大阪大学大学院 情報科学研究科 コンピュータサイエンス専攻
共著者 1 服部 悦子(住友電工情報システム株式会社)
共著者 2 永田 菜生(住友電気工業株式会社)
共著者 3 楠本 真二(大阪大学)
論文 掲載論文(SEC journal34号)の詳細・ダウンロードPDF文書[1.81 MB]

  優秀賞は、ソフトウェア開発手法の一つである「アジャイル型開発」に着目し、Scrumと呼ばれるアジャイル手法を実際の開発に適用してその効果を実証した「システム価値向上を目的としたScrumの試行・評価(執筆者:中村 伸裕 氏 他3名)」に決定しました。本論文では、アジャイル型開発と、従来の開発手法であるウォーターフォール型開発を定量的に比較してその適用効果をまとめており、国内では実績の少ないアジャイル型開発の貴重な適用事例として、アジャイル型開発導入の参考として活用が期待できます。

SEC所長賞
論文テーマ 若年技術者向けソフトウェア開発研修プログラムの開発と評価
執筆者 大森 久美子
所属団体 NTT サービスイノベーション総合研究所 ソフトウェアイノベーションセンタ
論文 掲載論文(SEC journal34号)の詳細・ダウンロードPDF文書[1.84 MB]

  所長賞は、独自に実施、改良を重ねた研修プログラムによって、若手開発者の育成を目指した「若年技術者向けソフトウェア開発研修プログラムの開発と評価(執筆者:大森 久美子 氏)」の論文に決定しました。将来を担う若手開発者の育成は重要な課題の一つであり、様々な状況に柔軟に対応できる人材が求められています。本論文では、知識詰め込み型ではなく受講者の気づきや自主性を重んじた内容にすることで、受講者が自ら考えて対応する力を身につけられるよう工夫されている点、および研修内容が著書として出版され、大学等の他機関で利用されている点に評価が集まりました。本論文は、将来のソフトウェア開発力の向上への貢献が期待できます。

脚注

(*1) 学界と産業界の有識者2名以上で査読し、SEC journalへの掲載論文を選定する。
(*2) SEC journalへの掲載論文の中から産学の有識者20名で構成する選考委員会が審査し、さらに選考委員会とは異なる有識者8名で構成する表彰委員会の審査を経て決定する。