HOME社会基盤センター報告書・出版物・ツール事業成果(報告書等)IoTシステム開発にシステムズエンジニアリングの考え方を導入するパイロット活動を三菱重工グループと共同で実施
~ IoT時代に必要な開発アプローチと考え方の普及を目指す~

本文を印刷する

社会基盤センター

IoTシステム開発にシステムズエンジニアリングの考え方を導入するパイロット活動を三菱重工グループと共同で実施
~ IoT時代に必要な開発アプローチと考え方の普及を目指す~

2018年3月1日公開
独立行政法人情報処理推進機構
技術本部 ソフトウェア高信頼化センター

概要

 IPA/SECは2017年4月から8ヵ月間、「システム開発の上流設計工程にシステムズエンジニアリング(※1)の考え方を導入する取り組み」を、三菱重工機械システム株式会社と共同で実施しました。

 その結果、従来培ってきた開発方法の有効性を活かしつつシステムズエンジニアリングを効果的に導入するための、実践的な知見を得ることができました。これらの知見とその情報を共有することでよりよい製品/サービス開発の一助とすべく、活動の報告書を公開します。

 IPA/SECではこの取り組みを通じ、IoT(Internet of Things)システムの開発など、市場拡大が期待される分野において、システムズエンジニアリングの考え方が普及することを期待しています。

背景

 サービスや社会インフラが複雑化・多様化し、多数の専門領域にまたがるシステム開発が増加しています。そのような状況で必要なのは、システム全体を最適化する開発やビジネス設計です。しかし、日本企業はこうした開発は不得意だと指摘されています。実際、2016年度にIPA/SECが実施した「組込みソフトウェア産業の動向把握等に関する調査」(※2)でも、不足している人材として「システム全体を俯瞰して見ることができる人材」が、上位に挙げられています。

 そこでIPA/SECでは、欧米を中心に、航空・宇宙分野など高度な専門性を要する複雑なシステム開発に適用されているシステムズエンジニアリングのアプローチを訴求することが有効であると考えました。その取り組みの一環として、三菱重工グループの高度道路交通システム系の新たなシステム開発の取り組みを対象に、システム開発の現場へのシステムズエンジニアリングのアプローチの導入を試行しました。

 三菱重工グループが推進するこのシステム開発は、汎用機器やオープンなネットワークの活用を前提とし、事業の拡張性も考慮した製品/サービスを開発するものです。専用機器を利用したクローズド環境ではなく、インターネットに接続することを前提としたオープン環境では、外部からのサイバー攻撃や開発当初は想定していなかった機器との将来的な接続など、考慮すべき事象が数多くあります。変化するビジネス環境やシステムの周辺環境との整合性は常に求められているのです。

 こうした課題認識に基づき、ライフサイクル全体を対象とするシステムズエンジニアリングの考え方を取り入れて成果を向上させることが重要と考え、新しいアプローチを試行すべく、今回の取り組みを実施しました(※3)

取り組み内容

 多くのシステム開発現場が新たな環境変化に直面しており、これに立ち向かうべくシステムズエンジニアリングのアプローチの導入を検討するケースが増えてくると想定されています。報告書では、この取り組みの際に、それぞれ従来の知見(専門性やノウハウ)を強みとして活かしながら、新しいアプローチを導入するための情報を紹介しています。

 システムの開発現場はそれぞれ培ってきた知見(専門性やノウハウ)に基づいた開発標準を持っています。直面する多様性や複雑性の課題に対処するためには、従来の知見と、新たなシステムズエンジニアリングに関する知見との整合性を考慮して双方の有用性を活かした開発を推進する必要があります。

 こうした知見は、システムズエンジニアリングを意図的に実践してこそ得られるものです。今回、IPA/SECではパイロット活動を通してそれらの知見を整理しました。今回の主な取り組み内容は以下のとおりです。

  1. 開発対象の全体をシステムとして捉え、「目的指向と全体俯瞰」の考え方を徹底する。
  2. 「システムライフサイクルのプロセス」の重要なポイントを理解し、開発標準と比較する。
  3. 開発の上流工程で「妥当性確認」を行う。
  4. パイロット活動の取り組みを整理し、今後の開発に向けた提言をまとめる。
 上記のような取り組みにより、以下のような知見が得られました。
  1. 「システムライフサイクルのプロセス」を理解し、開発標準と比較することで、自部門の有識者の暗黙知を整理評価して、新たな開発標準の運用に活用できる。
  2. 上流工程で、プロジェクト本来の目的とシステムの設計内容の整合性を確認することで、問題の早期発見につなげられる。

対象読者

 今回の報告書は、これからIoTシステム/サービスの企画・開発に取り組む組織のマネジメント層やプロジェクトリーダー、現場の担当者を読者として想定しています。特に、従来のソフトウェア開発の経験があり、新たにIoTシステムの開発に取り組む開発者にとっては、開発現場で培ってきた知見と、システムズエンジニアリングに関する知見との整合性を考慮しながら開発を推進するためのヒントが見つかるはずです。

(※1) システムズエンジニアリングとは、複数の専門領域にまたがる多様な価値を考慮しつつ全体最適を実現するためのアプローチです。
システムズエンジニアリングの推進
(※2) 組込みソフトウェア産業の動向把握等に関する調査結果を公開 (※3) SEC journal 52号 事例紹介「システムズエンジニアリングを活用したITSのセキュリティ機能設計の取り組み」
(三菱重工業株式会社 原健太氏)

参考情報

ISO/IEC/IEEE15288:2015 Systems and software engineering -- System life cycle processes

ダウンロード