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ソフトウェア高信頼化

2014年度および2015年度のソフトウェア工学分野の先導的研究支援事業の成果を公開

2016年5月31日公開
独立行政法人情報処理推進機構
技術本部 ソフトウェア高信頼化センター

概要

 IPA/SECでは、我が国のソフトウェア工学の促進と、その成果の産業界への展開促進を目的に、2012年度より「ソフトウェア工学分野の先導的研究支援事業」として、ソフトウェア工学分野の先導的研究やソフトウェアの経済的効果に関する研究を公募し、支援する取組みを行っています。
 2014年度は4つ、2015年度は6つの研究テーマを採択し、これらを支援しました。このたび2014年度採択の研究2件および2015年度採択の研究4件が終了したため、これらの成果報告書を公開します。なお、本研究の成果として、2015年度の委託研究先である名古屋大学より「保証ケース統合作成支援ツール」、「研修用教材」、「保証ケース導入適合性指標」、福井大学よりアプリケーションソフト「ゆるキャラ商店街」、工学院大学より「シナリオの一貫性検証支援ツール」がそれぞれフリーウェアで公開されています。

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注:当ページのコンテンツはPDF形式での提供となっております。

2014年度採択研究
組織名称 学校法人慶應義塾 慶應義塾大学
研究責任者 大学院 システムデザイン・マネジメント学科 教授 西村 秀和
研究区分(*1) A:ソフトウェア工学分野の先導的な研究
研究テーマ名 システムモデルと繰り返し型モデル検査による次世代自動運転車を取り巻くSystem of Systemsのアーキテクチャ設計
研究期間(*2) 2年
研究概要  次世代自動運転車の導入に向け、それを取り巻く交通インフラ、各種情報システムを含む周辺環境、ドライバなどをSystem of Systems(SoS)として捉えた上で、安全性を考慮したアーキテクチャを構築した。このため、安全性を脅かす状態に遷移しないよう、FDIR(Fault Detection, Isolation and Recovery)の概念を取り入れたシステムモデリングと繰り返し型モデル検査を用いることにより、安全性を確保するSoSアーキテクチャの構築方法を確立した。
 アーキテクチャを示すことにより、企業において次世代自動運転車を中心としたSoSを明確に捉えられるようになり、次世代自動運転車用のソフトウェア開発・設計、周辺情報システムなどの開発・設計を行うことが可能となる。
報告書成果報告書PDF文書[4.9MB]
組織名称 学校法人神奈川大学 神奈川大学
研究責任者 理学部 情報科学科 教授 木下 佳樹
研究区分 B:ソフトウェア開発現場へのソフトウェア工学の適用に関する研究
研究テーマ名 オープンシステム・ディペンダビリティのための形式アシュランスケース・フレームワーク
研究期間 2年
研究概要  システムがサービスを継続するだけでなく、目的や環境の変化に適応し、また障害時に説明責任を果たすといった対応力であるオープンシステム・ディペンダビリティを推進するために、具体的なシステムの安心・安全に関する議論(アシュランス議論)の記録文書であるアシュランスケースの作成が必要である。アシュランスケースの整合性を計算機によって検査することを可能とするため、形式言語により記述する形式アシュランスケース・フレームワーク(FFO:Formal assurance case Framework for Open systems dependability)を開発した。FFOは、アシュランス議論の記述に必要な用語定義を与える概念体系と、議論の部品や組み合わせ方のテンプレートライブラリから成り、本研究ではFFOを形式言語Agdaによる開発フレームワークとして提供した。
 FFOの利用により、「最初にケース内容を思い付くのが困難」「議論の仕方、品質が人によりけり」等のアシュランスケース導入時の問題を解決する。また、アシュランスケースの品質評価基準としての国際標準化活動につなげ、第三者認証の基盤を提供する。
報告書 成果報告書PDF文書[4.25MB]
2015年度採択研究
組織名称 国立大学法人名古屋大学
研究責任者 情報連携統括本部 情報戦略室 教授 山本 修一郎
研究区分 B:ソフトウェア開発現場へのソフトウェア工学の適用に関する研究
研究テーマ名 保証ケース作成支援方式の研究
研究期間 1年
研究概要  高い安全性が要求される複雑なシステムを実現するために、保証ケースの作成が必要とされるようになってきていることから、保証ケース作成支援に関して以下を研究した。
  1. モデル図の構造情報に基づいて保証ケースに関する活動プロセスを定式化し、支援ツールを試作することにより、自動化範囲と自動化による改善効果を明確化した。これにより多様なモデル図を用いている開発現場に対して統一的な保証ケース作成法を提供できる。
  2. コードの静的解析情報に基づく、コードに対する保証ケースの作成手法を定式化した。コードとして蓄積された膨大な既存資産に対して保証ケースを作成することができるため、保証ケースによる安全性の保証を効率化できる。
  3. 保証ケースの構成情報に基づき、レビュプロセスを定式化した。客観的なレビュ観点とプロセスにより、現場技術者が保証ケースを適切にレビュできるようになることが期待される。
  4. 1.統一的な保証ケース作成法および3.保証ケースレビュ手法に基づく開発技術者向け研修教材を試作するとともに研修を実施し、有効性を確認した。これらにより多様なモデルならびにコンポーネントに対する保証ケースの作成・レビュ知識の習得を効率化できる。
  5. 保証ケースの導入を計画している企業に対する保証ケースの導入可能性を判断するための適合性指標を開発するとともに、保証ケース作成法の必要性と試作した研修教材の妥当性を評価した。これにより業界で必要とされる保証ケース手法へのニーズを解明できる。
報告書 成果報告書PDF文書[2.92MB]
保証ケース統合作成支援ツール、研修用教材、保証ケース導入適合性指標 名古屋大学 山本研究室
http://de-science.icts.nagoya-u.ac.jp/downloadfile(※外部リンク)
組織名称 国立大学法人福井大学
研究責任者 大学院 工学研究科 准教授 橘 拓至
研究区分 C:ソフトウェアが経済社会にもたらす革新的効果に関する実証研究
研究テーマ名 携帯端末用アプリケーションソフトウェアが地方経済に与える効果の実証実験評価に関する研究
研究期間 1年
研究概要  地域の商店街に活力を与える携帯端末用アプリケーションソフトウェアを開発した。本ソフトウェアを利用した実証実験を実施し、参加ユーザが積極的に商店街に足を運び、各商店の来客数や売上高が増加することで、本ソフトウェアが地方の商店街に与える経済効果を明らかにした。開発するソフトウェアはすれ違い通信機能を利用したキャラクター育成ゲームであり、すれ違い通信を利用しているため、参加ユーザは外出して移動しないとゲームに参加することができない。したがって、参加ユーザの街歩きが期待でき、商店街の活性化につながる。
報告書 成果報告書PDF文書[4.97MB]
アプリケーションソフトウェア 「ゆるキャラ商店街」
https://itunes.apple.com/us/app/yurukyara-shang-dian-jie/id983148529?mt=8(※外部リンク)
組織名称 学校法人工学院大学 工学院大学
研究責任者 情報学部コンピュータ科学科 准教授 位野木 万里
研究区分 D-2:ソフトウェアエンジニアリングの実践事例研究
研究テーマ名 要求定義の高品質化のための要求仕様の整合性の検証知識の形式知化と一貫性検証支援ツールの開発
研究期間 1年
研究概要  要求仕様の構成要素であるシナリオをとりあげ、要求仕様の品質特性である「一貫性」に着目し、ベテラン技術者が経験的に得たシナリオの整合性の検証知識を形式知化し、それら知識に基づくシナリオの一貫性検証支援ツールを実現した。
 知識の形式知化では、様々な組織で活用可能な知識と、組織毎に固有の拡張が考えられる知識に分類・構造化した。シナリオの一貫性検証支援ツールは、シナリオ内で言及されている、「アクター」「データ」「画面」「振る舞い」の記述が要求仕様書中の記述と整合していることを検証する。
 本知識とツールを業界全体で共有することで、要求定義に関わる人材のスキルレベルの向上と各組織の検証知識の充実を促進し、さらなる要求仕様の高品質化に貢献する。
報告書 成果報告書PDF文書[2.79MB]
ツール 「シナリオの一貫性検証支援ツール」の紹介(学校法人工学院大学 工学院大学)
http://www.ns.kogakuin.ac.jp/~wwa1076(※外部リンク)
組織名称 国立大学法人広島大学
研究責任者 大学院 工学研究院 情報部門 教授 土肥 正
研究区分 D-4:モデルベースによるリスク評価を活用したシステムの安全性や品質の向上に関する研究
研究テーマ名 データマイニング手法を応用した定性的信頼性/安全性解析支援ツールの開発
研究期間 1年
研究概要  FTA(Fault Tree Analysis)、FMEA(Failure Mode and Effect Analysis)、HAZOP(Hazard and Operability Studies)などの定性的信頼性/安全性分析手法を支援するためのツール開発を行った。具体的には、設計や障害事例などの過去の情報を非構造型データベースとして蓄積し、FTA等に現れる故障モードやガイドワードなどのキーワードと、対象とするシステムの設計情報(UML / SysML)を手がかりに、蓄積したデータベースから関連する過去の障害シナリオを抽出できるようにした。さらに重要度に従ってランキングするシステム、ランキングを効率的に行うための学習アルゴリズムを開発した。
 このツールにより、経験豊富な分析者の知見を効率よく設計現場にフィードバックすることが可能となる。
報告書 成果報告書PDF文書[2.91MB]

脚注

(*1)募集要項で定められた研究区分。詳細は以下「参考情報」を参照。
(*2)研究期間は1年と2年の二種類の期間がある。

参考情報

2014年度採択研究一覧

 2014年度は以下の4件の研究テーマを採択しました。このうち2件が2年度期間の研究として2016年2月に研究が終了し、今回成果を公開しました。

単年度研究 (2015年2月まで実施、2015年4月に成果を公開)
1.学校法人芝浦工業大学 芝浦工業大学
「保守プロセスにおけるモデル検査技術の開発現場への適用に関する研究」
2年度研究 (2016年2月まで実施)
2. 学校法人神奈川大学 神奈川大学
「オープンシステム・ディペンダビリティのための形式アシュランスケース・フレームワーク」
3 .学校法人慶應義塾 慶應義塾大学
「システムモデルと繰り返し型モデル検査による次世代自動運転車を取り巻くSystem of Systemsのアーキテクチャ設計」
2年度研究 (期間延長により2016年8月まで実施)
4 .学校法人同志社 同志社大学
「日本のソフトウェア技術者の生産性及び処遇の向上効果研究:アジア、欧米諸国との国際比較分析のフレームワークを用いて」
2015年度採択研究一覧

 2015年度は以下の6件の研究テーマを採択しました。このうち4件が単年度期間の研究として2016年2月に研究を終了し、今回成果を公開しました。残りの2件については、2017年2月に研究終了となる予定です。

単年度研究 (2016年2月まで実施)
1.国立大学法人名古屋大学
「保証ケース作成支援方式の研究」
2. 国立大学法人福井大学
「携帯端末用アプリケーションソフトウェアが地方経済に与える効果の実証実験評価に関する研究」
3 .学校法人工学院大学 工学院大学
「要求定義の高品質化のための要求仕様の整合性の検証知識の形式知化と一貫性検証支援ツールの開発」
4 .国立大学法人広島大学
「データマイニング手法を応用した定性的信頼性/安全性解析支援ツールの開発」
2年度研究 (2017年2月まで実施)
5 .国立大学法人電気通信大学
「D-Caseに基づく議論構造可視化支援ツールの開発と、スマートコミュニティにおける合意形成の実証」
6 .学校法人早稲田大学 早稲田大学
「測定評価と分析を通じたソフトウェア製品品質の実態定量化および総合的品質評価枠組みの確立」
2015年度の募集研究区分

2015年度は以下の研究区分の公募を行いました。なお、D-1、D-3区分についての研究テーマは採択されませんでした。

A:ソフトウェア工学分野の先導的な研究
要求工学、プロセス改善、高信頼性、アジャイル開発、形式手法、モデルベース開発等のソフトウェア工学分野の先導的な研究

B:ソフトウェア工学・システム工学の実践的な適用に関する研究
ソフトウェア開発現場への適用を目的としたソフトウェア工学の成果・手法を詳細化・具体化・実用化する研究またはスマートコミュニティ、ヘルスケア、ロボット、次世代自動車と交通システム等の複雑な統合システム(System of Systems)の研究開発において、ソフトウェア工学・システム工学の成果・手法を適用する研究

C:ソフトウェアが経済社会にもたらす革新的効果に関する実証研究
ソフトウェアが社会や組織経営にもたらす経済価値、生産性向上、競争力強化、イノベーション等の経済効果についての実証研究

D-1:ソフトウェア開発データの分析
IPA/SECが過去10年間にわたり収集・蓄積してきたソフトウェア開発データを新たな視点や手法で分析・研究することにより、ソフトウェア開発における課題や方向性を提唱する研究。

D-2:ソフトウェアエンジニアリングの実践事例研究
技術シンポジウムSPESの2011年より2014年にわたる講演資料から、産業界に資する技術や課題を選定し、特定の技術や課題に関する深掘り、幅広い技術や複数の課題に関する研究。

D-3:マイグレーションの課題に関する研究
既存資産のオープン化・クラウド化やリプレース、外部の異種サービス連携における人材面・技術面の課題解決、アジャイル開発の採用による効率化などを実現する方法論等、マイグレーションを進める上での様々な課題の解決を目指す研究。

D-4:モデルベースによるリスク評価を活用したシステムの安全性や品質の向上に関する研究
複雑化するシステムにおいて、ソフトウェア中心のシステム視点からの障害リスク検証を進めるため、システム全体の振る舞いを確認しながら、かつ仮想的に動作検証可能なモデルベースアプローチを利用することで、システムの安全性や品質を向上させることを目指す研究。

D-5:ソフトウェアの総合的品質指標の設定とその実証的評価
ソフトウェアの品質について、プロセス、不具合量、保守性、拡張性など、様々な要素をもとに総合的に評価する指標を設定するとともに、それを実データに基づいて評価する研究。また、その指標および指標を構成する個別要素と、顧客満足度との相関関係を調べ、さらにその関係の時代変遷等についても考証する研究。