概要
IPAは、今後到来するIoT時代を踏まえ、つながることによって発生する事故やインシデントなどのリスクを未然に防ぐための技術対策により、安全・安心が確保された信頼できる製品を開発するための“開発指針”を策定することを目的に「つながる世界の開発指針検討WG」を2015年8月に設置し、各産業界の有識者と共に検討を進めています。
今回、策定中の開発指針の考え方や有効性の検証を目的に、製品の安全・安心を確保するための対策技術を実証するため、IPA、一般社団法人日本ロボット工業会 ORiN協議会、一般財団法人機械振興協会の3者共同により、12月7日からORiN(*1)上で実証実験を開始します。
(*1) ORiN(Open Resource interface for the Network):オラインと読む。ORiNは、ORiN協議会により制定された工場情報システムのための標準ミドルウェア仕様として、製造現場の各種装置に対して、メーカーや製品の違いを超えて統一的なアクセス手段を提供するソフトウェア。現在「ORiN2 SDK」として実用化されており、パソコンのアプリケーションから、異なるメーカーのロボット、工作機械などの制御装置の情報を共通化された方法でアクセスできるため、ソフトウェア開発の工数削減やソフトウェアの再利用性、保守性の向上が期待されている。
実証実験について
実証実験は、以下の要領で2016年3月末まで実施する予定です。
実証実験の内容
- 障害の波及防止対策(製造ライン稼働時の異常検出と対策)
工場内の製造ラインを構成する装置から情報(ログなど)を収集し、異常を検知した場合に速やかに装置を安全に停止する仕組みなどを実装する。 - 相互接続時の信用確認(要求品質が異なる装置を接続する時の対策)
工場内の製造ラインの増設や新規に装置を追加する場合に、その装置が信頼できる装置であることを確認するために、装置が信頼できるかなどの「品質情報」をやり取りする仕組みを実装し、製造ラインに組込んで良いかの判断を行う。
今回の実験は、工場内において“つながる”場合を想定していますが、インターネットなどのネットワーク接続を通じて“つながる”場合、つまり今後の「IoT時代(つながる世界)」においても適用できる対策技術であると考えています。
実証実験の結果について
本実験で得られた結果は、現在策定中の開発指針に反映し、その有効性を高めると同時に、内容の充実を図りたいと考えています。また、今後IoT製品・機器を開発する企業にとって参考となることを目的に、実験結果を報告書としてとりまとめて公開する予定です。
なお、ORiN協議会ではORiNの次期バージョン仕様に本実験の結果を反映していく予定です。
3者の役割分担
- IPA : 実証実験の仕様決定、評価と報告書作成
- ORiN協議会 : 実証実験のためのORiNアプリケーション作成
- 機械振興協会 : 実験環境の提供